ご相談

講演依頼.com 新聞

コラム 環境・科学

2013年01月15日

潜在能力抜群の風力発電

■社員8名で大規模風力発電をてがける会社

ビュービューと吹き付ける強風に体を持って行かれそうになりながら、ビデオカメラと三脚を押さえて、巨大な羽根を回し続ける風車の列を撮影。「シュー、シュー」と羽根が風を切る回転音がします。

2年ほど前、取材に訪れたのは、鹿島灘にのぞんで、タワーの高さ60m、羽根の長さ40mの風力発電機が7基並ぶ「ウインド・パワーかみす」。この発電所を運営しているのが、社員わずか8名の「ウインド・パワー・いばらき」です。

ここがすでに4か所目、外洋に面した堤防より外側の海に作られた、日本初の洋上風力発電所です。海外製の風車を導入する所が多い中、地元企業の風力発電機を採用し、当時の安い売電価格でもしっかり採算を取って運営していました。

そうした中小企業でもできる取り組みを伺おうと、これまでの歩みや今後の計画などについてセミナーをお願いし、私はコーディネーターをさせていただきました。その開催が2011年3月2日。

そのわずか9日後に東日本大震災が発生しました。発電所がある茨城県神栖市も、気象庁の観測で6.6mを記録する大きな津波に襲われました。しかし施設は無事で、点検を終えてすぐに復旧、電力不足となった東京電力管内に電気を供給しました。

その後、「ウインド・パワーかみす」では、さらに8基追加する工事が行われ、2012年12月に完成、今月から試験運転をはじめ、3月から本格的に稼働する予定です。既存の7基は陸からクレーンを使って工事をして、海岸から50mの場所に建設されたのですが、今回の8基は、作業用の台船を使って、海側から工事が行われました。

そして、その経験を活かす機会が早速やってきました。茨城県が昨年公募した、鹿島港沖500mから1500m、幅約7kmの海域で洋上風力発電を行う事業の業者の1つに、丸紅と共に選ばれたのです。

当初、海域を分割して設置する計画になっていましたが、維持管理等が二重になり効率が悪いため、二者による共同事業として、新会社を設立する形になりました。予定では2015年に着工し、大型風車50基程度が設置され、2017年頃には完成して、茨城県全世帯の約16%の消費電力量を賄う見込みです。

セミナーの時点でも、将来的には鹿島灘で大規模な洋上風力発電を行う計画が紹介されていましたが、もう少し先に、という印象でした。震災後、再生可能エネルギーの普及へと大きく流れが変わったのです。

■潜在能力が大きい風力発電

環境省の試算によると、日本では風力で、原発1900基分にあたる19億kWもの発電が可能で、その内、16億kWは洋上に設置可能なものとの事です。現実にこれだけ作るかどうかは別として、潜在能力は非常に大きいわけです。

しかし、日本にある風力発電施設は、2011年現在で、250万kWで、世界で13番目に過ぎません。トップの中国は日本の25倍、日本より国土が狭いドイツでも12倍の風車が回っています。

政権は変わりましたが、それでも原発については、せいぜい、維持するかどうかというレベルで、今後大きく推進することは無理でしょう。いずれにしても再生可能エネルギーの拡大は必要なわけですから、経済対策、雇用対策として積極的に導入する政策を期待したいと思います。

富永秀一

富永秀一

富永秀一とみながしゅういち

環境ジャーナリスト

私はアナウンサー時代から、環境に関する番組を制作してきました。現在は“無理なく続けられるエコライフ”をメインテーマに、テレビ番組制作、ネット放送、書籍・記事執筆等により情報発信中です。講演では、環境・…

  • facebook

講演・セミナーの
ご相談は無料です。

業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。