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コラム 環境・科学

2013年03月25日

放射線から身を護る方法

原発事故から2年が経ちました。今回は様々な原子力事故を想定して、放射線から身を護る方法を述べます。放射線が外部に放出される事態はいろいろなケースが考えられますが、過去の日本の事故事例を考えて、本稿では下記の通り、三つのケースを考えてみました。

■事故施設から出る放射線から緊急的に身を護る 1999年に起きた茨城県東海村のJCO核燃料加工施設の臨界事故では中性子線が漏出し、犠牲者も出ました。このように漏出した放射線から身を護る場合の3つのキーは、距離と遮蔽、時間です。

(1)距離:素早く、なるべく遠くに避難することが大切です。放射線が立体的にあらゆる方向に等確率で放出されていると仮定しますと、発生源からの放射線の強さは距離の二乗に反比例します。放射線の発生源から1mの場所と比べて、100m離れた場所では放射線の強さは1万分の1に減少します。

(2)遮蔽:放射線の遮蔽物を利用して被曝を防ぐことも大切です。屋内に退避して放射線を避けることは有効です。特にコンクリートの壁の向こうに逃げたり、コンクリートの建物の中に避難することは大きな遮蔽効果があります。

(3)時間:被曝量は時間に比例しますので、放射線を浴びる時間を少なくすることが大切です。屋外に出たりせず、事故が収束するまで安全な避難場所で待つ事が望まれます。

■飛散した放射性物質による強い放射線から緊急的に身を護る
原子力発電所でメルトスルーなどの重大な事故が起きた場合には放射性物質が外部に放出されます。2011年の福島第一原子力発電所の事故では、大量の放射性物質が飛散して広い地域に被害が出ました。

事故直後や事故施設の近傍では、放出された放射性物質による高い放射線から身を護る3つのキーも距離と遮蔽、時間です。

(1)距離:放射性物質の飛散は風が大きく影響します。放射線の場合のように距離の二乗に反比例して弱くなるというようなことはありません。しかし、放射性物質の放出源から素早く、なるべく遠くに避難することがやはり重要です。事故施設などの放射性物質の発生源の風下方向への避難は避けなければなりません。ただ、風向は変化するので注意が必要です。

(2)遮蔽:避難する途中で放射性物質を極力浴びないようにしなければならなりません。放射線を受けることを被曝といいますが、放射性物質が体や衣服に付着することを放射能汚染といいます。避難のときには衣服を覆い、なるべく身体が露出しないようにします。衣服に付着した放射性物質は洗濯すると相当除去できます。また風呂に入れば身体に付着した放射性物質をかなり除去できます。

(3)時間:一時的に避難する場合に、コンクリートの建物の中にいると外部からの放射線を9割程度遮蔽できます。移動が困難な場合はコンクリートの建物の中など、なるべく安全な場所に避難して、事故が収まるか救助が来るまで待つのが良いでしょう。建物の中ではエアコンは使わず、なるべく外気を入れないようにして、放射性物質が屋内に入って来ることを避けなければなりません。

■飛散した放射性物質による比較的弱い放射線から身を護る
事故後に放射性物質の放出が収まった時期、もしくは事故現場から遠くの場所で、比較的弱い放射線から身を護る方法を以下に述べます。

図に、2011年3月11日の原発事故後に東京都新宿区内で測定された環境放射線量の変化を示します。大気中に放出された放射性物質により一時的に空間放射線量は大きくなりますが、放出が止むと時間とともに環境放射線量も減少します。安全な放射線量になるまでは、極力放射線を浴びることを避けることが大切です。

低線量の放射線であっても累積被曝量が大きくなると健康に害を及ぼす可能性が高くなります。その対策として次のような点に注意すると良いでしょう。

(1)外出をなるべく控える。コンクリート建物内では約9割、木造家屋内でも約6割の放射線を遮蔽する。

(2)外出時はウインドブレーカーなどを着る。夏でも肌を覆う。マスクや帽子をかぶる。

(3)放射性物質が大気中に放出された直後の雨には、高濃度に放射性物質を含む場合があるので注意が必要です。

(4)放射性物質の家の中への持ち込みを防ぐ。そのため、帰宅時は服の埃を払い、手をよく洗う。衣服をよく洗濯する。

(5)事故後はなるべく屋内に外気を入れない。エアコンの使用も控える。

(6)浄水器の使用は、水に含まれる放射性物質の除去にある程度の効果があります。

(7)野菜は洗うと付着した放射性物質の10~30%を、ゆでると40~80%を除去できます。

周期的に起きる東南海大地震や、予測しづらい直下型活断層地震の発生のおそれは常にあります。原子力事故による放射線から身を護るための知識や情報として、本稿が少しでも参考になればと願っております。

shindou_2013.3.jpg図  原発事故後の東京都における環境放射線量の測定値 (データ:東京都)

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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