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コラム 政治・経済

2009年10月05日

民主党の重荷

せっかく政権交代を実現したというのに、民主党が直面する日本経済の問題は、いままでにないほど圧倒的な課題なのかもしれない。

第一に860兆円にのぼる国の借金。GDP(国内総生産)をだいたい500兆円とすれば約170%に達する。もちろん先進国中最悪である。第二に、人口減社会。すでに人口は減り始めており、現在の1億2700万人が2045年あたりには1億人を切るとされている。出生率はこのところ多少上がっているとはいえ、とても人口を維持するために必要な2を超えることは考えられない。

第三に、相変わらず製造業だのみともいえる産業構造。もちろんほとんどの資源を海外に頼る日本にとって外貨を獲得するための製造業が重要であることは論を待たないが、それにしてもポスト・トヨタはどの会社かという議論がマスコミをにぎわすことすらない状態は、あまりにも想像力を欠いているというべきだ。

こうした大きな課題が立ちはだかる上に、目の前にはデフレという深い闇がある。この8月の消費者物価指数は前年比2.4%のマイナス。年末あたりには前年比マイナス4%程度になるのではないかとするエコノミストもいるほどだ。つまり過去最悪の物価下落が続くということである。

過去の物価下落要因の大きなものは、需要が減っているということもあったが、中国ファクターも決して小さくなかった。中国製の安い製品が日本に浸透し、さまざまな場面で中国製が強調されるようになった(この中国ファクターは全世界的にインフレを抑えることにつながり、その結果、バブルをもたらしともされている)。しかし現在のデフレでは中国ファクターの影響は大きくない。むしろ純粋に国内需要の問題であると言ってもいい。

自公政権ではこの国内需要をどう喚起するかという問題で失敗してきたと言ってもいい。その昔、外需依存ではなく内需主導型の経済をつくれとアメリカに言われて日銀総裁だった前川春雄氏が中心となり、前川リポートを作成した。しかしそこから何百兆円ものカネを注ぎ込んだにもかかわらず、日本は内需主導型経済を構築することに失敗している(その挙げ句に残ったのが860兆円だ)。

なぜ内需主導型に移行することができなかったのか。ひとつは出生数の問題だと思う。このところ立て続けに孫が生まれて、その様子を見ていると、次から次にいろいろな物を買っていることに気がつく。子供が生まれてから成長するにつれて買わざるをえないのである。出生数が増えれば、ほぼ自動的に消費が増える(もちろん所得がある程度はついてくることが前提だ)。

しかし本質的な内需促進策ではなく、コンクリートにばかり投資をすると、ダムや道路やコンクリートの護岸はできてもそれで終わってしまう。一時的に潤ってもそれで経済全体が押し上げられることはない。要するに波及効果が期待できないことばかりにお金が費やされてきたということだ。

その意味で、民主党政権が「コンクリートよりも人に投資する」というのはまったく正しい政策だと思う。ただ問題は、その人というのは日本国籍をもっている人だけでいいのかということだ。日本の人口が減ることが大問題で、出生率を引き上げるだけではこの人口減少に歯止めをかけることができないとすれば、移民問題は民主党政権にとって避けて通れない道である。

しかし移民は、多くの国民にとってタブーであり、その壁を打ち破ることはそう簡単ではない。それでも鳩山政権は、この問題を国民に向かって提起することぐらいは任期中にしなければなるまい。人口が減ってしまっては、友愛を広めることもできないのだから。

藤田正美

藤田正美

藤田正美ふじたまさよし

元ニューズウィーク日本版 編集長

東京大学経済学部卒業後、東洋経済新報社にて14年間、記者・編集者として自動車、金融、不動産、製薬産業などを取材。1985年、ニューズウィーク日本版創刊事業に参加。1995年、同誌編集長。2004年から…

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