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コラム 環境・科学

2012年06月15日

3.11後の大変化 (3)

■近づくピークオイル

日本では、今、原発に頼れなくなり、火力発電への依存度が高まっています。
しかし、化石燃料には限りがあり、いつかはなくなります。そして、なくなるより遥か前にやって来るのが、需給バランスの崩壊です。
特に石油は、 簡単に採れる豊かな油田がどんどんなくなり、深い場所から掘らなければならなかったり、濃度が低かったりして、コストがかかる油田が増えています。

それなのに、新興国を中心に需要が伸びているため、必要な石油が手に入れにくくなり、価格が高騰する「ピークオイル」が近いのではないかと心配されています。
火力発電は、石炭や天然ガスでも行われていますが、石油の需給が厳しくなれば、これらの需要が高まり、価格が上がっていく可能性があります。
エネルギー自給率が4%しかない日本は、 原発への依存度だけでなく 、化石燃料への依存度も下げて行かないと、いつ、国家として立ち行かなくなるかわかりません。

■高まる気候変動のリスク

そして、これは世界的な問題ですが、地球温暖化をきっかけとした、気候変動のリスクが、ますます高まっています。
今年4月下旬に明らかになったNASAの観測データによると、南極の氷床は、早いところでは年間7mというスピードで薄くなっており、大気温の上昇より、海水温上昇による影響の方が大きいとの事です。
去年8月には、同じくNASAの観測データから、南極の氷床が、1日に最大4~5mという早い速度で海に流れ出している事が分かっていますが、今回のデータは、それを裏付け、原因の推定にも役立つものです。つまり、南極の氷床は上から溶けるより早く、下から溶けて滑るように海に流れているのです。

ちなみに、今回の発見は、従来今世紀末にせいぜい1mと予測されている海面上昇が、数mになる可能性を示すもので、重要なニュースなのですが、何と、日本では私が知る限り、まったく報道されませんでした。
ざっとWebで調べた所、イギリスのBBC、アメリカのワシントンポスト他、ロシア、中国など各国では報道されていました。日本ではこのような大切な情報が、伝えられもしないのです。
先日、講演の会場で、このニュースを知っているか尋ねてみました。多くが会社の経営者で、情報に対する感度が高いはずの人達なのにも関わらず、一人も知りませんでした。
単なる説ではなく、動かしようのない観測データすら伝えられない状況ですから、日本では地球温暖化懐疑論が、まるでまともな説の一つのように思われてしまうのでしょう。

話を戻すと、このままでは、過去1万年間の非常に安定した気候のバランスが崩れ、高温化、或いはどこかで反転して寒冷化する、気候変動のリスクが高まる一方です。過去の大気のデータを分析すると、気候の変動は急速に起きる事があり、わずか10年で数度変化した事もあります。もしそうなれば、それでなくとも人口過多でギリギリの生活をしている人達は、食糧不足、居住可能な地域の減少などから大量の環境難民となるでしょう。世界情勢は不安定化し、人類は文明的な生活を保てなくなるかもしれません。
こうした事態になる可能性を減らすには、CO2排出量の削減、すなわち、化石燃料の消費量削減が欠かせません。

■すべては「省エネ」「創エネ」へ

結局、電力不足に対応するためにも、ピークオイルに備えるためにも、エネルギー自給率を高めるためにも、気候変動のリスクを減らすためにも、やるべき事は、前回も最後にご紹介した、この二つに繋がっていきます。
今あるエネルギー資源を出来るだけ効率良く活用する「省エネ」、そして、国産で、いつまでも使い続ける事ができる、再生可能エネルギーによる「創エネ」です。

もともと進めるべき取り組みだったわけですが、特に「創エネ」の方は様々な思惑から、日本では低く抑えられて来ました。今回の原発事故によって、事情が大きく変わり、ようやく日本でも本格的なスタートが切られようとしています。
すでに新興国にも抜かれ始め、周回遅れの感はありますが、ここから巻き返して行けるのか、しっかり見ていきましょう。

富永秀一

富永秀一

富永秀一とみながしゅういち

環境ジャーナリスト

私はアナウンサー時代から、環境に関する番組を制作してきました。現在は“無理なく続けられるエコライフ”をメインテーマに、テレビ番組制作、ネット放送、書籍・記事執筆等により情報発信中です。講演では、環境・…

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