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2025年06月05日

「伝わる」言葉選びの習慣

言葉選びの重要性

前回は、「伝える」と「伝わる」は違うということ、そして「伝わる」伝え方を実現させていくためには、まず自分の姿勢をまっすぐに整えることが大事、ということをお伝えしました。今回は、その上でどのような言葉を使うとより「伝わる」のかということについて考えていきます。

同じ物事でも、どの言葉を使うかで、伝わり方は大きく変わります。そして、その言葉選び、つまり「どんな言い方をしたのか」が、その内容以上に相手の心に影響を与えていくものです。

あなたにもこんなことを思った経験はないですか?

「言いたいことは分かるけど、あの言い方はないよね」

“言いたいこと”つまり“内容”に大きな不満や異論があるわけではない、けれども“言い方”つまり“言葉”が不快だから受け取りたくない、ということですよね。

ということはつまり、“言葉”を変えれば、その“内容”ももっと受け入れてもらいやすくなるということです。

ところが、服装や声には気を遣っているのに、言葉に対してはあまり意識を持たず、ただ頭に浮かんだものをそのまま口にしているケースが少なくありません。それが、相手に上記のような印象を生ませてしまい、言いたいことが届いていかないということにもつながっています。

とはいえ、「言葉を選ぶ」といっても、具体的にどのように選んだらいいのかというのは案外悩みますし分かりにくいですよね。そこを考えるにあたって、まず日本語の特徴というのを改めて押さえておきましょう。

日本語の特徴

日本は、世界一“ハイコンテクスト”な文化を持っていると言われています。“コンテクスト”とは“文脈”という意味であり、“ハイコンテクスト”というのは言葉よりも文脈で伝える傾向が高いということを表しています。

「空気を読む」という言葉がこれを最もよく表していると言えます。“言葉”そのものではなく“空気”を大事にする、つまり、言葉にされていない部分も大事にしているということですね。

これが、“気遣い”や“配慮”を生み出すといったポジティブな側面もあるのは確かですが、はっきり言葉にしていない分だけ“誤解”を生み出す可能性が高くなっているのも事実です。

つまり世界一「ハイコンテクスト」な文化を背景とする日本語は、世界一「誤解を生みやすい言語」だと言うこともできます。ただ何気なく使っていると、「なんでそうなるの」いう結果を生みやすいということです。だからこそ、「伝わる伝え方」をしたいなら、より“言葉選び”に慎重になる必要があるのです。

「ニュアンス」と「自己効力感」

誤解を減らす言葉選びのヒントとして、ここでは2つのポイントをご紹介します。
「ニュアンス」と「自己効力感」です。

「ニュアンス」とは、言葉に含まれる空気感のことを表しています。基本的にどんな物事でも2つのニュアンスの側面を持っています。私はこれを“陽の当たる言い方”と“影になる言い方”と表現しています。

この2つの違いはとても微々たるものです。例えば、喫茶店に行ってコーヒーを注文するというシーンをイメージしてみてください。ここで「コーヒーでいいです」と言うのか、「コーヒーがいいです」と言うのかは、たった一文字の違いですよね。

けれども、受け取る方にしてみれば、この小さな違いが大きな印象の違いとなっていることが多いのです。「で」には“諦め”のニュアンスが含まれますから、受け取る方はそれも一緒に受け取ります。「コーヒーでいい」という言葉の中に、“しぶしぶ”のニュアンスを読み取るということです。

人に物を頼む時に「あなたでいい」と言うのか、「あなたがいい」と言うのか、というのが分かりやすいかもしれません。「あなたでいい」には“誰でもいい”というニュアンスが入りますから、言われた方も良い気はしないですよね。「誰でもいいなら他の人にしてください」と言い返したくもなるかもしれません。

言っている方はその人に頼んでいるつもりであって、誰でもいいという気持ちは全くないことが多いですから、そんな風に言い返されたら驚きますし、場合によっては「何その言い方」と言い返すかもしれないですね。そうなると、ギスギスした空気が漂ってくるのは想像に難くありません。

受け取り手は、言葉だけでなく、そこに含まれる空気感も一緒に受け取っているのです。どの空気感、つまり「ニュアンス」を持つ言葉を選ぶかということは、思っている以上に大事なことなのです。

同時に押さえておきたいのが「自己効力感」です。
「自己効力感」とは、心理学の言葉で“自分にはできると信じている力”つまり、“自分で決めて自分でやりたい”という根本願望のことを表しています。

人は誰しも、命令されたり否定されたりすることを好ましくは思わないものです。“他人に動かされる”より“自分で動きたい”のです。

ところが私たちは、気軽に否定・命令の言葉を使いやすい傾向があります。なぜなら、言葉が見つかりやすいからです。

例えば、廊下に「走るな!」「走らないで」と貼り出したりするようなことが起こりがちです。これは、思っている以上に反発が生まれる可能性を高めてしまいます。先に述べた通り、人には「自己効力感」があるので、否定・命令には反発したくなるという心理が働くからです。

“否定・命令”は、“肯定”の言葉に変えることができます。“しないでほしいこと”より“してほしいこと”を言葉にするのです。先ほどの例なら、「走るな!」ではなく「歩いてください」の方を選ぶということですね。

実際に公共の場などでは特に、こういう言葉選びが意識的にされています。「割り込まないで」→「最後尾にお並びください」「押さないで」→「前の方に続いてお進みください」などです。気持ちの良い言われ方の方が、素直に聞こうという気持ちになりやすいですよね。

言葉を選べば、相手の反応は変わります。気持ちの良い反応を求めるならなおさら、言葉をもうちょっとだけ意識して選ぶようにしてみませんか。

山本衣奈子

山本衣奈子

山本衣奈子やまもとえなこ

プレゼンテーション・プランナー

<ご本人からのメッセージ> 私は大学時代は演劇を専攻、在学中にイギリス・ロンドン大学のドラマ科に留学しました。演劇というと、ストイックな役作りや身体表現をイメージされることが多いのですが、演劇は総合…

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