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コラム 教育

2011年03月18日

こころの糧

 今年は、寒い日々が続き、春の足音を待ち望んでいる人が多いのではないでしょうか。季節だけでなく、人生においての雪解けを待っている人も。
 暖かな春を待つ気持ちは、そこに希望を持つことでもあるように思います。

「夢を育む・希望を持つ」このことは、生きるうえで私が大切にしてきたことでもあります。生きていれば色々な辛いこともありますが、それを乗り越えられたのもこの気持ちがあったからのように思います。

 最近は、夢を育むことや、未来に希望を持つことを、幼い頃から諦めてしまう子どもや、就職試験に受からないのは、社会が不景気だからと嘆き、夢を持ってもしょうがないとつぶやく若者がいます。本当にそうでしょうか?夢を育むことも、それを実現できないことも、それは他に責任をなすりつけているだけではないのでしょうか。
「夢を育くもうとしましたか?」「希望する職業に就くために、どれだけの努力をしましたか?」「一人の人間の生きる意味を考えたことはありますか?」私は、そんな問いを投げかけてみたくなります。

 『夜と霧』の著者として知られる精神科医で心理学者のV・E・フランクルは、強制収容所という地獄の絶望的な日々の中で、虫けらのように扱われ、肉体的、精神的苦痛の極みをつくしました。毎日のように収容所では、ドイツ兵に銃殺される者、病死する者、自ら命を絶つ者、様々な死に囲まれていました。しかもこういった過酷な日々がいつ終わるかも知りませんでした。多くの人が人としての尊厳、さらに生きる力を失っていくそのなかでもフランクルは、「希望」を捨てず生きる意味を見つめ極限状態を生き抜きました。同じ収容所に置かれていても、絶望の中で死んだ人もいれば、希望を持って生き延びた人もいたのです。彼は、『強制収容所の人間を精神的にしっかりさせるためには、未来の目的を見つめること、つまり、人生が自分を待っている、誰かが自分を待っていると、つねに思い出させることが重要だった』と記しています。フランクルの思想の底流は「希望」です。生還したフランクルは、どのような状況の中にも意味を見出す生き方こそ病を癒し、人間を人間として活性化すると説き、多くの人に慰めと希望を与えました。人生の意味は自分で作りだしていくものであるということです。

 現代は、競争社会を生き抜いて、勝者になることばかり考えています。学歴社会にしろ、偏差値教育にしろ、価値観がその一点に単一化しています。ネットによるカンニング事件もその余波です。人には様々な個性や才能があります。それを一つの価値観でくくろうとすることは、不遜なことのように思います。人間の幸せや価値というものが、根本から問い直されることこそが必要とされると思いますが、その流れは鈍いものがあります。ならばどんな時代におかれても、しっかりと自分の歩みを進めていける力を持つことが必要になります。その力となるのが、「本当の希望」を持つことだと思います。
どんな状況に置かれても、自分のなかに、常に自分なりの希望を持ち続けることのできる力(想像力や信じる力そして愛)と勇気を育むことが大切になるように思います。子どもや若者の心のむなしさは、本当の希望を見失っているからではないでしょうか。
 かけがえのない子ども時代に、本当の希望を持つために、大人や社会が一方的に与えるのではなく、子ども自身が見つけ出していける力を育む助力をして欲しいと願います。

 フランクルは言います。「どんな時も人生には意味がある。あなたを必要とする『何か』があり『誰か』がいて、必ずあなたを待っている」のだと。

春日美奈子

春日美奈子

春日美奈子かすがみなこ

フリージャーナリスト

國學院大學大学院法律研究科法律学専攻修士課程修了。報道畑25年の経験を生かし、少年院や教護院(現・児童自立支援施設)での実習を通し、常に現場の”今”や”生の声”を大切にして、少年問題に取り組んでいる。

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