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2012年02月24日

業種別の節電ノウハウ

昨年の東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、日本の多くの原子力発電所が稼働停止状態になっています。日本の54基の原子力発電所の内、2012年2月15日現在で稼働しているのは3基のみで、稼働率は6%以下です。原発事故の前の平均稼働率は約80%で、日本の総電力の約29%を原子力が賄っていました。現在、緊急的に火力発電の増強により電力を確保しています。

東京電力では企業や自治体など大口契約者向け料金を今年4月から17%引き上げます。将来的には電力料金の値上げは他の電力会社にも波及していくでしょう。企業にとって節電対策は極めて重要なことになっています。

節電の基本は、まず電気を極力使用しないことです。たとえば照明機器や空調機で、使用する必要のないときはしっかりと電源をOFFにしておくことです。次に、電気を使う場合も省エネ性の高い機器を使用することです。そして、事業所等での機器使用において電力のロスを作らないか、もしくはロスを最小限にすることです。今回のコラムでは、業種別の節電方法について述べてみます。

■製造業における節電
製造業における節電法は次のとおりです。節電効果はそれぞれの機械や設備ごとの数値です。不要または待機状態にある電気設備の電源をオフにすることや、モーター等の回転機の空転防止を徹底することが望まれます。電気炉、電気加熱装置の断熱を強化した場合は約7%の節電になります。使用側の圧力を見直すことによるコンプレッサの供給圧力の低減で約8%の節電になります。また、コンプレッサの吸気温度の低減で約2%の節電になります。

冷凍機の冷水出口温度を高めに設定し、ターボ冷凍機・ヒートポンプ等の動力の削減で約8%の節電になります。負荷に応じてコンプレッサ・ポンプ・ファンの台数制御の実施で約9%の、インバータ機能を持つポンプ・ファンの運転方法の見直しで約15%の節電になります。

工場においても空調や照明の節電は大切です。まず使用していないエリアの消灯を徹底することが大切です。白熱灯を電球形蛍光ランプやLED照明への交換で76%~85%の節電になります。工場内の夏季の冷房温度を28℃に設定することにより約6%の節電になります。また、外気取入量を調整することで換気用動力や熱負荷の低減で約8%の、室外機周辺の障害物を取り除くとともに直射日光を避ける事で約10%の節電ができます。

■飲食店における節電
平均的な飲食店を考えた場合に用途別の電力消費は、空調が約46%、照明が約29%、厨房機器等が約22%で、電力のほとんどがこれらの3分野で消費されています。飲食店における具体的な節電法は次の通りです。

使用していないエリアや不要な場所の消灯の徹底と、客席の照明の半分程度の間引きで約40%の節電になります。夏季の店舗の室内温度を28℃以上にする事で約8%の節電ができます。冷凍冷蔵庫の庫内は詰め込みすぎず、庫内の整理を行い、温度調節等の実施で約3%の節電になります。

■小売業・卸売業における節電
小売業・卸売業では、平均的に電力消費の約半分は空調です。また照明は全体の4分の1の電力消費です。従って、空調と照明の節電をまずしっかりと行う事が基本になります。具体的には、店舗の照明の半分程度の間引きで店舗全体の約13%の節電になります。

(※以下は節電効果は店舗全体の数値です)
使用していないエリアや不要な場所の消灯の徹底で約2%の節電になります。また、夏季の冷房温度を28℃に設定することで約4%の節電になります。さらに、業務用の冷蔵庫などがある場合は、使用する台数を限定したり、冷凍・冷蔵ショーケースの消灯や凝縮器の洗浄を行うことにより約1%の節電になります。次に、室内の二酸化炭素濃度の増加に注意を払いつつ、その基準範囲内で換気ファンを一定時間停止したり、間欠運転によって外気取り入れ量を調整することで、約8%の節電になります。また、ピーク時間を避けるため、営業時間や営業日を短縮・シフトすることにより約10%の節電になります。

■節電時の注意するべき事項
エアコンの使用を過度に控えたために熱中症等になることのないように、また食中毒の予防のために冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃が保たれているように注意しなければなりません。照明の節電には安全面や健康上の配慮が必要です。また、エレベータではバリアフリーの確保に注意を払う必要があります。また、節電のために古い機器を使用する場合は、まず安全の確認を行う事が望まれます。

節電においては、当然ながら法令で許された範囲で行わなければなりません。室内の照明や温度は、労働・衛生関連の法令の順守が必要です。

今回は三つの業種別に節電法を述べましたが、節電の基本は同じですので、他の分野の方々にも十分に参考になると思います。なお、節電効果の数値は経産省の試算を参考にしました。
 節電は省エネでもあり、電力消費の削減は経費の削減につながり、企業にとっては利益の増加となります。このような観点からも、現在の厳しい経済環境下で一層の節電を期待いたします。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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