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コラム 教育

2016年04月25日

子どもの「SOS」と親の対応

 4月は進学や進級の時期です。中学や高校への進学祝いとしてスマホを買ってもらったり、機種変更した子どもも多いでしょう。以前のコラムでも書きましたが、新しい人間関係の中ではLINEなどSNSの友達申請やグループ登録、メッセージ交換が大幅に増えます。スマホの利用時間が長くなり、慣れない新生活の緊張感も重なって疲れを溜め込むケースが少なくありません。

 勉強、部活動、塾、先生や友達との関係、先輩や後輩という立場…、いろいろな悩みを抱えやすい子どもに対し、親はどう接すればいいでしょうか。保護者の方からは、こんな声が上がります。

「毎日、学校での様子を聞くようにしています」

「友達とうまくいっているか、注意して観察する」

 一方、中学生や高校生を取材すると別の反応が聞かれます。

「悩みがあっても親には話さない。いろいろ聞かれるけど、適当に流して本音は言わない」

「親がウザイ。どうせわかってもらえないから、あんまり関わりたくない」

 親の不安や心配とは裏腹に、子どもの側は妙に冷めています。このようなすれ違いは、なぜ起こるのでしょうか。

 ひとつには、親と子の世代環境の違いです。友達関係を見ても、今の子どもはSNSを駆使したつながりが主流です。「グループトーク」や「既読」などあらたなコミュニケーションで生じるトラブルは、「親にわかってもらえない」という思いが強いのです。また、「親に頼らなくても解決法が探せる」と話す子どももいます。身近なおとなに相談するのではなく、ネットの相談サイトやクチコミ掲示板を利用すればいいと考えるのです。さらに、「親に話すとややこしくなる」という声もあります。今どきの子ども事情、ネットの実態を認識しないまま親が一方的に仕切ると、かえって問題が複雑化することもあるのです。

 では、子どもの悩みやSOSにどう対応すればいいでしょうか。

 まずは、親以外の信頼できる相談先を確保しましょう。「親に話せないことは、ここに相談したらいいよ」と伝えておくのです。たとえばネットトラブルなら、警察庁や法務局などの公的機関が専用のサイトを作っています。具体的な事例や対応方法、専門の相談先が載っていて参考になります。子ども専用の相談電話「チャイルドライン」や、地域の青少年センターなどの情報も伝えておくといいでしょう。

 次に、親子で定期的な話し合いの場を作ることです。何かあったときに相談するのではなく、月に一度は家族全員がそろって話をするなどと決めておきます。話し合いと言ってもかしこまる必要はなく、外食のついでとか、買い物の途中とか、気楽に語れる場を用意すればいいのです。その際、親が自分の悩みや経験談も打ち明けるようにしましょう。「最近、仕事でうまくいかないことがある」とか、「昔は気が弱くて友達に話しかけられなかった」とか、なんでもいいのです。親自身が素直に心を開き、自分の弱さや失敗談を語ることで、子どももSOSを出しやすくなります。

 子どもが話をしない、反抗的といった場合には、ノートやメモを活用してもいいでしょう。「話せるときがきたら、話してね」と一言メモを部屋のドアに貼ったり、靴の中にでも入れておきます。さりげない形で伝えておく、陰ながら支えることも効果的です。

 何より大切なのは、「親が子どものすべてを知ろうと熱くなりすぎない」ことです。親に見せない部分があっても、そこには子どもなりのプライドや事情があります。子ども自身の力を信じつつ、どうしても困ったときには絶対に助ける、そんな姿勢を持ってほしいと思います。

編集部からのお知らせ

石川結貴さんのコラムは偶数月更新となります。
今後も子どもとインターネットをテーマに問題提起、課題解決の提言を行っていきますので、
引き続きどうぞよろしくお願い致します。

石川結貴

石川結貴

石川結貴いしかわゆうき

ジャーナリスト

家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…

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