ご相談

講演依頼.com 新聞

コラム 環境・科学

2015年02月10日

資源リサイクルと廃棄物処理

 近年、EU(欧州連合)は厳しい環境政策を次々と打ち出しており、世界はEUの環境規制に合わせた対応をとっています。今回は資源リサイクルと廃棄物処理に関連したEUの環境政策とその影響についてふれてみます。

■資源リサイクルと廃棄物の適正処理の背景
 人類の生産活動と消費活動が拡大し続ける中で、現在では人類は数万種の化学物質を利用しています。その結果、副産物を含めると数十万種の化学物質が製造されていますが、その中には有害な化学物資もあり、不適切に廃棄された有害物質は自然界に蓄積して、環境汚染や自然破壊を引き起こしています。
また、多種大量の廃棄物が出されることにより、最終処分場もひっ迫しています。廃棄物処理と環境対策は行政のみでは対応しきれない状況になって来ました。環境保護のためには汚染物質の回収と資源リサイクルの促進が望まれます。さらに、廃棄や回収段階のみからではなく、リサイクルや分解処理が行いやすい製品の製造が求められています。

■EUの環境政策
 EUは厳しい環境政策を推進しています。これまで、使用済み自動車が環境に与える負荷を低減するためのELV指令、電気・電子機器の廃棄に関するWEEE指令、電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についてのRoHS指令、化学物質とその使用を管理するREACH法(規則)などが実施されています。
 なお、EUにおける指令(Directive)とは、加盟国に対してある目的を達成することを求めるもので、EUの法律や規則とは異なります。加盟国が国内の法整備を未施行であるために不利益を被った個人や企業に対して賠償の責を負うことになりますので、各国は指令に従い国内法を整備します。EU各国への輸出を行なう外国企業もEU指令を順守しなければなりなりません。EUの環境政策を理解するために、ELV指令とREACH法について次に紹介します。

■ELV指令(End-of Life Vehicles Directive)
  自動車からの廃棄物が出ることを防止または削減するために、使用済み自動車やそのコンポーネントの再利用や再生利用をすることを目的とした指令です。ELV指令の5つのポイントは次の通りです。
1.有害物質の使用禁止:部品や材料に、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムが含まれていてはならない
2.取り除く部品を指定:使用済み自動車を処理する際、まずはコンポーネントをすべて取り外すこと
3.目標リサイクル率:再利用率・再生利用率、リカバリーが指定されている
4.回収・処理システムの確立:処理証明が、自動車の登録抹消に必要。使用済み自動車を回収するための費用は製造者が負担する
5.使用済み自動車の無償引取り:使用済み自動車の回収時に、所有者に対する費用が発生しない仕組みでなければならない

■REACH法
 人の健康や環境の保護のために化学物質とその使用を管理するためのEUの法律です。このREACH法の7つの基本理念は次の通りです。
1.ノーデータ・ノーマーケット:データ登録されていない化学物質は市場に出せない
2.安全性の立証:製造者は安全性を立証する義務
3.立証責任の移行:行政の危険性の立証から、製造者の安全性の立証へ
4.予防原則:安全について不確実性がある場合は、予防措置をとる
5.代替原則:代替物が入手可能な場合には、より危険性の少ない物質によって置き換える
6.情報公開責任:登録された物質情報は原則、一般向けにインターネット上で公開
7.一世代目標:問題ある化学物質を2020年までになくす 

■厳しい環境規制、EUのねらい
 EUが次々と打ち出す厳しい環境規制のねらいを社会面や政治面から捉えてみますと、直面する環境汚染への対策、環境志向の文化や風土に合致、躍進する環境政党の政策に合致などが考えられます。産業面や経済面からは、環境分野での技術革新の促進、環境関連分野での国際競争力の強化などがあげられます。
EUにおける環境政策にはヨーロッパの「緑の党」が大きな影響を与えています。ドイツの緑の党は、1983年以来連邦議会に議席を持ち続けており、ドイツの環境政策に大きな影響力を発揮しました。特に1998年から2005年まで緑の党はドイツ社会民主党と連立政権を組み、リサイクル、脱原発、温暖化対策など環境政策を進展させました。ドイツ以外の国にも緑の党が存在し、一定の影響力を持っています。

■世界をリードするEUの環境政策
 EUの環境政策に対して国際社会からは、厳しい環境規制は産業の革新を妨げるや、規制の実行性が乏しいなどの批判があります。しかし、EUに製品を輸出する企業はEUの規制を順守しなければなりません。従って、世界の国々はEUの環境に関する指令や規則に合わせた対策を国内で実施しています。

 産業のグローバル化が進み、世界は大きな転換期を迎えています。TPPなど自由貿易が強力に推進されているように、EUの環境政策にみられる資源リサイクルと廃棄物の適正処理の強化は世界の大潮流です。日本の企業の積極的な対応を期待します。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

  • facebook

講演・セミナーの
ご相談は無料です。

業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。