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2012年03月19日

女性活躍推進先進国・シンガポール 取材レポート2~育児事情における日本との違い~

前回に続き、シンガポール取材のお話です。今回は「育児事情における日本との違い」です。

ご存知の方も多いと思いますが、シンガポールでは、女性が働くことが当たり前。「それはなぜ?」と、現地でシンガポール人の女性にお聞きしたら、なんと「女性が専業主婦になると、家庭がうまくいかなくなるからよ」という、驚きの答えが返ってきました。(笑)

お話をきくと、シンガポールではよほど(※政府機関にお勤めなど、本当に”よほど”)の旦那さんと結婚し、「その人を支えることが仕事」という状態でない限り、女性たちは外で仕事をするとのこと。

私たちと同じ女性なのに、なぜ、シンガポールの女性は出産・育児しながら働き続ける、働き続けられるのでしょうか。現地でたくさんの方に取材したところ、日本との大きな違いが二つ見えてきました。それは、

1)   政府の支援や国土の事情<外的要因>
2)   日本人の価値観と異なる、子育てに対する感覚、
   女性のキャリアの考え方<内的要因>

のふたつです。

まず、外的要因となる国土の事情ですが、シンガポールはどこに行くにも30分程度で移動できる広さです。そのため、両親が近くに住んでいる人も多く、女性が外に働きに出ていても、両親が仕事を引退している場合は子育てを担ってくれます。また、親の支援が難しい場合でも、ベビーシッターやメイドさんをインドネシア人など、近隣のアジア国の女性を雇える環境があります。どの国営団地にも、ベビーシッターのための部屋が最初から作られているんです。また、シンガポールでは家庭で料理する習慣がないため、食事は外で済ませます。ホーカーと呼ばれる屋台や、デパートの上や地下にフードコートがあり、一人で食事している人がたくさんいます。また、金曜の夜や土日は、家族で食事する人も多いのですが、やはりこれは外食が中心のようで、どこもお店はいっぱいです。

そして、前回のコラムでも触れたとおり、政府のサポートがしっかりしています。サポートの前提には、「国民が自立するために、支援するところはするが、それ以上は自分たちの責任で生活してほしい」、という考え方があります。自立支援でも特に大事とされているのは、国民が労働しつづけられる環境と、その支援体制づくりです。その一つとして、女性が子育てしながら働き続けるための育児支援制度があります。具体的には、一年に3日間、子供のために取得できる休暇制度があるのですが、そういった休暇や、産休・育休期間中の給与3か月分は会社ではなく、政府が給付しています。

次に、日本人の価値観と異なる、子育てに対する感覚、女性のキャリアの考え方など、内的要因について触れてみます。

まず、産休期間で考えてみます。シンガポールの産休期間は、国の支援がある3ヶ月程度です。日本のように1年も休んでいられない、そんなことではキャリアが遅れてしまう!」というのがシンガポール人女性の感覚です。ある女性は、「残業も多く、20時退社になることもよくある。そんな時は自分の親が子どもの面倒を見たり、ベビーシッターがサポートしてくれている。そんな環境が当たり前だし、それが無ければ会社から信頼されない、昇進も遅れてしまう」とおっしゃっていました。

働く女性をサポートする環境がある一方で、けじめはしっかりしています。保育園は延長すると罰金が科せられることもあり、子どもを迎えに行く時間が3回遅れると、もう預けられなくなるとのこと。決して、女性の子育てを”甘やかす”環境ではないのです。

現在、シンガポールは政府・企業のトップや管理職における女性比率は3割以上、日本は1割程度です。シンガポールではますます女性の比率が上がっており、これも、女性の働きやすい環境づくりを促進し、また、女性たちの「頑張ればチャンスがあるんだ」という考え方・将来のビジョンにつながっているようです。

努力に応じた成果が見えることや正しい評価をされること、失敗したら男性と同じように厳しい処分があることも含めて、これらは女性たちのやる気向上につながります。サラリーだって男性と同じようにアップします。お金を持っていると、明確に住む場所、所有物(※例えば車は、日本のファミリーカーでも700~800万円します)が変わり、誰もが見ても”わかりやすい差”として現れます。このような環境下にいる彼女たちの心には、「仕事のチャンスは男性と平等にあるので、結婚や出産によって、自身のキャリアを断絶させたくない、遅れを取りたくない」といった気持ちが潜んでいることも、現地で感じました。

私が日本でカウンセリングや研修でお会いする女性、特に若手のみなさんは、どんどん働くことに対する意識が高まっています。シンガポールからヒントを得るとすると、「国民の自立」を前提に、政府や企業の支援意識が高まることが、私たち働く女性の自立につながるのではないか、と感じました。

次回のコラムでは、日本企業で働きたくない外国人たちと女性の共通点について、お伝えしてみようと思います。

藤井佐和子

藤井佐和子

藤井佐和子ふじいさわこ

キャリアアドバイザー

個人と企業からの依頼によるキャリアカウンセリングは、延べ17,000人以上の実績。学生からシニア層まで年齢や性別を問わず、自分らしいキャリアデザインをするための選択とアクションに向けたカウンセリングを…

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