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2010年08月10日

高級ではなく上質である

8月に入り、ヒグラシの輪唱があふれています。
週末には各地で花火大会が賑やかです。
「ドーーーーン」と豪快な音としだれ落ちてくる火の花が、一瞬世情の憂さを忘れさせてくれますね。

料理人がお客さまからいただく最高のほめ言葉とは。

初めてこの店を教えてくれたときの友人は、「国鉄の…あーなんて古いんや、今の人わからへんな、ついでに人間も古いからねと冗談交じりでJR元町の…」とあわてて言い直しています。
神戸高架下商店街(JR・阪神元町駅と神戸駅間の高架下で運営されている商店街には、雑多でマニアックな店がひしめいている。商品に体が触れるとそのまま崩れ落ちそうな狭さである。しかし、阪神・淡路大震災では被害が少なく、いち早く復興に立ち上がったといわれています)の近くにその店はあります。

店を示す看板が軒に掲げられていますが、アルファベットで読みが添えられていなければ篆刻(てんこく)文字でかかれた店名がわかる人は、そういないはずです。看板の下に店の扉はなく地下への狭い階段を下りたところにあります。そこは、カウンターに6人が座れるだけの店です。狭さでは高架下に負けません。席を移動するときにはお客さんの協力が不可欠なところです。

店には、料理をする女性店主ひとりである。いつもながらの身づくろいに店主の姿勢がうかがえます。自分で買出しに行き2時ぐらい仕込むという大皿に盛られた料理。旬の素材が並んでいます。焼き茄子は白だしに半浸しにしてあります。セロリーやきゅうり、ナス、茗荷などの夏野菜のさっぱり漬け、鯵の南蛮漬け、かぼちゃの煮たものなど家庭の惣菜が並びます。関西ではこの時期に鱧は欠かせません。鱧は湯引きとよく聞きますが、ここでは火でさっとあぶると味が増すと店主はいいます。これに梅酢、わさびは絶品です。

篆刻文字を読み当てた人生の先輩が、ここの料理を頂いて「高級ではなく上質である」と評した。それを聞いた店主、黙って頭を下げています。

丁寧に素材を選び、丁寧に下ごしらえをし、丁寧にだしをとり、丁寧に調理をしているといいます。こんなこと料理人は口にしません。お客様から言われたことが何よりうれしいのではないでしょうか。

私たちは仕事などその結果をほめることはありますが、そのプロセスに視点を当てほめることは少ないものです。結果を出して当たりまえの感覚に支配されていますから。

どこで勉強するのと私の質問で、ここの店主は板前の修業をしたことはないと聞いていましたので、名だたる料理屋さん料亭に食べに行くと教えてくれました。勉強しにいくといいます。そこでいろいろと素材や調味料、調理法をうかがうのだそうです。板前さんたちは親切に教えてくれるといいます。
それを店主流の素材で再現していくのだと思います。

「高級ではなく上質である」今風に言えばこのオーナーシェフにとってこの言葉は、どんな「おいしい」の言葉より心に響いたのではないでしょうか。できあがった料理をほめられることは多くあるでしょう。しかし、そのプロセスをどのように扱っているかに心を通わせ、この料理人の仕事の哲学とも言えるものに視点をあてた言葉は、これからも何よりの行動の原動力であるはずだと思います。

私自身も「上質な仕事」とは、またそれができているかを考えるきっかけとなる言葉でした。

青柳教恵

青柳教恵

青柳教恵あおやぎみちえ

株式会社アクア 代表取締役

<ITに置き換えられないコミュニケーションの技術を磨きます> 元日本航空(株)パーサー。14年間、815,939時間の中で接客術と部下指導育成手法を体得。退職後、人材育成研修会社等にて組織力強化…

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