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コラム 環境・科学

2013年07月10日

期待されるシェールガス

 東日本大震災の後、日本のエネルギー事情は一変しました。中長期のエネルギー計画の策定が急がれています。このような中、米国のシェールガスに大きな期待がよせられています。今回はそのシェールガスについて触れてみます。

■シェールガスとは
 シェールガスは、頁岩層(シェール層)から採取される天然ガスです。頁岩(けつがん)とは、堆積岩の一種で、非常に小さい泥の粒子が水中で水平に堆積してできたものです。頁岩は堆積面に沿って薄く層状に割れやすい性質があります。頁岩層の中には天然ガスが含まれており、天然ガスの主成分はメタンです。シェールガスは従来のガス田ではない場所に存在することから、非在来型天然ガス資源と呼ばれます。

■シェールガスと米国 
 米国政府は従来から、シェールガス等の非在来型資源の開発を政策的に推進してきました。1998 年にテキサス州バーネット頁岩層において水圧破砕技術を用いたシェールガスの掘削にミッチェル・エナジー社が成功しました。2000年代の原油の高騰で、投資が集まり、シェールガス採掘技術の開発が進みました。主に、水平坑井掘削、水圧破砕、マイクロサイスミックの3つの技術革新により、シェールガスの商業レベルでの採掘が可能になりました。シェールガスが豊富に埋蔵している米国は、その生産が進んだことにより、過去には天然ガスの輸入国でありましたが、現在は輸出国に転じています。

 シェールガスを長距離に輸送する場合は、パイプラインを敷設するか、液化して専用タンカーで運ぶ必要があり、価格は高くなります。しかし、シェールガスが生産される近傍で利用することにより、安い価格で購入できます。米国では生産地に産業を誘致して、燃料や製品の原料としてシェールガスを利用したり、シェールガスによる火力発電を行ったりしています。

 米国は京都議定書に参加しておらず、二酸化炭素の排出量は増加していましたが、近年減少に転じています。最大の理由は、これまでの石炭による火力発電からシェールガスによる火力発電に転換が進んだからです。火力発電の燃料を石炭からメタンに変えることにより二酸化炭素の排出を約45%削減できます。

■シェールガスの採取法
 シェールガスの採取方法は次の通りです。
(1)地中深くまで垂直に坑井を掘削
(2)頁岩層に達すると90度曲げて水平に掘削
(3)坑井に大量の水を高圧で流し込む
(4)頁岩層に人工的に細やかな割れ目をつくる水圧破砕
(5)水と一緒に砂を圧入して割れ目が塞がないようにする
(6)こうして天然ガスの通り道を確保して回収
 生産量が落ちますと、杭井を60度かえて新たに水平に掘削して、シェールガスを採取します。一つの坑井で効率よく6回生産ができます。

■シェールガスの埋蔵
 石油資源が中東などに偏在しているのに対して、シェールガスは世界に広く分布しています。主な場所と技術的推定可採埋蔵量をあげますと次の通りです。
(1)米国、カナダ、メキシコの北米:54.7兆m3
(2)アルゼンチン、ブラジルなどの南米:28.3兆m3
(3)オーストラリア:11.2兆m3
(4)南アフリカ、リビア、アルジェリアなどのアフリカ:28.4兆m3
(5)ポーランド、フランスなどのヨーロッパ:10.4兆m3
(6)中国:36.1兆m3
 
 ロシアはシェールガスの埋蔵量について公表しておりませんが、相当量が埋蔵されている可能性があります。日本については、残念ながら生産できるような量のシェールガスは埋蔵されておりません。

■シェールガスと日本
 日本は世界最大の天然ガス輸入国ですが、100万BTU(英国熱量単位)あたり17ドルという、世界一の高値で輸入しています。お隣の韓国のそれが約10ドルであることを踏まえれば、異常な高値と言えます。これは韓国電力公社が一括して大量購入しているのに対し、日本では各電力会社やガス会社が個別に天然ガスを購入していることなど原因があります。また、安定的に供給を確保するために、原油価格に連動し、かつ長期契約を結んでいることが、単価の高騰に繋がっています。

 さて、シェールガスの米国の国内価格は100万BTUあたり約3ドルです。もしこれを日本が購入するとなれば、諸経費を含めて10~13ドルになると見積もられています。米国からのシェールガスの輸入が可能になれば、既存の輸入先との価格交渉も有利になりますから、さらなるコストダウンも可能でしょう。これまで日本は米国政府にシェールガスの輸出許可を強く求めていましたが、本年5月に最初の輸出許可が出ました。2017年からLNGとして輸入される見通しです。シェールガスは世界中に分布しているわけですから、中長期的な戦略として、日本企業が今後も積極的にシェールガスの開発段階から参画していくことが、将来の安定した輸入に繋がります。

 なお、日本の近海には大量のメタンハイドレートが存在することが確認されています。その埋蔵量は、日本国内で使われる量の約96年分に相当すると試算されています。もちろん、これを採掘してエネルギー化するには少なからずコストがかかります。価格は既存の天然ガスの価格の3倍以上になるという試算があり、価格面から今すぐに実用化するのは難しいところです。ただ、採掘技術を確立しておくことは、いざという時の備えにもなりますので、資源の少ない日本にとって極めて重要なことです。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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