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2021年12月23日

計画された偶然によるキャリア形成

プランドハップンスタンス理論とは

「プランドハップンスタンス理論」をご存知でしょうか。人事など、管理部門の方はよく知っている言葉かと思いますが、意外と社員の方には浸透していないように思えます。
専門性や一貫性があることが大事、と思われがちですが、時に、一貫性がなく、専門性よりも広く浅い経験や知識が役立つこともあります。そして、そのようなキャリアの積み方もあります。

プランドハップンスタンス理論は、1999年にスタンフォード大学教育学・心理学教授のクルンボルツ博士が提唱した、キャリア形成に関する理論です。偶発性キャリア、計画された偶然、なんて日本では一般的に言われています。

この理論の背景ですが、成功を収めたビジネスパーソンを対象にキャリア分析を行ったところ、「現在の自分のキャリアは予期しない偶然の出来事によるところが大きい」と回答した人が8割だったことから、その研究データに基づいて、以下の点を博士はまとめています。

キャリアの80%程度が予期しない偶然の出来事によって形成されている。

  • その偶然は、本人の主体性や努力によって最大限に活用することで、キャリアを発展させることができる。
  • 偶然は、ただ待つのではなく、意図的に生み出すことができる。そのために積極的に行動したり、自身の周りに起きていることをよく観察することで、自らのキャリア創造の機会を増やすことができる。

過去のキャリアはすべて今のキャリアに繋がっている

キャリアカウンセリングでは、「私の経験は一貫性がなくて」と悩んでいる方と多くお会いします。その理由としてよくあげられるのが、

大手企業の総合職だったため、会社の事情で異動や転勤が多く、気が付いたらひとつのことを極めることができていない。他で通用するような専門性が身についていない。

その時その時でおもしろそう、と思う仕事や、人から紹介された仕事で点々と転職を繰り返してしまった。転職時の面接の際、自分の過去の一貫性がないことで、これができます、と強みをアピールすることができない。

そんな方たちの過去のお話を深く聞いていくと、その人ならでは、の様々な経験を持っていらっしゃるのですが、本人は今まで丁寧に棚卸しし、整理したことがなかったので、おもちゃ箱の中にごちゃごちゃにいろんなものが入っているようなイメージに。
そこで、ひとつひとつ話をお聞きしていくと、過去と関連しない仕事はほとんどなく、今やっている、または直近の仕事は、すべて過去から繋がっているし、これからも組み合わせ次第で活かせるスキルとなっているのがわかります。

私自身も正直、今は専門性を極めていますが、過去を振り返ると、スタートはカメラメーカーの一般事務職、その後、派遣やアルバイトで点々とし、2社目の正社員はベンチャー企業のスタートアップに派遣社員から正社員化してもらい、人材ビジネスに出会いました。結果、今のビジネスに繋がっています。また、独立する前の経験がすべて今生きていて、

  • ベンチャー企業のスタートアップ時にいたことで、自分で会社を立ち上げるイメージがついた
  • 人材ビジネ業界に出会って、興味が出て、今のビジネスに繋がっている
  • 1社目は事務職だったが、2社目で営業をはじめてやってみて、新しくできることを手に入れた。営業を経験したことで、視野が広がった

このような感じです。

また、独立後は専門家として仕事をしていますが、自分では思ってもいなかったような仕事の依頼が入ってきます。専門分野の中でもやったことのない領域を広げていくことは必要です。そのためにも、こういった、未経験分野の依頼は本当にありがたいものです。

いかがでしょうか。きっと多くの方が、このような「あの時のあの経験が今に繋がる」といったものをお持ちだと思います。

あれこれできる、という経験の価値

さて、話は戻りますが、これからの世の中、あれこれできる、という人材も重宝されていきます。変化が激しく、予測不能だからこそ、未来の計画が立てづらくなっています。だからこそ、未来に備えて、今できること、経験値を増やしておくことで、後から使える手数が多くなります。その時々の状況に合わせて、過去の経験を引き出しから出して、少し状況に合わせたカスタマイズをして使うのです。

また、今、何をしたらいいのかわからない人こそ、こだわりがないことも強みだと思って、周囲から期待されたことはどんどんチャレンジしてみることをお勧めします。

そんなお話を講演でさせていただいたら、受講者から以下のような質問がありました。「なんでも引き受けるって損しませんか?お給料は一緒なのに」
おっしゃる意味、お気持ちわかりますが、長い目で見ると、目先の損得だけでない判断をしていただくことも大事だと思っています。その時に引き受けた仕事をやり遂げた経験が、案外転職先など、将来で使えるのです。ただ、断ってよいケースもあります。それは、自分のビジョンとだいぶ掛け離れている、誰が見てもマイナスの仕事、成果がわからない仕事など。それ以外はできるかどうかわからないけれど、やってみよう、とチャレンジしてみることをお勧めします。

プランドハップンスタンス理論によると、偶然をチャンスとして活かす人の特徴は5つだそうです。

  1. 好奇心:新しい学びの機会を模索する(Curiosity)
  2. 持続性:たとえ失敗しても努力し続ける(Persistence)
  3. 柔軟性:姿勢や状況を変えることを進んで取り入れる(Flexibility)
  4. 楽観性:新しい機会は実行でき達成できるものと考える(Optimism)
  5. 冒険心:結果がどうなる分からない場合でも行動することを恐れない(Risk-taking)

正解がわからない世の中だからこそ、経験を増やしておくことが大切です。では、どの程度の経験が必要なのかというと、ある程度「できた」と言える形にしなくてはなりません。つまり、特徴の2番目の「持続性」も大事です。

色々経験したけれど、どれもモノにならなかった、途中で投げ出した、という「経験」とできるようになるまで追いかけた「経験」はちょっと違います。実績と言えるまで、やり遂げることです。

そんな意味を改めて考え、今の仕事に改めて向き合い直してみたり、やったことのない仕事の打診に悩んでいたら、引き受けてみてはいかがでしょうか。

藤井佐和子

藤井佐和子

藤井佐和子ふじいさわこ

キャリアアドバイザー

個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…

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