2016年11月01日

東京オリンピックへの期待と元選手としての本音

 10月、リオ・デ・ジャネイロオリンピックのメダリスト達が集結し、パレードが行われた銀座。街には見渡す限りの人、人、人!前回ロンドンの時よりも距離を延ばして2.5キロのパレードでしたが、その盛り上がっていた様子を私もテレビの中継で拝見しました。

「次は東京」

今、色んな意味で東京が注目されていますが、豊洲市場の盛り土問題にしてもオリンピック施設の建設費高騰による見直しの問題にしても、どう決着をしていくのでしょうか。何かしらの落としどころにはまっていくとは思いますが、元アスリートとしては「この施設のせいで都民の税金が大量に使われた!」と負のイメージを持たれ、歓迎されない形でオリンピックが行われるより、競技ができる基準の施設として最低限担保され、周りから温かい応援を頂いて盛り上がる雰囲気の中行われることの方がレガシーになるんじゃないか?と思う訳です。

 人間の限界を飛び越えたところに挑戦するアスリート達は、多くの方々の心からの応援がより一層自分の能力を高めてくれる後押しになります。その中で飛び出す素晴らしいプレーやパフォーマンスが東京の地で世界中の皆さんの記憶に残る、これこそがレガシーなのではないかという気がしているのですがどうでしょうか。

 そりゃ出来ることなら何十年先でも古びず、長く使える、現在の中で考え得る最先端の技術を駆使した施設でできるならそれに越したことはないですが、現実的に3兆円を超すオリンピックって後に残るのはレガシーより借金!?ということになってしまいます。もっと知恵を絞るべきです。実際、ボートとカヌーの会場問題も、宮城か東京かで揉めに揉めた状況になって、初めて海の森でも300億円まで削減した案が出てきました。今後プレゼンした条件で、いかに知恵を絞って削減できるかを真剣にやっていくのが妥当ではないかと個人的には思います。

 思い返してみると、前回の東京オリンピックは終戦後の焼け野原から復興を果たした姿を世界に発信したオリンピックでした。56年の月日が流れて再び東京での開催。当時からの成熟や洗練を発信できると思います。また少子高齢化など世界の中でも課題先進国の日本の首都東京から、未来志向の提案を発信できる機会でもあります。そして災害大国でもある日本は、決して諦めることなく復興へ向けて歩んでいること、これも世界に発信していかなければなりません。東京都もIOC総会でのプレゼンにはそんな思いを込めて臨まれたと思います。

 選手側から次の東京オリンピックの意味を考えてみたとき、やはり思うのはこの東京で、皆さんの思いを乗せて、記憶に残るような最高のパフォーマンスをしてみたい。これに尽きると思います。リオ五輪後、注目されていたそれぞれの選手の進退について、例えば女子レスリングの吉田沙保里選手は「出られるなら出たいと思っています!やはり次は東京ですから!」と前を向いて答えていらっしゃいました。もし私が現役選手だったなら、吉田選手と同様に間違いなく「出たい!」と思ったと思います。

 講演でもそのお話は必ずさせて頂いていますが、子供の頃からオリンピックに出ると決めていました。しかもそれが自国開催のオリンピックだなんて!想像しただけでも高揚します。その舞台で人生最高の力を発揮できたとしたら・・・想像は尽きません。こうして思いに耽ると、施設が豪華じゃなければならないとか選手としてはあまり重要視はしていないのかもしれません。ただ、東京で行われるオリンピックでこれまでやってきたことを出し切りたい、達成感を思う存分味わいたいのです。

 余談になりますが、リオのシンクロ日本代表の選手のうち、3人のメンバーが引退を決意しました。年齢的には、まだまだオリンピックが狙える選手ばかりです。本人とじっくり話をした訳ではないので推測でいい加減なことは言えませんが、ただもったいないな、と。自国開催のオリンピックに出ることについて、私が思うより、彼女達には魅力的に映らなかったのかもしれません。あの過酷なトレーニングをあと4年続ける辛さの方が、東京オリンピックへの楽しみよりも上回ってしまったのか・・・。一つ言えるのは、私とケースが全然違うということです。彼女達はメダルが獲れない時期も経験しています。井村先生の下、リオで「やり切った」と思えたのだろうと思います。

 いずれにしても、2020年まであと4年。ソフトもハードも準備を整えて、いいレガシーを残せるオリンピックにしたいですね。