ご相談

講演依頼.com 新聞

コラム 教育

2010年12月10日

子どもが荒む背景

 中学生のうち「言葉で人をいじめる」経験者は約40%、「暴力をふるう」経験者は約32%で、それぞれ11年前に比べ10%から20%増加したことが、日本青少年研究所の調査(08年)で明らかになった。

 ネットいじめに限らず、現代の子どもの心が荒んでいるのはなぜなのか。子どもは育つ過程で、親や学校から様々な影響を受ける。今回は、子どもを囲む環境のあり方に目を向けてみたい。

 「他人を攻撃したい」と感じる子どもの心には何らかのストレスがある。だが、それを受け止めてやるべき親が、精神的に成熟していないように見える。児童虐待の相談対応件数は、厚生労働省が調査を開始した1990年度以来、毎年過去最多を更新中だ。

 児童虐待事例の分析結果によると、母親が育児不安やうつ病を抱えているほか、「望まない妊娠」だったケースが目立つ。メディアなどで、誤った避妊知識が流布されていることも一因だろう。精神的、経済的準備のないまま親になり、子どもとの向き合い方に戸惑う姿が浮かび上がる。

 また、子どものストレスとなる要素の一つが、「勉強の強要」だ。ベネッセの調査(07年)では、「学校が楽しければ成績にはこだわらない」と考える親は年々減り、「世間一般の流れに乗り遅れないようにしている」親が6割近くに上る。少子化で親の教育熱が高まると共に焦りが出てきて、「皆と同じ」であることを子どもに求めている。こうした風潮は、子ども社会が異質な者をいじめの対象とする傾向とも、つながっているのではないか。

 学校現場でも、教員が心のゆとりを失っている。文部科学省の委託調査(08年)によると、5割近い教員が「一週間で休める日がゼロ」という。多忙さに加え、保護者や子どもとの人間関係に悩み、うつ傾向を示す者の割合も一般企業の2.5倍に上る。

 このような状況では、いじめに目を配ることは難しいだろう。実際、「子どもの訴えを充分聞く余裕がない」と6割以上の教員が感じている。学校への予算を増やし、教員の負担を減らすことは急務だ。

 他方、わいせつ行為で懲戒処分を受けた教職員が06年度に170人と前年度より急増し、その後も高い水準で推移している。被害者の多くは生徒だ。一部教職員の倫理観の低下が懸念される。ストレスは言い訳にならない。

 大人社会に漂う閉塞感は、子どもにも確実に反映されているのではないか。

渡辺真由子

渡辺真由子

渡辺真由子わたなべまゆこ

メディアジャーナリスト

放送局報道記者として、いじめ自殺を取材したドキュメンタリー「少年調書」で日本民間放送連盟最優秀賞など受賞。その後カナダのメディア分析所に留学し、メディアリテラシーを研究。 ニュース記者としての長年の…

  • facebook

講演・セミナーの
ご相談は無料です。

業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。