
2023年10月7日に勃発したガザ軍事衝突。約2年1ヶ月の戦闘でイスラエルの犠牲者は1200人以上、ガザ領内では少なくとも6万8000人が犠牲となりました。崩壊した建造物の瓦礫下には依然数千人規模の行方不明者が取り残されています。ガザ停戦合意を受けイスラエル軍が国境の一部を解放したことで南部ケレム・シャローム検問所から赤十字団体主導で重機を使った遺体回収チームがガザに入りました。壊滅状態の南部ハンユニスとラファでの捜索に関わっています。

2025年10月10日にガザ停戦合意が承認されましたがイスラエル軍が大規模爆撃を再開しており2日間の空爆で46名の子供を含む104名が死亡しました。イスラエル軍は爆撃理由としてハマスによる戦闘行為と人質完全解放の不履行を指摘しています。
ガザ停戦合意第一段階の主軸である人質完全解放を巡ってはイスラエル政府がハマス返還の3遺体が人質本人と一致せずと発表。ハマスによる段階的な遺体返還に不信感を抱いておりガザ領内への断髪的な再爆撃に踏み切りました。現時点で28名の遺体のうち23名の遺体回収を確認。残された5名の迅速な遺体返還を突きつけています。

停戦合意の仲介役となったアメリカトランプ大統領の動きにも注視が必要です。停戦合意第二段階としてハマスの兵力解除を掲げましたがガザ領内にはハマス以外にイスラム聖戦など複数の武装組織が絡み合っており停戦合意の不安定化は避けられません。さらにガザ戦後復興体制としてハマスの武装解除完了までガザ地区をイスラエルとハマスの管轄区域に分割させ戦闘停止のための多国籍監視軍を展開させると発表しました。この戦力が武力衝突拡散を回避させる国際安定化部隊(ISF)であります。参画国候補にトルコ、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ヨルダン、パキスタン、インドネシアの動きがあり、展開目標はハマスだけでなく複数の武装組織の兵力解除にあります。いかにガザ地区を孤立させないか10月の停戦合意以降世界規模での復興支援の連帯が高まりつつあります。特に複数の仲介国の中でトルコの存在が際立っています。イスラエルガザ軍事侵攻を批判する立場を取り、同時にハマスとの繋がりだけでなくアメリカトランプ政権とのパイプも維持。ウクライナ戦争ではロシアウクライナ双方の共通交渉窓口を務めてきました。混乱する中東地域でのトルコ全方位外交の交渉力にハマスはもちろんイスラエル側も戦後体制への選択を迫られています。


渡部陽一わたなべよういち
戦場カメラマン
1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…
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