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コラム 人権・福祉

2019年01月18日

トランプ大統領とアメリカ軍

 選挙を経ることで、民主的で公正な指導者を選ぶことができる。こうした誰しもが信じる民主選挙も国際情勢や政治混乱によって、その先行きは想定できない領域に沈み込んでしまうことがあります。

 アフガニスタンでは今年の4月20日に大統領選挙を予定していましたが、過激派組織との交渉や政争による混乱を避けるため3ヵ月後の7月20日に延期することが発表されました。この選挙延期手続きの直前には、アメリカのトランプ大統領がアフガニスタンから駐留アメリカ軍を一部撤退させる方針を発表。アメリカ軍が前線から引き上げることで、過激派組織にとっては反政府活動やテロ襲撃事件の拡散が容易となり、大統領選挙への悪影響は必至。両国の外交交渉が頓挫する懸念が指摘されています。

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 こうした動きはアフガニスタンに限らず中東のシリアでも見て取れます。内戦状態のシリアでは、アサド大統領が君臨するシリア政府、反アサドを掲げる反政府武装組織の連携部隊、そしてアメリカ軍の支援を受けるクルド人武装組織が、三つ巴となって衝突を繰り返しています。アサド政権はロシアの軍事支援を受け、北西部イドリブ県を除く国土の大部分を制圧下に置きました。クルド人武装組織と連携を組むアメリカ軍は、昨年の段階で過激派組織イスラム国の壊滅状態を確認し、トランプ大統領による完全撤退命令が下されています。前線に残されたクルド人武装組織は過激派との対峙だけでなく、クルドを敵対視するトルコ軍によっても板挟みとなり孤立化。軍事力の空洞化によって過激派組織の再浮上が想定されます。

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 アメリカ軍が背負ってきた国際情勢の抑止力という肩書きは利権を争う大国の代理戦争という構造から、各国での内戦勃発の引き金となりかねません。アメリカファースト掲げるトランプ大統領にとって、アフガニスタンや中東情勢に関わることは、外交ビジネスとして利益はないと判断しているようです。地域の分断や放置される内戦は、テロリストの台頭、軍事拠点を狙う大国の思惑を刺激し、偶発的な大規模衝突に広がる可能性があります。今年もトランプ大統領という外交ビジネスマンによって、世界情勢が混乱の渦に巻き込まれていきそうです。

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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