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コラム 環境・科学

2010年07月23日

ゴミ処理と資源リサイクル

 ここ数十年の日本社会の動向を顧みますと、環境問題の解決は取り組むべき大きな課題でした。ただ、経済的にも政治的にも、今日本は大きな転換期を迎えております。今回は、日本におけるゴミ処理問題と資源リサイクルを振り返ってみて、今後の環境問題への取り組み方について考えてみたいと思います。

【ゴミ処理問題】
 かつて日本では、「ゴミ戦争」という言葉が頻繁に使われた時代があり、ゴミ処理が大きな社会問題でした。日本で行政が本格的にゴミ問題に取り組むようになったのは、戦後からではないでしょうか。戦後、ゴミ処理問題は環境問題と言うよりは、衛生問題としてまず取り扱われました。ゴミの大量発生、不適切なゴミ処理が様々な衛生問題を引き起こしていました。
 1955年から1973年頃までに日本は驚異的な経済成長を遂げました。1968年には国民総生産GNPが世界第二位になりました。この高度経済成長の間に水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなどの公害病が発生しました。また、製品や商品の大量生産の裏で、資源やエネルギーの大量消費と、ゴミ等の大量廃棄問題が起こりました。

【埋め立て処理と焼却処理】
 特に東京などの大都市部においては、発生する廃棄物に対して行政の対応が追いつかない状態が続きました。緊急避難的な処置として、大量に発生するゴミを東京湾に持って行って、埋め立て処理しました。東京に限らず、日本各地でゴミの埋め立て処理が行われました。
 ただ、海をゴミで埋め立てる事自体が大きな環境破壊でもありますし、漁業補償の対策費用も必要です。ゴミを東京湾に持って行って埋め立てを続けると、いずれは東京湾がゴミで埋め立てられることにもなりかねません。現在では、例えば東京では、各区、各地域に焼却場を建設し、燃やせるゴミはそこに集めて焼却します。焼却灰や安定な不燃ゴミを埋め立て処理しています。
 焼却炉は使っていますと、耐火煉瓦が劣化します。普通、焼却場は複数の焼却炉を持ち、数年毎に順番に焼却炉の劣化した耐火煉瓦を交換しています。ドンドン増えるゴミに対して焼却場の建設が追いつかなくなりますと、その対策として自治体が小規模の事業所などに対して補助金等を出して、簡易焼却炉や小型焼却炉でゴミを焼却することが推奨されました。
 また、焼却炉の耐火煉瓦の劣化を押さえ、寿命を長くさせるために、焼却場では低い温度での焼却処理が進められました。具体的には、燃焼温度を下げるためにプラスチック類は分別回収し、焼却しないこととしました。プラスチックの分別回収は、当初は資源リサイクルの観点ではなく、焼却炉の保護が目的で開始されたのが実情です。

【世界のゴミ処理の動向】
 日本ではゴミの大半を焼却処理していますが、欧米の先進国では、ゴミの大半を埋め立て処理しています。焼却場を建設しゴミを焼却することは費用もかかりますが、日本でゴミ焼却が主流になっているのは、埋め立てを行う場所が無いことが最大の原因です。日本の国土のほとんどは山地であり、沿岸地帯のわずかの平野の部分に多くの人が住み、生活や産業活動を行っています。
 例えば、人口が約3億人の米国は、日本の25倍の広さの国土を持ちます。人口が日本の半分程度のフランスの国土は日本の1.5倍の広さがあり、ほとんどが平野です。欧米の埋め立ては日本のように海ではなく、陸地に適切な場所が沢山あり、そこにゴミを埋め立てます。

【日本が抱える問題】 
 ゴミの減量と処分のために日本ではひたすら焼却を行って来ましたが、近年大問題に直面しました。ダイオキシンの問題です。焼却炉を守るためになるべく低い温度で焼却を行った事、小規模事業所などに簡易焼却炉や小型焼却炉での処理を奨励したことが総てダイオキシンの大量発生の原因になっていたのです。
 その対策として、簡易焼却炉などの使用を禁止するとともに、ゴミを高温で焼却するなど、ダイオキシンを発生させない高性能の焼却場の建設を多額の税金を投入して全国で進められました。
 昔は、分別して燃やさなかったプラスチック類も、現在では通常のゴミと一緒に焼却処理され、焼却炉の燃焼温度を上げ、ダイオキシンの発生を抑制しているケースも多くあります。
 また、プラスチック類の分別収集の例のように、リサイクルを行うことが絶対善であるという住民の意識や心情と、行政の実際とに大きなズレが生じる事もあります。自治体によっては、プラスチック類を焼却処分しているにもかかわらず、住民向けのポーズとして分別収集している場合もあります。逆に、経費をかけてプラスチック類をリサイクルに回している場合もあります。
 私が住む自治体では資源物回収に年間9億円以上の経費をかけていますが、回収した資源の売却益は7千万円程度です。極論かもしれませんが、数億円の税金が無駄使いされているとも言えます。
 ドイツやフランスでは、資源リサイクルの責任をメーカーに負わせているのに対して、日本では自治体が負っています。この状態が続く限り、制度的にも経済的にも妥当で合理的な資源リサイクルとゴミの削減はなかなか実現しないものと思います。

【資源リサイクルの課題】
 一昨年、再生紙に関して驚くべき事実が発覚しました。大手製紙会社が日本郵政に納める年賀はがきに混ぜる古紙の割合を、実際よりも大きな数字で偽っていました。40%古紙配合と言っておきながら、実際には1%未満だったり、中には古紙ゼロ%のはがきもありました。さらに、あらゆる再生紙の古紙の割合が嘘だらけであったことも発覚しました。例えば、古紙100%と表示されたコピー用紙が実際には古紙が40%、また40%と表示された厚紙では実際は古紙ゼロ%などです。この虚偽表示はすべての大手製紙会社が行っていました。業界では関係者は誰もが知っていたことで、そうすることが常識だったようです。
 そもそもリサイクル率などは確認しようもない数値なのです。にもかかわらず、そのような表示をさせたり、表示することを認めていた国の行政にこの問題の責任があります。しかし、なぜこのような事が大手製紙会社で当たり前のように行われていたのかを、国民は冷静に考えてみる必要があります。
 無理して正しくリサイクルした製品は結局は高価な品になります。より高価な品を買うためにはお金が必要です。税金であれ、企業の利潤であれ、例えば100万円を得るためには、人々はどれだけの経済活動を行わなければならないか、その経済活動の中でどれだけの資源やエネルギ ーを消費し、廃棄物を出すことになるかを考えなければなりません。

 今回はゴミ処理と資源リサイクルの話をしましたが、ここ20年ぐらいの間でも、かなりの紆余曲折があった事をご理解頂ければと思います。
 環境保全には経費が必要です。日本ではゴミ処理のコストが極めて高い国です。国の財政赤字が1000兆円を超えています。高齢化社会を迎えた今、福祉や医療にますます税金が必要です。環境問題においても理想論のみを語るのではなく、そろそろ現実をしっかりと見据えた議論を行う時期が来たように私は思っております。現状のリサイクルに含まれる問題点を「仕分け」する、それが最終的には国民の為になるはずです。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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