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2013年08月22日

コンフェデ杯以降、守備力が不安視される日本代表

ここ最近の日本代表を見ていると、数年前の苦い記憶がよみがえってきます。ドイツ・ワールドカップへ向かっていったジーコ監督率いるチームに、アルベルト・ザッケローニ監督が統べるチームが重なるのです。

8月14日に行なわれたウルグアイ戦は、2対4の完敗に終わりました。ホームで4点も取られているのですから、惜敗ではなく完敗と言わざるを得ません。

試合後の報道を見ると、「大量失点をしたコンフェデ杯の教訓が生かされなかった」とか「守備が崩壊」といった切り口が目につきました。ウルグアイは堅守速攻のスペシャリストです。相手に攻めさせながら攻めるのが抜群にうまいウルグアイからすれば、日本戦は望みどおりの展開だったに違いありません。公式記録のボール支配率では日本が53・9パーセントと上回っていますが、相手ボールでゲームを作るのが彼らの持ち味ですから。

コンフェデ杯をきっかけに、センターバックの守備力が不安視されています。アジア相手のゲームでは主導権を握ることが多く、最終ラインの選手も攻撃へ関わっていかなければならない。ザッケローニ監督が吉田麻也と今野泰幸をセンターバックに据えてきたのも、彼らの攻撃力を評価してのことでしょう。

ただし、「守る」という一点に評価基準を絞れば、彼らより優れた人材はいる。世界のトップクラス相手の試合では守備の時間が長くなり、吉田や今野のディフェンス力が不安視されているのが現状でしょう。

私自身は10年以上前から、センターバックのレベルアップを訴えてきました。「これからのセンターバックは守るだけでは通用しない。サイズがあってスピードがあり、そのうえで攻撃力も揃えた選手を育成する必要がある」と説いてきました。世界最先端のサッカーを観察していれば、そうした考えに辿り着くのは難しいことではありません。

センターバックの育成というものを、日本サッカー全体の課題としてもっと早くから取り組めなかったのか。私自身は忸怩たる思いでいっぱいです。

失点が多い、センターバックに不安ありとの指摘は絶えませんが、攻撃と守備を切り離すことはできません。それだけに、私は攻撃に着目しています。

ウルグアイ戦では、1トップに柿谷曜一朗が起用されました。後半途中からは豊田陽平が出場しました。いずれもJリーグで結果を残しているストライカーですが、このチームはより根本的な問題を抱えています。攻撃のバリエーションが増えていないのです。

1年前や2年前の日本代表の試合映像をお持ちの方は、ぜひ再生してみて下さい。ウルグアイ戦と見比べてみて下さい。日本の攻撃パターンが、ほとんど変わっていないことに気づくはずです。

本田と香川、本田と岡崎といった二人のつながりはありますが、3人、4人と絡んでの崩しはなかなか見られません。あるとしても、決定機にはつながっていない。ウルグアイ戦では、ボランチの遠藤保仁が高い位置をとることで、どうにか攻撃に変化がもたらされていました。攻撃も守備も選手に委ね、その結果として個々の資質が十分に引き出されなかったジーコ監督のチームが、にわかにオーバーラップしてきます。

ウルグアイにいいようにカウンターを浴びたのも、攻撃に原因があります。組織的な崩し方ができていないので、パスの行方が分かりやすいのです。ウルグアイの選手たちは、「次はこの選手にパスが来るぞ」と、確信を持って守ることができていたでしょう。

どこでボール奪取を狙うのかがはっきりしているので、奪ったあとの攻撃もスムーズになります。攻撃が単調なゆえに相手の守備網にまんまと引っ掛かり、鋭いカウンターアタックを受ける──それこそが、ウルグアイに完敗した何よりの理由です。守備の崩壊は、攻撃から始まっていたのです。

それにしても、ウルグアイは質の高いチームでした。

日本が1メートルのパスの精度を追求しているとしたら、彼らは10センチ単位で要求し合っている。日本が1秒の切り替えの速さを意識しているとしたら、彼らは0・1秒の違いを追い求めている。目指しているレベルの高さを、まざまざと見せつけられた気がしました。

ひるがえって日本はどうか。

気温、湿度、ピッチコンディション、主審の適切な判定といった様々な要因が整わないと、世界のレベルでは勝てないのが現状です。条件が良ければ最高点を弾き出すものの、何かひとつでも欠けると勝利の可能性が低下してしまう。チームとしての幅という意味で、世界のトップクラスとはまだまだ差があります。それも、明らかな差が。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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