2015年10月09日

TPPの動向

 TPPには大きな関心が寄せられていますが、いまだ交渉は妥結しておりません。TPPはいつ妥結するのでしょうか。今回はTPPの現状と展望についてふれてみます。

■ハワイ会議とニュージーランド
 本年7月に各国の担当大臣がハワイに集まってTPP交渉が行われました。いよいよ妥結かと思われましたが、結局は交渉が決裂しました。妥結しなかった最大の理由は、ニュージーランドが自国の乳製品の輸入量を増やすように日本や米国、カナダに対して強く要求した結果と言われています。
 TPPにおいてはいきなり関税をゼロにするのではなく、品目によっては20年、30年かけて関税を下げていきます。関税の他に輸入枠も徐々に拡大していくなどして妥結していきます。去る7月の交渉会議ではニュージーランドは過度の要求がなされたようです。
 ニュージーランドのこのような戦術は今回だけではなく、過去にも同様なことがありました。ニュージーランドとEUの貿易に関する交渉において、協議の最終段階でニュージーランドは過度な要求を行いました。EUの交渉官らはそれまでの時間と労力が無駄になるのを避け、しぶしぶ妥結したようです。その結果、乳製品のEUへの輸出が大きく増えました。
 瀬戸際戦術はニュージーランドの常套手段のようです。人口が約440万人のニュージーランドにとっては、自国の主要産物である乳製品の輸出拡大は極めて重要なことになります。

■選挙を控えたカナダ
 TPPが妥結しなかったことについて、ニュージーランドに次いでカナダにも大きな原因がありました。カナダは他国に比べて個別の交渉が十分に進んでいませんでした。カナダは去る7月の交渉での妥結を望んでいなかったかもしれません。
 カナダでは本年10月に総選挙があります。TPP交渉では二国間で互いにギブアンドテイクを行って妥結を図ります。相手に譲った事項を選挙で非難されると困りますので、選挙前にはなかなか妥協はできません。カナダにはこのような事情があったようです。

■TPPの見通し
 コメの輸入や自動車部品輸出などに関して、日米間の大きなTPPの課題は長年の事前交渉で話は付いていたものと推察されます。それゆえ、去る7月にTPPの閣僚会合がハワイで開催されたものと思われます。しかし、強硬なニュージーランドの姿勢やカナダの消極的な態度等でTPPは妥結しませんでした。
 その後、担当官による交渉が継続された結果、TPPの閣僚会合が9月30日から米国アトランタで開催される見通しになりました。日本や米国はこの会合を「最後の会合」と位置づけており、残された難航分野について決着を目指す方針で、もし合意を逃せば交渉の長期化は避けられません。来年には米国の大統領選挙や日本の参議院選挙がありますので、最悪の場合はTPPの妥結は来年の秋以降に大幅に伸びることになるかもしれません。

■進むTPP以外の自由貿易協定
 自由貿易協定はTPPのみではありません。RCEP(アールセップ:東アジア地域包括的経済連携)という自由貿易協定の交渉が進められています。参加国はASEAN10ヶ国と日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドで、2015年末までに交渉の完了を目指しています。RCEPがスタートしますと、参加国の総人口では世界一の自由貿易協定になります。TPPに比べるとRCEPの内容は緩やかな協定です。
 その他、日中韓のFTA構想や、日とEUのFTA構想もあります。アジアにおいて日中韓の貿易量は非常に大きく、FTAを締結することは3国の経済発展にとって極めて大きな効果が期待されます。これまでEUは日本とのFTA締結には消極的でしたが、TPPが結ばれて多くの米国製品が日本に輸入されることに懸念を示し、今ではEUの方が日本とのFTA締結に積極的と言われています。
 TPPの以前には日本は個別に2国間でEPA協定を結び自由貿易の推進に努めてきました。これまで 日本はシンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、べトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴルの15ヶ国とEPAを締結しています。EU,カナダ、コロンビア、トルコ等、8ヶ国とEPA締結の交渉中です。
 アジア太平洋地域の21の国と地域が参加するAPECも究極は自由貿易圏を作ることが目的です。APECは人口では世界の41.4%、GDPでは57.8%、貿易額では47%を占めています。APECによる自由貿易圏の創設は急には実現しないと思いますが、将来はAPECによるアジア太平洋地域に大きな経済圏ができることになるでしょう。

 TPPや自由貿易の推進は避けることのできない世界の大きな潮流です。TPPの中身も重要ですが、TPPの妥結後に国がどのような対策を行うかは極めて重要です。TPPでマイナスの影響を受ける産業分野をしっかりと救済して、すべての業界が共に発展していくことのできるような対策が国によってとられることを強く期待いたします。