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コラム 環境・科学

2011年08月25日

食物の安全性はベクレルで

環境の放射線の生体への影響を表す数値として「シーベルト」がありますが、
食物や飲料水の安全性を測る単位として「ベクレル」があります。
今回はベクレルについて触れてみます。

【ベクレルとは】
ベクレルとは、物質の放射能の量を表す単位(記号はBq)で、
1秒間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1 ベクレルです。

ベクレルは原子力事故で放出された放射能の量や、
また汚染された食物や水の放射能の大きさを表します。
汚染の程度を調べる場合は、食物や水1kgあたりの数値として扱われます。
食物が食用に適するかどうかは、ベクレル値で判断されます。

尚、ベクレルとシーベルトの間には換算関係はありません。
いろいろの条件が決まれば、ベクレル値からシーベルト値を推算することは
出来ますが、本来ベクレルとシーベルトは全く定義の異なる単位です。

【食物の暫定基準値】
現在日本では、食物や水について、その平均的な摂取量を仮定し、
事故直後の基準値として放射能の暫定基準値を定めています。

<平均的な食物摂取量の仮定(成人/1日あたり)>
□水:1.65リットル
□野菜類:600グラム
□穀類:300グラム

<(※上記の食物摂取量に基づく)放射能の暫定基準値>
□放射性ヨウ素:年間33ミリシーベルト
□その他:年間5ミリシーベルト

現在設定されている食物の暫定基準値は次の通りです。
摂取量の多い水に対しては厳しい基準値が設定されており、
事故後の現在は300 ベクレル/kgを暫定基準としています。
(原発事故以前は、放射性のヨウ素131に対する水の国内基準は10 ベクレル/kg)

<現在設定されている食物の暫定基準値>
■「ヨウ素131」の放射能に対して
□牛乳・乳製品: 300ベクレル/kg
□野菜類(根菜、芋類を除く):2000ベクレル/kg

■「セシウム137」の放射能に対して
□飲料水: 200ベクレル/kg
□牛乳・乳製品:200ベクレル/kg
□野菜類 :500ベクレル/kg
□穀類:500ベクレル/kg
□肉・卵・魚・その他 500ベクレル/kg
※事故発生前は海水中を泳ぐ魚に対し基準値は設定されていませんでしたが、
現在は肉や卵の値を準用しています。

放射性のセシウム137の半減期は約30年ですが、
放射性のヨウ素131の半減期は約8日です。
原発事故から150日以上経っていますので、
現在では放射性のヨウソ131はほとんど消滅しています。

【浄水場のベクレル値】
概ね200ミリシーベルト/年以下の低線量放射線を長期に被曝しますと、
生体のDNAが損傷を受けます。その損傷が修復されず固定されると、
やがてはがんや白血病に罹る可能性が高くなります。
特に成長期で盛んに細胞分裂を繰り返している幼い子供ほど
影響が大きくなります。
現在、飲料水の暫定基準値は
放射性のヨウ素131に対しては、300ベクレル/kgですが、
乳児に対しては、100ベクレル/kgと定められています。

原発事故から間もない3月23日、東京都の金町浄水場の水道水から
210ベクレル/kgのヨウ素131の放射能が測定されました。
直ちに健康に影響を及ぼす値ではないものの、
国はこの測定値に対して、乳児の飲み水や粉ミルクを溶かす水として
使用する事を控えるよう呼びかけました。

同様な事態が千葉県内の浄水場でも発生しましたが、
いずれも1日程度で測定ベクレル値が低下し、
注意の呼びかけは解除されました。
これは、3月15日に大量の放射性物質が放出された後、
3月21日以降に関東地方でまとまった降雨があったためです。
空気中に浮遊するヨウ素131が雨と一緒に地上に降下し、
浄水場の水の放射能の値が大きくなったためです。
雨が止むとともにベクレル値は低下しました。
また、主たる原因であった放射性ヨウ素は
半減期約8日の早い速度で減少しました。

【牛肉の放射能汚染】
先般、放射能汚染された稲わらを与えられて育った牛が、
全国で3000頭近く出荷されていたことがわかりました。
市場に出た牛肉の中から規制値超えるベクレル値が検出され、
セシウム汚染された牛肉の一部は販売されていました。

現在は、放射能汚染された稲わらを与えられた牛の出荷は
政府による出荷制限の指示が出されていますので、
原則として汚染された牛肉が市場に出回ることは無い、と私は考えています。
また、現在は食物のベクレル値すなわち放射能は産地の都道府県で、
水道水のベクレル値は管理自治体等によってこまめに測定されており、
暫定基準値以上の放射能が検出された食物は事前に出荷制限されています。
従って、市場に出ている食品は原則暫定基準値以下、ということになります。

尚、放射線に関する厚生労働省の妊婦へのパンフレットにおいて、
「万が一、規制値を上回った食物を口にしてしまったからといって、
健康への影響が出ることはありません」という記述があります。
この記述が意味する所は次の通りで、実際的に正しい記述です。

もし何も知らずに、規制値を超える
1000ベクレル/kgの牛肉を100g食べたとしますと、
体内汚染は100ベクレルとなります。
元々、人間は体重60kgの人で約7000ベクレルの放射能を
体内に持っていますから、
規制値を超える牛肉を一時的に食べたからといって、
健康に影響が出るとは考えられないのです。

妊婦の方は胎児への影響が心配でしょうが、過度に不安になられず、
基本的には通常通りの食生活をされてください。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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