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コラム 環境・科学

2008年11月15日

食卓の上の地球~食と環境

あなたは、今朝、何を食べましたか?鮭が一切れ、または鰺の干物が一枚、生卵が一個、納豆1パック、おみそ汁1杯、・・・・こんなメニューを特別に贅沢と思う方はいないかも知れません。しかし、地球レベルで見ると、これは大変”在り得難い”ほど豪華なお食事です。日本での平凡なこのメニューを食べられるのは、世界の総人口約67億人のうち30億人から35億人が限度なのです。もし、仮に全人類が、この地球上の食糧すべてを均等分配するとしても、(勿論、その場合、豪華なお食事メニューは無理)養い得るのは57億人が限度。つまり、今現在、どんなに頑張っても10億人は餓死者が出るという状態に私達は生きているのです。

段ボール肉まんや毒餃子事件など、最近立て続けに食に関する事件が起きて、やっと日本人は、自分が食べている物がどこから来ているのか、に目を向けるようになりました。食物自給率が公称39%で、それが大変低い数値であるらしいということも、ようやく気づきました。しかし、それでもまだ、食の問題の本当の深刻さには、思い至っていないでしょう。2012年には、世界的規模で食糧危機が起きる、つまり、世界中どこの国も同じように慢性的食糧不足に陥り、どんなにお金を積んでも食べ物が買えない、という事態がやってくるなどということは、想像もできないでしょう。今まで日本人は、食料は他国からお金で買うもの、お金があればいくらでも手に入るもの、という認識で来ましたから。

けれども、世界的食糧危機は、科学的根拠に基づく予測です。原因は、途上国の工業化による農地の減少や経済発展に伴う食生活の向上、例えば肉食の増加など、幾つかありますが、最も大きな原因は地球環境の悪化です。地球温暖化による気候変動の影響で、日本でも各地で大きな自然災害が頻発するようになりました。本来ならばシトシト雨の降る梅雨の時期に、台風並みの豪雨に見舞われたり、夏の強すぎる日差しで稲の粒が割れてしまったり、収穫間際にかつてない大型の台風の直撃で壊滅的な打撃を受ける・・・・このような被害は、もうここ数年、全国各地で起きていますが、日本だけでなく、世界各地で頻発しているのは、ニュースなどで盛んに取り上げられている通りです。

一方、陸上だけでなく海の生態系も大きな変化を見せています。海水温の上昇により、魚が産卵しない、しても卵がふ化しない、或いは海流の変化により漁業権の範囲で捕れなくなったなど、様々な要素が重なり合って、海からの食糧調達が年々難しくなっています。

そう、私達人間は、他の生き物の命を頂いて生きている、生かしてもらっている生物なのです。どんな権力者でも、どんな大金持ちでも、いくら頭が良かろうと、空気を吸って、水を飲み、食べ物を食べて生きている一個の生物であるというこの事実からは、なんびとたりとも逃れることはできません。ですから、地球環境の悪化によって人間以外の生物が死に絶えてしまったら、当然、人間は食べる物がなくなります。人間は無から有を創ることはできませんから、基になる材料がなくなれば、現在お馴染みのコピー食品もいずれ口に入らなくなります。このような事態に陥ることは、既に1980年代から科学的予測がなされており、その時が来たら、食べ物と水を巡って戦争になるとの認識から、ヨーロッパ諸国では「冷戦終結後の第2の安全保障は、食糧と水とエネルギー」と言われ、これを『人類の安全保障』として、必死で対策に取り組んできました。しかも、エネルギーに関しても、最も頼りにし、便利に使って来た石油が、2015年頃には、価格高騰により現在のようには使用できなくなるであろう」との予測が出されています。つまり、食糧と水とエネルギーが、ほぼ同時期に欠乏状態になるわけです。では、どうしたら良いのでしょう?答は日本にあります。

まず、食について。従来のように田畑の土で栽培し、直接に土から収穫するやり方の他に、建物の中で、水栽培で農作物を育てます。農場というより工場のイメージです。土を使わないので細菌類や害虫の被害が格段に少なくなるので、農薬をほとんど使用せずに栽培が可能です。何よりいいのは、建物を3階建てにすれば平地から直に栽培する分の3倍、4階建てにすれば4倍という具合に、同じ土地から何倍もの収穫が得られる点です。国土が小さく、耕地面積が狭い日本にとって、土地の有効活用は重要課題です。この方法なら、安全で、気候変動による影響も受けることなく、安定的に農作物を生産できます。自給率100%は勿論、他国へ販売したり、途上国支援に回すこともできるでしょう。勿論、従来のように各地方それぞれの土地の気候風土に根ざした名産品は、直接土から収穫し、「特産品」としての付加価値をつけて少し高値で販売すれば、その分、収入もUP♪食糧の自給率を経済も環境も良くなる「エコ・エコノミー」が実現できます。

「農作物を育てるために必要な光はどうするのか?」もう一つの課題であるエネルギー問題解決の答がそこにあります。太陽光発電、風力発電、小型水力発電などを組み合わせ、これら自然派エネルギーを中心に賄うのです。これらはひとつひとつの出力は小さいですが、発電源と使用場所が近いので、送電ロスがありませんから、ほぼ100%有効活用できます。設備建設時には石油も必要ですし、CO2も出しますが、完成後は石油も要らず、CO2も有害廃棄物も出しません。当然、従来の発電所も利用できるのですから、その高効率化を計ることも重要です。

水は、従来同様、河川の水を利用しつつ、雨水を有効活用します。首都高速道路の上に降る雨水だけでも都民の飲み水に相当する分量があるにも拘わらず、現在はそれがそっくり下水として捨てられています。大型ダムは、その上に雨が降ってくれないと、折角の雨も”水の泡・・・”やはり、雨も逃さず使いましょう。これに関しては、東京都墨田区にモデルがあります。既に、世界でも大活躍の雨水利用設備「天水尊」。電気的動力不要で簡易濾過装置付きなので、そのまま飲める水が確保でき、災害時の備えとしても安心です。

キーポイントは、食・水・エネルギーの地産地消と自立です。現在の社会・経済システムが、もう限界であることは誰もがわかっていることです。まだ、石油が使えるうちに、「大丈夫」と言っていられる状態の今だからこそ、今後に備えて、次世代の社会資本整備、新しいインフラ整備をする必要があります。それを「新たな公共事業」と位置づけ、推進すれば、環境を良くすることで経済も発展する「エコ・エコノミー」が実現できるのです。

村田佳壽子

村田佳壽子

村田佳壽子むらたかずこ

環境ジャーナリスト

桜美林大学大学院修士課程修了。元文化放送専属アナウンサー。1989年環境ジャーナリストの活動開始。現在、明治大学環境法センター客員研究員、ISO14000認証登録判定委員、環境アセスメント学会評議員、…

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