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コラム 教育

2017年04月25日

「盛っている」を見抜けるか?

 進学、進級シーズンの4月。新しい学校やクラスで、子ども同士の人間関係がスタートします。慣れない班活動での交流、互いによく知らない相手とのグループ行動では、どうしても緊張するでしょう。ドキドキしてちゃんと話せない、そんな子どもが少なくありませんが、一方ではつい大げさな自己アピールをしてしまうこともあります。

 これは子どもに限らず、おとなの社会もそうですが、要は自分を「盛って」しまう。実際よりもすごい人、デキる人のように伝えてしまいがちです。人間の心理として当然とも言えるのですが、こんなふうに実際よりも話を盛っていることがネット上にはたくさんあります。

 たとえば各種サイトに表示されるバナー広告では、「本当は教えたくない最強の〇〇術」とか、「〇〇があれば絶対夢が叶う」とか、「真実を知りたい人は今すぐここをクリック!」といったキャッチコピーが並んでいます。刺激的な言葉に惹かれて、ついアクセスしてみたら、実際にはたいした情報ではなかった、そんな経験を持つ人も多いでしょう。でも、「たいした情報ではない」、「これは話を盛っているんだ」と判断できる力がなかったら、果たしてどうなるでしょうか。

 情報セキュリティー企業「カスペルキー」が実施した調査(2016年10月~11月/日本人1000人を含む18ヵ国のSNS利用者16750人を対象)を取り上げてみましょう。同調査では、SNS上で好反応を得るために、投稿内容を脚色したり、誇張したり、友達の情報を暴露してしまう人の割合が挙げられています。たくさんの人に「いいね!」をもらうために、12%の人は「実際に行っていない場所に行ったふりをする。していないことをしたふりをする」と回答。つまり、約1割の人は、みんなの注目を集めるために「話を盛っている」、「ウソをついている」わけです。同じく「いいね!」をもらうためなら、27%の人は「友達のおもしろい情報を投稿してもいい」と考えています。また、男性の12%は、「友達の秘密の情報」や「友達の恥ずかしい情報」を投稿すると回答しているのです。

 こうした調査結果からは、SNS上に「フェイクニュース(偽の情報)」や、「作為的な話題」があふれていることが読み取れます。次々と接する情報が真実か否か、話が盛られているのかいないのか、冷静に判断できる力が必要不可欠になってきます。ところが現状では、子ども向けの情報リテラシー(情報を正しく読み取り、使いこなす能力・知識)教育はなかなか行われていないのです。
「ネット上には危ない情報がある」
「SNSで知り合った人を信用してはいけない」
おとなからそんなふうに言われても、具体的に何がどう危ないのか、どう見抜けばいいのか、肝心なことが伝えられていません。おまけに、子ども同士のSNS上のやりとりではおとなの介在がむずかしいため、要は「何が正しいのかよくわからないままに、どんどん情報が拡散する」という状況になりがちです。実際、私が取材する子どもたちは、確かな情報源や信頼性のあるニュースよりも、「友達の〇〇さんが〇〇って言ってた」、「〇〇さんがうまくいったから私もうまくいくと思う」などと、身近な人間関係から得た情報に引き寄せられています。もしかしたら相手が話を盛っているかもしれないのに、いとも簡単に信じてしまうのです。

 スマホやネット利用では、次々に新しい問題が起きています。依存やいじめといった問題も深刻ですが、「何を、誰を信じるか」という信頼性に関わる問題も、決して見過ごせないでしょう。

 

石川結貴

石川結貴

石川結貴いしかわゆうき

ジャーナリスト

家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…

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