2015年09月19日

7メガワット浮体式洋上風力発電

 福島県は日本における再生可能エネルギーの開発や利用の拠点になりつつあります。その一環として、世界最大の7メガワットの浮体式洋上風力発電装置が建設されました。今回は、新しい局面を迎えた日本の洋上風力発電についてふれてみます。

■浮体式洋上風力発電
 洋上は障害物がないので陸上よりも風況がよく風力発電にむいています。しかし、洋上での風力発電は海中に送電線の設置や洋上での保守点検、漁業権問題など、様々な課題があります。風況は沖に出るほどよくなりますが、一般に日本の海は遠浅ではないので、着床式の洋上発電装置が設置できる場所は沿岸付近に限られています。着床式装置は水面下50mぐらいまでと言われています。風況の良い沖合の洋上で風力発電を行うために、浮体式洋上発電装置の開発が日本で進められてきました。

■洋上風力発電の立地
 風力発電は年間を通して適度な風が得られる場所が理想の立地場所です。ヨーロッパではドイツ北部やデンマークなどヨーロッパ北部で利用されています。ヨーロッパは遠浅の地形ですので、着床式洋上発電も盛んに行われています。中国ではロシアやモンゴルとの国境付近に立地されています。日本でも風力発電は北海道や東北に多く、日本全体の70%以上を占めています。
 大きな大陸の東側では台風やハリケーンが発生します。ユーラシア大陸の西側のヨーロッパや北米大陸の西海岸地域では台風やハリケーンはなく、風力発電が盛んに行われています。台風がある日本では風力発電装置の技術的課題の一つが台風対策です。

■再生可能エネルギーの拠点福島県
 東日本大震災による原発事故の後、福島県は再生可能エネルギーの拠点として整備が進められています。研究開発においては経済産業省が再生可能エネルギー研究所や福島洋上風力コンソーシアムを設立して取り組んでいます。再生可能エネルギー研究所では、高性能の太陽光発電施設や生み出した電力を水素にして貯蔵・運搬する技術の研究が行われています。
 福島洋上風力コンソーシアムには、三菱重工などの多数の民間企業と東京大学が参加して、福島県沖に浮体式洋上風力発電の実証実験を進めています。
 また、多くの民間企業が福島県内に太陽光発電や風力発電のほか、バイオマス発電や地熱発電設備を設置して発電を行っています。福島県では2040年度までに県内のエネルギーを再生可能エネルギーで全て賄う目標を掲げています。

■浮体式洋上風力発電の実証実験
 福島洋上風力コンソーシアムでは、既に福島県沖に2メガワットの浮体式洋上風力発電設備を設置し研究を進めていましたが、本年8月には、図1に示しますように7メガワット(7000kW)の風力発電設備を完成させ沖合約20キロメートルの場所に設置しました。
 この装置の高さは浮体部分を含めると約220メートル、重さは1500トンで、世界最大の風力発電装置です。本年12月には発電を始める計画ですが、その電気はすべて東北電力に売電されることになっています。一般家庭6000世帯分の電力を賄える発電容量を持ちます。
 なお、風力発電装置の稼働率を20%、原子力発電所の稼働率を80%としますと、7メガワット風力発電装置571基が100万kW原子力発電所1基の発電量に相当します。
 浮体式洋上風力発電は世界的にみてもノルウェーやポルトガルで研究が始まったばかりです。実証試験の開始により、日本は技術的に世界のトップを走ることになります。
 今後、福島洋上風力コンソーシアムでは、観測と予測技術の確立、浮体式洋上風力発電技術の確立、浮体式送変電技術の確立、洋上風力発電用浮体の事前調査及び施工技術、高性能鋼材の開発、航行安全性、環境影響評価、漁業との共存等について研究が行われます。


  図1 7メガワット浮体式洋上発電装置 (資料: 福島洋上風力コンソーシアム)


■今後の展望
 風力発電においては、コスト、環境影響、装置の安全性が大きな課題です。台風があり、雷の発生も多い日本では、風力発電装置の落下や倒壊、故障、落雷被害がよく生じております。壊れた風力発電装置を解体、撤去するためには多額の費用がかかるため、そのままに放置されているケースも多数あります。高い信頼性、安全性を持つ装置の開発を期待します。

 さて、福島県を再生可能エネルギーの拠点とする構想も、具体的な施設の建設が進み、ようやく形が見えてきました。今後は研究開発が加速されることになると思います。5年後、10年後の成果が楽しみです。