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2011年01月25日

学び合う組織を作ろう

「この人はプロであり育てる側の人」、「この人は素人であり育てられる側の人」という色分けが(無意識でも)なされている会社や組織は、非常に多くあります。まるで、学校における先生と生徒のように”教える人”と”学ぶ人”という役割を固定してしまう、例えば、課長以上の管理職は”教える(育てる)側”で、それより下の人間は”教えられる(育てられる)側”、と位置づけているような組織です。マネジメントの目的の一つは人材育成でありますので、教えよう、育てようという意識や行動は良いのですが、かと言ってこのように役割を固定してしまうと、育成の効果が限定的になってしまうというのが難しいところです。

当然のことですが、課長が全ての分野で知識も技術もメンバーより優れている、ということは有り得ませんし、課長より次長が、次長より部長が全ての分野でレベルが高い、などということもありません。人事制度において能力等級が設定され、例えば1級、2級、3級…と上がっていくような仕組みがあったとして、等級が上である人が下の人が持っている知識を全ての分野で上回っているわけはなく、下の人が出来るようなことは上の人も全て出来るということもありません。

現実には、強みや得意分野はそれぞれがバラバラに持っていて、能力は組織内部で常に多様な状態です。なのに、教える側と学ぶ側という役割を固定してしまうと、”学ぶ側”とされた人達は学ぶだけになるので、せっかく持っている強みや得意が披露されることなく、それらが埋もれてしまいます。また、”教える側”とされた人達は、教えることを探そうとするために、”学ぶ側”の人達の弱みや不得意ばかりに視点が集中してしまいますし、自分の弱みや不得意を見ようとしなくなります。これは、実にもったいないことです。

「強みや得意分野はそれぞれがバラバラに持っていて、能力は組織内部で常に多様な状態だ。」という前提に立つと、全ての人が、ある時は教える側になり、ある時は学ぶ側に回るようにすべきでしょう。組織全体の能力を高めるためには、分野によって、状況に応じて適切な人が階層などには関係なく講師になり、コンサルタントになる状態こそ理想的な姿であると言えます。互いの強みや得意を認め合い、それを階層や部署を越えて教え合えるような組織を作ること。人材育成を考えるなら、自分が直接教えるだけでなく、教え合う仕組みや風土をつくることも非常に重要であるということです。

「皆が教える立場になる」と、各々の強みや得意分野がさらに強化されるという大きなメリットもあります。教えるのが、一番自分の身につくという感覚は経験のある方も多いでしょう。ちなみに、心理学者のエビングハウスによれば、人間の行動による記憶残存率は、次のようになるそうです。
読む…10%
聞く…20%
見る…30%
話す…70%
行う…80%

読む、聞く、見るといったことでは、10~30%ほどしか記憶に残りません。が、教える、つまり話したり、実際に学んだことを人に対して行ったりすると、70~80%と飛躍的に記憶に残すことができるということです。

「皆が教える立場になる」と、それまで学んでは消えていた記憶が、自分のものになって蓄積される(残存率が上がる)ようになります。断片的に記憶されていたものが、人に教える機会を通して体系的に理解できるようになることもあるでしょう。「教えてほしい」と言われる、教えて「なるほど」と感心されるといったことは、自分の強みを再認識することになり、人の役に立ったと思えるわけで、そんな気持ちが生まれる効果も無視できません。自分が教えなければ…と考え、とはいえ時間もないしどうすればいいのか、とお悩みの管理職の皆さんも多いことと思いますが、教え合う仕組みづくり、組織作りによる人材育成という手法も是非取り入れていただきたいと思います。

川口雅裕

川口雅裕

川口雅裕かわぐちまさひろ

NPO法人「老いの工学研究所」理事長(高齢期の暮らしの研究者)

皆様が貴重な時間を使って来られたことに感謝し、関西人らしい“芸人魂”を持ってお話しをしています。その結果、少しでも「楽しさ」や「気づき」をお持ち帰りいただけていることは、講師冥利につきると思います。ま…

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