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コラム 環境・科学

2013年11月08日

地球温暖化に関するIPCC報告書について

■地球温暖化問題とIPCC
 1988年、地球温暖化問題が世界的な話題になってから、もう25年が経ちます。1997年には京都議定書の内容が取り決められ、地球温暖化防止に国際的な取り組みが始まりました。しかし、その後も地球の温暖化は進行しています。

 地球温暖化問題については、観測やデータの分析、影響予測などの科学的取り組みが重要ですが、それらを国際的に行っている機関がIPCCです。IPCCはIntergovernmental Panel on Climate Changeの略語で、「気候変動に関する政府間パネル」と呼ばれています。IPCCでは地球温暖化についての科学的研究の収集や整理、知見の評価、さらに対策技術や政策実現性、被害想定などについて報告書を作成して数年おきに公表しています。

■IPCC第5次報告書(第1作業部会)
 地球温暖化の自然科学的根拠に関するIPCCの第1作業部会の第5次報告書が本年9月26日に公表されました。主な内容は次の通りです。

①地球温暖化の原因は、人間活動が20世紀半ば以降の温暖化の主な要因であった可能性が極めて高い。
②世界の平均気温は、2100年に最大で4.8度上昇する可能性がある。
③世界の平均海面水位は、2100年に最大で82cm上昇する可能性がある。
④観測結果として、過去20年にわたり、グリーンランド及び南極の氷床の質量は減少しており、氷河はほぼ世界中で縮小し続けている。また、北極の海氷面積及び北半球の春季の積雪面積は減少し続けている。

 地球温暖化の原因については自然現象の結果であるとの考えもありますが、IPCCのこれまでの報告書では人間活動によるものと指摘されてきました。今回の報告書では95%以上の確かさで人間活動に起因するものとしています。すなわち人類の化石燃料の消費により大量に放出される二酸化炭素などが地球温暖化を引き起こしているということです。
 氷河の融解による海水の増加、および温暖化による海水の熱膨張により海水面は上昇しています。

■地球温暖化の影響
 地球温暖化の影響に関するIPCCの第5次報告書は来年3月に、対応策に関する報告書は来年4月に出される予定です。温暖化により既に自然環境は気候変化による影響、特に気温の上昇による影響を受けています。氷河や永久凍土の減少、湖沼や川の水温上昇、生態系の変化、海水の酸性化などが進行しています。このまま地球温暖化が進めば、日本において将来にどのような影響が出るかについて、これまで日本国内の研究機関がまとめた内容を次に紹介します。

①豪雨の増加に伴う洪水の被害額が2030年に年間約1兆円に達する危険性がある。
②斜面災害など土砂災害のリスクが増大する。
③積雪に由来する水資源の減少により、代掻き期の農業用水が不足する。
④ブナ林の大幅な減少、松枯れの増大、湿原が減少する。
⑤米など作物の生産適地が北上する。収量が変化する。食糧供給に影響する危険性がある。
⑥高潮浸水面積の増大、河川堤防の強度低下、地下水位が上昇。
⑦砂浜や干潟の消滅による数兆円規模の経済損失の危険性がある。
⑧気温上昇による熱ストレス死亡リスクの増大、大気汚染や感染症の分布への影響がある。

■温暖化と気候変動、異常気象
 温暖化が進むと、気候が極端化すると言われています。集中豪雨などが増え洪水が頻発したり、あるいは逆に雨が極端に少なくなり干ばつが起こるなど、異常気象の被害が大きくなると予想されます。また、台風の規模も大きくなると考えられています。
21世紀になってから、西日本では台風による大雨や集中豪雨による水害が多発しています。最近は関東や東北地域、さらに北海道でも洪水被害が起きています。また、過去には少なかった竜巻による被害も最近よく発生しています。
近年日本で多発するこれらの災害の原因は地球温暖化よるものと考えられます。大きな水害を引き起こす原因を異常気象と呼んでいますが、頻繁に起こると異常ではなく通常の気象になるかもしれません。日本も含めて世界は確実に気候変動が進行しています。

■北極海の氷がなくなる
 温暖化で北極海の海氷が年々減少しています。2050年ごろには北極海の氷は消滅するという予測もあります。
 さて、北極海航路とは北極海経由で太平洋と大西洋を結ぶ航路のことです。温暖化の影響で最近は夏の数ヶ月間航行できるようになりました。近い将来は年間を通して航行できるようになるでしょう。インド洋からスエズ運河を通ってヨーロッパに行く場合に比べ、北極海航路を利用しますと航路の長さは約60%となり、航行日数が大幅に減少します。
 北極海航路は日本や中国、韓国にとってメリットのある航路となりましょう。しかし、北極海航路が現実味を帯びてきたということは、地球上の自然が大きく変化している証であり、温暖化の大きな恐怖を表しているのではないかと私は思います。

 東日本大震災と原発事故により、日本では地球温暖化に対する関心が薄れてきているようですが、今一度地球温暖化の重大性を皆が認識して、その防止対策を真剣に考える必要があると思います。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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