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コラム 人権・福祉

2014年03月20日

学校に暮らす子供たち

 ここはインド・コルカタにある小学校。歴史を感じさせる建物の中から、笑い声や歓声が聞こえてくる。歌声や音読の声も重なってくる。ここまではごく普通のインドの小学校の光景。しかし1つだけ、他の学校では見ない特徴がここにはありました。それは子供たちが家に帰らないこと。

 

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 この学校では子供たちが校舎の中で暮らしながら、共同生活を送っていました。日々の授業を終えると、食事の支度、そして自分たちでベッドを配置し、虫を防ぐ為の蚊帳もはり、川の字になって眠っていました。教室の向かいにある部屋が生活の場、寝食を自分たちの手でまかなっていました。
 コルカタには様々な事情で家族を失った子供たちが学べる場所があります。勉学はもちろん先生や管理人の方々が家族のように寄り添ってくれている。先生たちは同じ地域で生まれ育ち、重なる境遇から指導者となった方々であり、地元の慣習や子供たちの環境を心身で認識していました。こうした先生だけでなく、地域の方々からの支援、そして街をあげた教育基盤の提供も子供たちを支える大切な絆となっていました。子供たちを覆う一つ一つの壁を、丁寧な環境と時間がやわらげていく。子供たち自身にも責任と義務を気づかせていく。繰り返される日常のなかに生活規範と緊張感ある時間が覆っていました。

 

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 世界に目を向けてみると学校に通えることは決して当たり前ではないことに気づかされます。この学校の周辺の廃棄物集積場では学校に行けない子供たちが、両親の仕事を手伝っている。家族を支える仕事が子供にも課せられている姿を何度も目にしました。貧困だけでなく、環境が子供たちの学ぶ場を変えてしまうのであれば、その環境を地域一帯で変えていく。そのはじめの一歩が、この小学校の形でありました。
 子供たちはこう語っています。「将来の夢は先生、さらにはエンジニアやドクターになること。」世界でも産業の最先端を走るインドの知識と技術は、こうした子供たちの基礎教育、そして家族や地域一体でささえていく環境が原動力となっていました。学び、遊び、そしてまた学ぶ。インドの子供たちの教育最前線。手を合わせ、授業の合間に祈りを捧げる少年の姿に優しさと強さを感じました。

 

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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