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2012年11月22日

日本サッカーの方向性を決める一戦

 フットサルW杯が盛り上がりましたね。W杯に出場していたカズこと三浦知良選手の周辺が盛り上がった、と言うべきでしょうか。スポーツ紙の1面を奪うだけでなく、テレビのワイドショーでも取り上げられるとは──。さすがにカズというべきでしょう。

 そのフットサルW杯とほぼ並行して、11月3日からU-19(19歳以下)のアジア選手権が開催されました。上位4か国まで勝ち残れば、翌2013年のU-20W杯の出場権を得ることができたのですが、残念ながら準々決勝でイラクに敗れてしまいました。

 実はこの年代で、近年の日本は苦戦を強いられています。2008年、2010年も準々決勝敗退に終わっているのです。2008年は香川真司(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)が、2010年は宇佐美貴史(ホッフェンハイム/ドイツ)が出場していますが、アジアを勝ち抜けませんでした。

 過去の敗戦を、いまさら蒸し返すつもりはありません。ただ、日本はこの年代の強化を軽視してしまったのではないかと、言わざるを得ません。

 1990年代から2000年中頃まで各年代の代表強化に携わってきた私は、日本がアジアで勝てなかった時期も、勝てるようになった時期も最前線で体感しています。周囲から「アジアでは勝って当たり前だろう」と思われるようになってからも、予選を勝ち抜くのは決して簡単ではありませんでした。

 ピッチコンディションや審判の判定基準、あるいはアジア独特の気候などに、困惑する選手もいました。

 しかし、そういったネガティブな要素を、私が関わったチームは決して言い訳にしませんでした。個人的に言いたいことがあるとしても、アジアの予選を突破しなければ単なるエクスキューズに過ぎないといった雰囲気が、チーム内にありました。とにかく勝たないと何も言えないと、若い選手ながらに感じていたのです。先輩たちがアジアを勝ち抜いて世界へ飛び出し、ベスト8や準優勝といった結果を絶えず残していたからこその、高い目標設定でした。

 U-20ワールドカップは2年に一度の開催ですが、先輩たちよりいい成績を残さないと自分たちは評価されないという危機感が、チームと個人を逞しくしていました。アジアを勝ち抜くのは最低限のノルマという意識が、ブレのない向上心につながっていたのです。

 ここ数年の若い代表チームは、そうした〈飢え〉を感じさせてくれません。
U-20ワールドカップやオリンピックに出場するまえに、ヨーロッパへ移籍するルートが確立されてきたからなのか、若年層の大会に出られなくても問題はないという雰囲気を感じます。選手からも、監督らのスタッフからも、日本サッカー協会からも。

 20歳以下や23歳以下の世界大会は、あくまでも通過点に過ぎません。ただ、予選には抽選やシードというものがあり、そこでは前回大会の成績が反映されます。予選を突破すれば次回大会もシードになりますが、予選敗退に終わるとどこかで強豪と対戦しなければならない。

 2008年、2010年のU-19選手権は、いずれも準々決勝で韓国と対戦しました。2008年の予選を突破していれば、2010年は韓国との対戦を避けることができたかもしれない。おそらくそうなってでしょう。若年層の強化は数珠つなぎのようになっていて、過去の成果が未来の財産になる。そういった感覚が、このところめっきり鈍っているように感じられてならないのです。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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