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コラム 人権・福祉

2010年08月05日

介護に不安を抱く前に

全国各地の現場を取材して

 人と話をしていて、お相手の出身地や縁のある地方について話題が及ぶと、その地方の観光名所や名物を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

 全国の医療や介護の現場を練り歩いている私の場合、思い浮かぶのは、その地方で取材した個性的な取り組みをしている介護施設や、在宅医療に熱心なドクターの顔であったりします。

  私が編集長をしている医療・介護・福祉の情報サイト「介護てくてくマップ」では、実際に訪れた各地の取り組みを紹介しています。

 全国各地で行う講演でも、お招き頂いた主催者の拠点において過去に取材した事例を紹介しています。

  例えば、今週訪れる宮城県での講演では、昨年取材した事例をお話しすることを考えています。この地で、私は難病で自力では身動きできず、呼吸器を使って生活している女性のお宅に伺いました。

 彼女は「娘に介護の負担はかけたくない」と、ヘルパー、ボランティア、訪問看護師などの援助により、24時間家族以外の介護によって生活していました。

 彼女の生活を支える医師やヘルパーも意欲的でした。

 彼女は機器を使って誰かがたんを吸引する必要がありますが、現在、我が国ではヘルパーが吸引を行うことは「当面のやむを得ない措置」として許容されていますが、万が一事故などが生じた場合などの所在が明確でないため、吸引は行わないとする訪問介護事業所(ヘルパーを派遣する事業所)が多いのです(参考:http://www.teku-teku.org/report_1.html)。

 しかし、彼女が利用する訪問介護事業所では、何らかの事故が発生した場合の責任は事業所が追う旨の指示書を用意したり、吸引の技術を学ぶ講習会を継続的に実施したりと、事業所をあげてヘルパーが安心・安全に吸引ができるサポート体制をつくっていました。

  さらに、彼女の往診を行う医師は、在宅医療を専門に診察をする診療所の院長をしていますが、この診療所では「患者を診療する」という枠にとどまらず、在宅医療の研究・教育の場として機能しており、学生や医師への研修も積極的に行っていました。「研修室がある診療所」を訪れたのは、私にとって初めての体験でした。

  マスコミでは介護現場の「影」の部分をクローズアップして流しています。ですが、上記のような熱心で向上心のある介護の事業所や施設、診療所などが、私たちの国の各地にあるということをお伝えしたいのです。


まずは実際に見てみよう

 一方、介護が必要な人向けのサービスというと、介護保険によるサービスに目が向けられがちですが、お住まいの自治体が独自に行っているサービスがありますので、お住まいの地域の自治体の窓口や地域包括支援センターに出向いてどんなサービスがあるか情報を集めたり、お近くの介護施設などを見学するのもよいでしょう。

  以前、小学校のPTAで講演を行った際、「親戚がデイサービス(通所介護事業所)に通っていますが、どんなことをする場所ですか?」という質問を受けました。
そのとき私は、ぜひ一度足を運んで、ご自分の目で確かめてみてください」と言いました。

「近い将来、家族に介護が必要になったら……」と不安がっていても、時が過ぎるだけです。明日に備えて、まず実際に介護の現場を見る機会をつくる。
そのことが「介護を知る」一歩になるのです。

小山朝子

小山朝子

小山朝子こやまあさこ

介護ジャーナリスト/介護福祉士

9年8カ月にわたり洋画家の祖母を介護。その経験から全国各地で講演し、執筆活動や各メディアにコメントする。介護のノウハウや介護現場の「今」をわかりやすく伝えており、「当事者と専門家、ふたつの立場からの説…

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