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2013年02月08日

人間は一体何のために生きるのか…ラ・トゥールの≪大工ヨセフ≫を手掛かりに

私のライフ・スタイルには、大切な人に対して「古典」をプレゼントする習慣があります。この習慣は、仕事でもプライベートでも、その都度、同じように実践しています。

先日は、ある人に一冊の古典をプレゼントしました。その古典は、時代を超えて、世界中で読まれ続けている古典です。良い古典は、時代はもとより、文明・文化を超越して多くの人々によって読まれ続けます。私は、良い古典が、時代や場所に関係なく多くの人々に愛され続ける理由は以下のような理由であると捉えています。

その理由とは、良い古典とは、我々人間に「光」や「道」を与えてくれる良書であり、それと同時に、そのような良書は、我々人間に対して、「人生、いかに生きるべきか」という人間としての根本問題について思索させる役割を担っているからです。時代や場所に関係なく愛され続ける古典は何らかの「本質」を述べている良書であり、「本質に触れたい」という願望を持つ人間は、まさに、時代や場所に関係なく、いつの世でも世界中の至る所に存在しているのです。

西洋・東洋に限らず、世界中の作家、哲学者、芸術家等にとって最も関心のある問題の一つは、「人生、いかに生きるべきか」という問題です。私自身、幼少の頃から、「人間の生き方」について様々な疑問を抱きながら毎日を過ごしてきました。私は、子供ながらに、この問題、即ち「人生、いかに生きるべきか」という人間存在としての根本問題について深い思索を試みる毎日を送り、日々、「より良い生き方」を模索してきました。

「人生、いかに生きるべきか」という問題は、言うなれば、「我々人間は、『一個の個』としてどのように『自己の生』を全うしていくべきか」という極めて根本的な問題です。後に、私は思春期に入り、この問題について思索を重ねる日々を送る中、ある日、<思索における大きな変化>が生まれました。それは、私の問題関心が、(1)「人生、いかに生きるべきか」という問題から(2)「人間は一体何のために生きるのか」という問題に変わっていったという劇的な変化でした。

去る2009年、東京・上野の国立西洋美術館において「ルーブル美術館展・・・17世紀ヨーロッパ絵画」が開催されました。この時、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(Georges de La Tour, 1593-1653)が描いた絵画、≪大工ヨセフ≫も同美術館で展示され、私自身も、この絵画をたっぷりと鑑賞してきました。

絵画、≪大工ヨセフ≫は、洗練された明暗法を駆使し、清らかな静寂の雰囲気の中でヨセフが大工仕事をしている姿が描かれています。ヨセフの面前では、幼少のキリストが蝋燭を持ってヨセフを見守っています。

この絵画の大きな特徴の一つは、ヨセフの目線から清らかに表現されている「聖なるミッション」(holy mission)の描写です。言うまでもないことですが、人間は、単に、パンのみのために生きているわけではありません。人間は皆、何らかの「ミッション」(使命)を持ち、「自分自身のミッションを遂行する」という目的を果たすべく、(生き続けるために)パンを食べるわけです。我々人間は、そうした生き方においてある種の「尊厳」(dignity)を見い出し、それに伴って「ミッション遂行者としての『生きる喜び・価値』」を感じるのです。

読者の皆さん、毎日のビジネス・シーンにおいて「自分なりのミッション」を持って仕事をしてみませんか。世俗的な”損得勘定”や”計算”で仕事をするのではなく、「この仕事を通して一体どのように社会の幸福・利益を齎すことができるだろうか」という捉え方・見識で仕事に取り組むと、少しずつ何かが変化していくに違いありません。

(1)「人生、いかに生きるべきか」、そして、(2)「人間は一体何のために生きるのか」、これら二つの問題は、「生きる」を全うする上で最も根本的な問題です。これら二つの問題について思索すると、プライベート・ライフのみならず、ビジネス・ライフにおいても良い方向に向かって進んでいきます。

人生も仕事も、「毎日の一秒一秒」をどのように刻んでいくかが肝要です。皆さんにおける毎日の一秒一秒の中に「意気揚々とした新鮮なエネルギー」を注入するためにも、是非、これら二つの問題について深い思索を続けてみてください。

生井利幸

生井利幸

生井利幸なまいとしゆき

生井利幸事務所代表

「ビジネス力」は、決して仕事における業務処理能力のみを指すわけではありません。ビジネス力は、”自己表現力”であり、”人間関係力”そのものです。いい結果を出すビジネスパーソンになるためには、「自分自身を…

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