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2017年08月16日

OJTはうまくいくのか

さて今回はOJT、オンザジョブトレーニングについて考えてみます。多くの企業では、新人研修が終わると、現場でOJTという流れになっています。OJTについてはそのやり方、効果、負担などについて頭を悩ませているケースが多くみられます。

OJTの問題点

 残念ながら多くの場合、このOJTはうまくいっていません。それは、OJTという名のもと、実際はただ現場で起きる出来事を都度、説明をしているだけで、網羅性に乏しく、また準備も現場の担当者に任せっきりで、会社としての準備や評価などが何もなされていないからです。

【OJTの問題点】
 ・だらだらと場当たり的になりがち。
 ・思いつきでやるため網羅性がない。行き当たりばったり。
 ・上のほうは、教える工数を考えていない。「今の仕事をやりながら」と軽く考えている。
 ・育成の結果が評価されない。

 教育制度に力を入れている会社や体制の整っている大企業は別として、多くの中小企業の場合は、経営層から「今度新人を入れるから、教育よろしく頼むよ」といって現場担当者に新人がいきなりあてがわれるも、目の前の仕事に忙殺され教えるための準備をしている暇などありません。結果、行き当たりばったりの指導になり、網羅性もなく、その場で起きたことについて都度教えていく、という結末を迎え、あとは新人の能力次第…思い当たる節がありませんか。
 自分のコンサルティングファーム時代の経験を思い出してみても、新人が下についたとき、上司から「これを教えてくれ」という指示もなく、戸惑いました。プロジェクト概要を説明したり、会議の議事録をとってもらったり、仕事を振って任せてみたりと、できることはやったつもりですが、網羅性があったかというと自信がありません。

 

うまくいくOJT
 やはりせっかくお金をかけて人をとっているのですから、より実践的で体系的な教育ができたほうがいいに決まっています。以下に、私が思う「うまくいくOJT」のアイデアをまとめてみました。

①現場だけに任せないで、人事、教育部門などと連携する
現場はただでさえ忙しいのに、正直、教えている余裕はないはずです。そこで、バックオフィスの人事や教育の部署内に、「育成担当者」を置き、その人と一緒に新人の教育を担当します。育成担当者は新人の職位について「身につけてほしい能力、スキル」をリストアップし、それを現場の上司に渡します。現場の上司は、そのリストを横に置き、日々の仕事の中でカバーできた項目についてはチェックをします。こうすれば網羅性は保たれ、人による教え忘れなども防げます。カバーしきれなかった項目は、別途上司か育成担当者がフォローするようにします。

②OJTを業務効率化の一環とし、評価につなげる
現場の担当者は、客観的に自分の業務を見直すような余裕は多くの場合ありません。しかし、それは会社にとっても損失です。OJTをもっと広くとらえ、新人教育だけでなく、上司のレベルアップや業務効率化の機会と位置付けるべきです。そこで、業務プロセスの見直しを現場担当者のタスクとし、そこで工数が効率化できたり、よいアイデアが出てきたら、「効率化ポイント」としてその担当者を評価します。その評価が給料や人事考課につながれば、やる気もアップするのではないでしょうか。

③育成の成果を評価する
 現場の担当者は、自分に与えられた目標値を達成すれば評価はされますが、部下を育てても評価されないケースがほとんどです。なので、部下がそのスキルを身につけ、一人でできるようになったら、それをその担当者の「育成ポイント」として評価ポイントを付与します。もちろんこのポイントも給料や人事考課につながります。こうして人を教えるという、これまで目に見えにくかった工数を評価することで、教えることに対するモチベーションも上がるはずです。

 一昔前は、評価があいまいな仕事に対しても黙々と取り組む人が多かったのですが、21世紀は、やはりやったことはしっかりと評価をされないと、人は動いてくれません。そうした意味でも、この「人を仕事の最中に教える」という手間がかかりかつ評価もあいまいだったタスクをしっかりと見えるものにし、一タスクとして取り組んでもらえるような体制、評価制度の設計が必要なのです。ぜひ皆さんの会社でもOJTをうまく利用し、組織の活性化につなげてください。

次回は、「教え方がうまい人」についてお伝えします。どうぞお楽しみに。

川村透

川村透

川村透かわむらとおる

川村透事務所 代表

「ものの見方を変える」という視点の転換を切り口に、モチベーションアップ、チームビルディング、リーダーシップ、コミュニケーション、問題解決など様々なテーマで講演、研修を行う。自身の体験と多くの研修・講演…

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