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2011年04月25日

「研修」を健康管理に例えてみる

思いがけず病気や体調不良になってしまったから、病院に行って治してもらおう。そんな感覚で、研修を実施しようとする経営者は少なくありません。この階層が機能していないから、この分野のスキルが弱点だから、士気が上がらない、雰囲気が緩んでいる、といった組織のうまくいっていない部分をすぐに直してほしい。注射を打ったり、薬を飲んだりすればすぐに体調不良が解消するように、駄目なところをすぐに直してほしいと考えて研修を実施します。

もちろん研修に、注射や薬のような治癒を期待するのは間違ってはいませんが、同じ注射や薬を使っても効く人と効かない人がいるのと同様、同じ研修を実施しても、効果のある会社とそうでもない会社があることは理解しておかねばなりません。お金を使って研修を行うのだから、それなりの効果を求めるのは当然だという論理も分らぬではありませんが、注射や薬を使っても、相当に病状が悪化している人やそもそも健康状態が悪い人には効きにくいように、研修も、その組織や人材がどのような状態かによって効果のほどが異なってきます。

体調が悪くなったり、予期せぬ病気になったりしないためには、もしくは二度とそうならないためには、自分の体の状態を定期的にかつ客観的に知るために健康診断を行い、良くない部分があればその改善・強化を行うために、食事を変えたり運動をしたり何か節制をしたりと、地道な取り組みを行います。そうやって作ってきた健康な体には、何か病気があったとしても注射や薬がよく効きます。が、健康状態の把握もせず不摂生を続けてきた体には、注射や薬がよく効かない、あるいはそれだけの治療では済まないということになります。

研修も同じ。組織の機能不全や社会・顧客との不適合、その他の不都合が起こらないように(繰り返さないように)、まずは、組織や人材の状況をしっかりと(何となくではなく、思い込みでもなく)把握しなければなりません。そして改善点を見出し、組織や人を鍛え、改善・強化していくという地道な活動に取り組む必要があります。そうやって大切に作ってきた組織や人材に対しては、研修は効果的です。このことを分っている会社と無関心でいた会社、曲がりなりにも取り組んできた会社と放置してきた会社では、研修の効果は全く違うものになります。

健康そのものの人が大病する、不健康なのに大過なく長生きするという場合もあるだろうと言われるかも知れませんが、それは例外でありますし、だから不健康でも構わないということにはなりません。講師としてやっていると、組織や人材の改善・強化をしようとしてきた会社と、それらには無関心で病気になったら注射を打って直せばよいという会社では、受講者の研修への取り組み姿勢、内容の受け止め方、現場で使えるように自分の問題として捉える思考などにおいて、違いは歴然としているのです。

ちょっとずつでも地道に健康管理や体質改善を継続してきて、振り返ってみれば「元気でいることができた」「無事でなりよりだ」と感じる。研修とは、そのような状態を実現するための手段の一つです。組織や人材について、そのうまくいっていない部分を直すのには、人事異動や組織の改編、人事制度や評価の改定、知識の伝授や技術伝承の仕組みづくり、職場環境やコミュニケーション、ワークスタイルの見直しといった多様な手法が考えられます。これらを組み合わせて実行し、時間をかけて効果を出していく。そういう会社に研修は効果的なのです。

研修は、組織が将来もずっと健康でいるために継続して行う活動の一つであって、病気になった時にその回復を図る企画モノではありません。困ってから思いつきで研修をやってみたり、流行のテーマや他社がやっているものを安易に取り入れてみたりして、その効果を云々するのは、まるで、三日坊主のランニングやテレビで紹介された健康法にすぐに飛びついて「効果がなかった」と言うのと同じです。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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