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2011年02月01日

カラオケが苦手な理由

お酒を飲む店に行くのは嫌いではないのですが、どうもカラオケがガンガン鳴っている店は苦手です。一応ですが職業として歌を歌ってきたので素人の歌は、なんて傲慢なことを言えるような歌は歌ってきていません。なにせ最大ヒットが「赤とんぼの唄」。つづいて「魚屋のおっさんの唄」ですからね。何が苦手で、嫌いなのか、先日よーくわかりました。まったく気を使わなくていい仲間たちと、飲めや歌えの大騒ぎ。この雰囲気ならカラオケも楽しめるかもとチャレンジしてみたのですが、やっぱりいまひとつでした。

十分に楽しんではいたのですが、僕が歌っているとき聴衆は、というか仲間たちは、平気で隣の人とおしゃべりしているし、当然ですがお酒飲んでいるし、次に自分が歌いたい歌を探して歌本をペラペラめくっているし…。誰も悪気はなく、カラオケってそんなものなのでしょうが、これが耐えられない。

デビューからずっと、確かにろくでもない歌ばかり歌っては来ましたが、聴衆が隣の人とおしゃべりを始めたり、ステージに注目しなくなったりするなんてことは、まぁめったにあるもんじゃない。それはエンターテイナーにとって、最大の赤信号なのです。急いで演目を変えるか、声を張り上げるか、急に泣き出すか、どんな手を使ってでも聴衆の関心をつなぎとめなければ、命取りになる最悪のシチューション。

そんな事態に陥らないよういつも客席の隅々までアンテナを張り巡らせて、そんな兆しが無いかをチェックしつつ演じたり歌ったりしているのが、プロなんですね。

今はもう、年に何回かしか「あのねのね」としてのステージはやらなくなりましたが、今でも時々、会場がざわつき始め、どんなに頑張ってもウケなくて、ゾロゾロと客が帰り始める、そんな悪夢を見て寝汗びっしょりで飛び起きることがあるのです。僕に限らず、どんなに豪胆ぶっている人であっても、ステージに立つ職業の人であれば、きっと何回かはそんな怖ろしい夢をみたことがあると思いますよ。

僕は講演会の会場で、子どもが泣こうが走り回ろうが、そんなことは気になりません。そんな妨害に耐えながら何とか講師の声を聞き取ろうとする前向きな聴衆がいる限り、そんな子どもの存在を忘れさせるくらいの迫力で、面白いことをしゃべればいいだけ。よけいに燃えてくるのです。

けれど、下を向いたり、眠ったり、客席を立ったりする人が一人でもいると、もう頭の中で、緊急サイレンが鳴り響いてしまうのです。すると声がでかくなり、早口になり、話の流れが乱れ、オチが決まらなくなり、こりゃいかんと一旦落ち着いて自分のペースを取り戻すまで、結構時間がかかってしまいますね。

客席にいる人はきっと、壇上の講師がそんなことを気にしているとは気づいていないのでしょう。まるでテレビの画面を眺めている気分で、お茶を飲んだりトイレに立ったり。ところがしゃべっている方は全員と向き合って、一対一でしゃべっています。トイレに立たれたら黙るしかないし、リモコンでチャンネル変えるみたいな態度でそっぽ向かれたら、もうそこで終るしかない真剣勝負をしているのです。

カラオケがあるお店で、見知らぬ人が歌い終えても店内みんなが拍手するときがありますね。一見マナーが良いように見えますが、その人が歌っている最中は、飲むは喰うはしゃべるは笑うは。歌っている人に失礼極まりない、と僕は思ってしまうのです。で、一応耳を傾けるフリだけでも、と口をつぐむと、隣のホステスさんは何か気に障ったことでも言ったのかしらと、サービス全開で話しかけてくる。

ちょっと静かに、と制しようものなら、もう彼女はパニックですね。なんだか気難しい人、と席を立たれてしまいます。せっかく携帯の電話番号までゲット出来ていたっていうのに、です。僕がカラオケのある店が苦手で、楽しめない理由は、そんなことが続いたからなんです。

清水国明

清水国明

清水国明しみずくにあき

タレント

「あのねのね」で一世を風靡。芸能界きってのアウトドア派、スローライフ実践者としても知られ、子ども達の生きる力を育むための自然体験イベント等を積極的に実施している。また自然と共に生きる自身の経験から、シ…

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