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コラム 環境・科学

2013年04月10日

内部被曝やホットスポットの対策

原発事故から2年が経ちました。今回は、内部被曝を防ぐ方法や、ホットスポットについてふれてみます。

■内部被曝の経路
放射性物質を体内に取り込んだ場合の被曝を内部被曝といいます。内部被曝の主な経路は次の三つです。

(1)呼吸によるもので、放射性の微粒子や気体を肺や体内に吸い込んだ場合
(2)経口によるもので、放射性物質が付着した飲食物を摂取した場合
(3)皮膚や傷口から放射性物質が吸収される場合

同一の放射性物質からの放射線に被曝する場合でも、外部被曝より内部被曝の方が危険な場合があります。アルファ線は体外からの照射では、その大部分は皮膚の内側に達することはありませんが、体内にアルファ線を出す放射性物質が入りますと、その周囲の細胞が照射されるために組織や器官の受ける放射線の量が大きくなります。

透過力の弱いベータ線を出す放射性物質も外部被曝では影響を与える程ではありませんが、体内にある場合は影響が大きくなります。

■内部被曝を防ぐ
原発事故などが起こりますと、基準値を超える食品の流通が止められますが、汚染された農産物を摂取しないように注意する必要があります。また、放射性物質に対して、マスクを装着するか男性用の木綿ハンカチを八つ折りにした代用ですと、大きさが1から5ミクロンの微粒子の90%程度を除去できます。手が放射性物質に汚染されたまま、食事や喫煙をしますと内部被曝を受けやすいので注意が必要です。

なお、緊急時には非放射性のヨウ素を含むヨウ素剤を予防的に内服して、放射線障害を予防することもあります。また、セシウム等の放射性物質を摂取した場合、速やかにプルシアンブルーを服用しますと、消化管からの吸収を抑制する効果があります。ただし、これら薬品による防御は、専門家の指示や指導を得て実施しなければいけません。

■広域的ホットスポット
ホットスポットとは、放射性物質の飛散後に環境の放射線量が周辺より高く測定される地域や場所を指します。ホットスポットにも注意を払って放射線を避けることが重要です。ホットスポットには広域的なものと局所的なものがあります。

広域的なホットスポットは地形や気象が影響して作られます。具体的には次のような場所です。

(1)事故施設から大量に放射性物質が放出された時、風下方向に位置する場所
(2)山が衝立の役割をして浮遊する放射性物質が降下しやすくなる山間部
(3)放射性物質の飛散時に、他より比較的多くの降雨があり、たくさん降着した地域

図に2011年の原発事故後の放射性物質による汚染状況の地図を示します。原発の北西に位置する飯館村付近は非常に高い放射線量が示されていますが、上述の(1)のケースに相当します。また、栃木県や群馬県の北西の山間部は周辺地域より高い放射線量が観測されていますが、(2)のケースにあたります。千葉県北部、茨城県南部付近にも高い放射線線量が測定された場所がありますが、これは(3)のケースに相当すると考えられます。

shindou_2013.4.jpg図 放射性セシウムの蓄積量(2011年10月:原データ・文部科学省)

■局所的ホットスポット
局所的ホットスポットのほとんどは水の作用で作られ、次のような場所です。

(1)屋根に降着した放射性物質が降雨により雨樋の排出口に集まります。雨樋の雨水の出口が地面や芝生などの場合は溜まりやすくなります。
(2)アスファルトの道路面に降着した放射性物質は路側の草の茂みなどに溜まりやすくなります。
(3)樹木の葉には浮遊する放射性物質が付着しやすく、放射性物質の集塵器のような働きをします。草や芝生にも溜まりやすく、樹木や草の多い公園や民家の庭にも溜まりやすくなります。
(4)排水溝の泥溜には放射性物質が溜まりやすいです。
(5)下水の汚泥処理後のスラッジは高い放射線量を示します。
(6)河川の河口付近は、放射性物質が高濃度になりやすいです。
(7)湖なども湖底に放射性物質が溜まりやすいです。

ホットスポットではありませんが、稲わらや採石の堆積物は、構造上内部に放射性物質を貯めやすい特性を持ちます。稲わらを家畜のえさにしたり、採石を建築や建設の資材として使う場合は、安全を確認するなどの対策が必要です。

■セシウムの性質
原発事故で放出された放射性物質の中で、現在放射線を出している物質のほとんどは半減期が約30年の放射性セシウムです。

放射性セシウムは土壌の層30cmがあれば、放射線量を約40分の1にすることができます。放射性セシウムを多く含むスラッジのほとんどは最終的には埋め立て地などで覆土処理されています。

セシウムはナトリウムやカリウムと同じアルカリ金属なので、塩化ナトリウムと同様に塩化セシウムの状態では水に溶けやすい物質です。セシウムは土壌の粘土質に強く引き付けられ、いったん土壌に付着や吸着しますと、根からの吸収や地下へ浸透しにくい性質を持ちます。

いまだに局所的に放射線量の高い場所が存在します。ただ、放射線量が他の地域より高いからと言って、必ずしもその場所が危険と言う訳ではありません。放射線線量の数値を冷静に判断して、対処することが必要です。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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