2012年02月20日

女性活躍推進先進国・シンガポール 取材レポート

「他社さんはどうされているんですか?成功事例をお聞かせ願いたい」。

企業の女性活躍推進支援時、必ずと言っていいほど、担当者の方からこんなご質問を受けます。そう、どの企業もまだ手探り状態なのです。日本国内で他社と比較し、「大手メーカーですら試行錯誤の段階なら、うちの会社が着手できていなくて当たり前。まずは成功事例を見てから動いてもいいんじゃないか」と安堵するのは、何とも残念なことです。自社の取り組みを進めないということは、日本全体の取り組みが遅れることにもつながります。女性活躍推進だけでなく、人事に関することは大抵同じことが起こっており、採用についても「大手が今年は新卒採用を控えているんだから、うちも...」なんて言葉をよく耳にします。

私は、女性活躍推進を積極的に行うこと、しかも正しく成果の出る形で進めることの必要性を日々痛感しています。今後ますます社会のグローバル化が進む中、管理職は価値観の違う人たちを一手に引き受け、まとめていくことになります。そんな中で日本人女性の育成に手間取っていては勿体無いですし、何よりも男性たちが女性を味方につけ、ひとりで頑張らずに、パートナーとして共に助け合えたら強いのではないか、と考えているからです。

女性活躍推進が遅れをとる日本国内で、いくら他社と比較していても、日本全体の歩みは遅くなるばかり。それなら、「海外にヒントはないか」、「女性が働くことが当たり前の国は?」と考えた私は、先日、シンガポールに行って取材してきました。現地でたくさんの男女にお会いし、多くのヒントを得ることができましたので、それを数回のコラムに分けてご紹介してみたいと思います。今回は、女性活躍推進だけにとどまらず、それを取り巻く国の姿勢や状況などから、日本との違いをご紹介します。

シンガポールは親日家の方が多く、非常に友好的に迎えてくださったのですが、そんな方々から言われる言葉は、「日本は大丈夫なのか?」。世界から見ると日本はスピードが遅い、物事がなかなか決まらない、といった印象のようでした。日本人は勤勉ですが、勤勉であるが故、進めながら考える、リスクテイクしてでもチャレンジすることが苦手なのかもしれません。同じ理由で、女性活用という新しい取り組みにも、なかなか一歩踏み出せない、という企業も多いのではないでしょうか。

まず、私たち日本人が活躍する上での弊害となっている外的要因についてご紹介します。シンガポール事情と日本を比較してみると、シンガポール政府はきちんと国の方向性を打ち出していることに驚かされました。国が「国として成長すること」を目標に掲げ、国民全員がそれに共感・共有し、国家全体がそれに向かって動いているんだそうです。また、それを浸透させるために、政府は常にブレることなくイニシアチブをとっている。決定は早く、国民がお互い切磋琢磨し、成長できるように「操作」しています。「操作」と表現しましたが、国民も「操作」されていることを重々承知し、納得しています。政府のイニシアチブは、依存ではなく、国民の自立を促すものが中心です。

シンガポール政府は、国民に対し将来の保障はしていませんが、国営の施策機関が多く、子育て支援として、保育園代や出産時の支援、低所得者のサポートなどは充実しています。産休・育休も国が3か月分を負担しており、取得するタイミングは、個人にゆだねられています。たとえば、人によっては、赤ちゃんがおなかの中にいる時に1か月、出産後に2か月、というように。

この3か月という産休・育休期間を、みなさんはどう感じるでしょうか。そんなに短いの?と感じた方もいらっしゃると思いますが、シンガポールだけでなく、世界単位で産休育休制度を比較すると、日本の産休制度はダントツで充実しており、海外からすれば「そんなに長い間休めるのか」「そんなにブランクがあって、仕事は大丈夫なのか」と、シンガポール人だけでなくアメリカ人も驚いていたくらいなんです。

さて、話を戻しましょう。シンガポールでは国が支援すべきものは支援するが、後は自己責任、といった感じがしました。そのため、老若男女、「投資」に力を入れているとのこと。それも国からのアドバイスの1つだそうですが、国民は経済を一生懸命学び、投資を当たり前のものとし、お互い情報交換し合っています。

また、日本と違う経済事情は、商業都市であること。貿易の国ですので、製造や第一次産業は、近隣他国に頼っています。そして、商売のお客様は国民ではなく、世界です。日本は、国内で需給がまわっていますが、シンガポールは、貿易の中継地点、商社的役割で、世界の国や企業がお客様です。だから、物事の考え方が世界単位、他国との比較なのではないか、と現地の方からお聞きしました。その点、日本はどうしても、比較の対象が国内に留まってしまうのかもしれません。

非常に速いスピードで時代が変化する中、シンガポールの物価は上昇し、女性も働かないと、生計を立ててはいけません。そのような状況の中、次回のコラムではシンガポールの女性がどのように仕事と関わっているのかをお伝えしてみたいと思います。