2007年12月01日

「断る」ビジネス、「頼む」ビジネス

「断りなさい」ということを書いたビジネス書がたくさんある。わたしたちも、プライドを持って仕事をしている以上、「断る」ということをしている。たとえば、「何か、おもしろい話をしてください」と頼まれても、わたしの仕事は、研修である。お笑い芸人じゃない。お断りする。

でも、結構、断るのが苦手なわたし。自慢じゃないけれど、断ることができなくて失敗したことって山ほどある。できもしない仕事を引き受けて、ちゃんと納品できなかった。これは、社会人として最悪。それどころか、断りきれずに、二人の男性と同時に付き合ってしまったこともあれば、飲み会のダブルブッキングしてドタキャンしたこともある。ホント、今から思うと、最低。

でも、わたしの知っている社長で、「何でも、来るものは拒まずや。頼まれごとは試されごとや」と、豪語している人もいる。実際、彼は、どんな状況でも、どんな仕事でも引き受けている。そして、その社長の口癖。「何とかなるさ」。実際、何とかなっているから不思議。人のダブルブッキングしても、「ちょうど良かった。君たち二人が会う運命やったんや」で片付けてしまう。わたしの尊敬するかつて吉本興業の社長だった中邨秀雄氏。

彼は、若い頃、エンタツ・アチャコさんのマネージャーだった。そして、当時超売れっ子だったアチャコさんにこう言われたらしい。「わしは、今、超売れっ子や。だから、お前の仕事は、仕事を断ることや。でも、いつか、わしも仕事がなくなる日がある。でも、その時には、お前が人に好かれていて、わしの仕事が入るような断り方をしろ。そして、売れなくなった時に頼める人脈を持て」

中邨氏は、この言葉を噛み締めたらしい。そして、タレントの人脈じゃなくタレントを通して、自分の人脈を広げられた。それだけでなく、タレントを売るだけじゃない、会社と会社が繋がるような仕組みを考えた。それが、単にテレビ局にタレントを売るだけじゃなく、自社でプロデューサーを育てて、番組を作ってテレビ局に納品するという仕組みだった。わたしは中邨氏に、よく、「相手を気持ちいい気分にさせて断ることができたら、一流だ」と、言われた。

吉本興業で売れているタレントは、大抵断る天才だった。「いゃあ、僕は、この仕事やりたいのですが、会社がやらせてくれないんですよ。うちは、会社のほうが強いんで...」と、会社やマネージャーのせいにして、自分が嫌われないように断る。しかも、「こんな、僕、売れなくなっても、また声かけてくださいね」と、万が一のお願いまでしていた。だいたい、そんな人に限って、売れ続けている。

人生って、「ここだ」というチャンスの時、絶対に損しても頼まなきゃいけないことってある。これは、勘が大切。損得を考えていてチャンスを逃した人を、たくさん知っている。吉本興業では、どうしても売りたいタレントを売る時、タダでも交通費を負担してでもプロデューサーに頭を下げてでも、テレビに出してもらった。売れてるタレントの仕事を断っておいて、売れないタレントは、頭下げてでも頼む。

考えれば、いい加減かもしれないけれど、わたしは、ここで、たくさんのビジネスのヒントを学んだ。「断る」ビジネス、「頼む」ビジネス。どちらも、タイミングが、とっても大切。そして、それは、常に勘を働かせるということがとても大切。やっぱり、錆びちゃダメ!