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2017年08月10日

「テレワーク」を運用始めると業務の棚卸と見直しにもなる

少子高齢化を見据えて国が「テレワーク」を積極的に推進するようになりました。とてもいいことです。ただ気を付けなければならないことは、表面上の「テレワーク」と実際的な「テレワーク」の間に乖離が生まれかねないことです。定義上は、週に8時間以上外出先で仕事をしていれば「テレワーク」と認めるようです。しかし今どきの時代、多くのサラリーマンは普通に週に8時間以上外出しているものです。多くの企業が何も変革しなくても「うちはテレワークを導入している会社」と言えてしまう危惧があります。

テレワークを実際に導入することで、社内で不満が持ち上がることもよくあります。
「アイツはいいよな。家で仕事出来て。俺なんかオフィスで上司と目が合って、余計な仕事まで頼まれているのに。」個々人のレベルまで作業を分業化出来ている場合は問題にならないのですが、実務ではそうではないことも多いわけです。特に日本では曖昧な境目の業務も多く、拾い合う文化があります。そんな隙間の仕事には、楽しい仕事もありますが、多くは面倒くさい仕事があって、オフィスでは避けて通れるものなら避けたい雑務は転がっているわけです。
それが押し付けられやすい環境にいては不公平感も生まれます。
「公平な評価」の名の下に意外と「不公平な評価」に繋がっている可能性も無きにしも非ずです。

一方、「テレワーク」を導入して生産性が上がっている企業も多く出て来ています。
テレワーク導入によって、業務の見直しが行われ、見える化が進み、無駄な業務が見つかります。
実は「なあなあ」だったオフィスでの仕事の生産性に喝が入ることが多いのです。

「テレワーク」を活用している社員は、直接見られていないので逆に自分の成果を「見える化」しようと必死になります。報告も小まめにするのでPDCAが回りやすくなります。
オフィスで仕事をしている時は、デスクに座ってパソコンを開いて何か手を動かしていれば仕事している風に見えていました。(笑)残業代が欲しくて忙しいフリをする社員もいるかも知れません。
実はテレワークを導入して意外な効果というのは、テレワーカーはもちろんのこと、オフィスワーカーの生産性も劇的に上がる副次効果があるということです。

前号でチャットツールの進化についてお話しました。
他にもファイルの共有ソフトや、その他外でも仕事を出来るようにする便利なツールはいろいろ出揃って来ています。成果主義の会社であれば、実はもう十分にテレワーク導入の素地は出来ているのです。問題は特に日本の場合、時間管理型の従業員が多いところです。テレワークをしていると、どこからどこまでが仕事中で、どこからがパーソナルな活動なのかの判別が難しくなるからです。見えないからこその不安感、不公平感が生まれるのです。

実際は前述しましたように、オフィスにいても公私の切り分けや監視は難しくなって来ています。
パソコンが普及したために、仕事しているフリしながら違うことを平然と出来てしまう環境が整っています。

IT技術を使ってテレワークを支援出来ることのもう1つに、時間管理があります。
ツールで「着席」ボタンと「離席」ボタンを用意することで、着席している時だけ勤務時間のタイマーを回すことが出来るようになります。

01

 

そして「着席」ボタンを押している間はカメラをオンにしたり、パソコンの画面キャプチャをランダムに撮ることで、上司は監視・管理をすることが出来るようになるのです。
赤ちゃんが泣いたのでちょっと仕事を離れる時は「離席」ボタンを押します。
離席中はプライベートなのでカメラもキャプチャも作動しないようにします。
こうすることで、テレワーカーの事情に合わせて柔軟な働き方に対応することが出来るようになります。
前号でご紹介したプレゼンス機能のあるチャットツールと並んで、離れた場所にいても一緒にいる感覚を醸成するツールになります。

このテレワーク用の時間管理ツールをオフィス内でも導入することによって、「仕事しているフリ」社員の抑制にも大きな効果があります。(笑)
何よりもテレワークを導入すると、テレワーカー達が自己PRの意識が働き必死に働き、その成果が出始めるとオフィスワーカー達もうかうかしていられないと、いい意味での刺激を受けて社内全体の生産性が上がるようです。

ITツールだけでテレワークの課題が解決するわけではありません。
人間の運用側の配慮も大切になります。
社内規定を見直すこともテレワークには重要なことの1つです。

何よりもテレワークの失敗になる大きな要因は不公平感です。
テレワークを導入している企業を観ていて感じる社員の大きな誤解は、オフィスで働く人種と、テレワークで働かざるを得ない人種とで完全に分離して考えていることです。
そうした区分けの発想で公平感を探そうとするので、なかなか上手くいかないのです。

しかし実態は少し違います。
ある有能なオフィスワーカーが突然親が倒れて介護をしなければならなくなりテレワーカーにならざるを得ないことが起きます。逆にテレワーカーだった主婦が子育てが終わり、オフィスワーカーとして大いなる戦力として復帰するケースも増えて来ています。要するに、少子高齢化を迎えている日本では特に、個人が動的にどちらの立場にもなりうることを忘れてしまっている傾向が伺えます。どちらの側にも動的になれる社内規定の見直しが大事です。

図2は、それを解決するためのサンプルです。

 

02

どちらの立場になっても給与体系が変わらず公平であることを前提にしております。
働き方の環境や制約によって手当を付けたり外したりすることで、基本的な評価や、基本給を変えない発想です。
「出社手当」「時間的拘束手当」「フルウィーク手当」「フルタイム手当」は、今までのオフィスワーカー達には当たり前に感じて基本給の中に入れていたものですが、テレワーカーになるとこれが当たり前ではなくなります。
オフィスワーカー達の公平感を維持するために、これらを「手当」として別立てにする考え方です。
こうすることで、環境や自分の都合の変化で不公平感なく働き方を変えられるようになります。

前号、本号でテレワークについて語ってみました。
人が輝くために、ITがお手伝いできるところは、まだまだ沢山あります。

次号はいよいよその本星である「タレントマネジメント」にメスを入れてみたいと思います。

井下田久幸

井下田久幸

井下田久幸いげたひさゆき

ドルフィア株式会社代表取締役

IT業界一筋で34年。SEからマーケティング、営業と幅広く経験。難しいITを分かりやすく、役に立つ情報として伝えることで、セミナー講演はいつも好評。デモを披露したり、世の中の動向とITの動向を絡めて話…

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