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コラム 政治・経済

2021年05月10日

企業が海外で失敗しないために

世界の文化論は、それがビジネスの成功に役立ってこそ価値あるものと言えます。経済がグローバル化する中、日本企業が海外に積極的に進出しています。海外進出の成功例もよく聞かれますが、失敗の話もよく聞かれます。失敗例に着目して、その原因を文化の差異という観点から分析してみます。

なお、外国でのビジネスに重要な文化論は、日本の学校や教科書などでは教えてくれません。また、外国のビジネススクールに行っても教えてくれません。本コラムが外国でビジネスを推し進めるときに有用な情報になることを期待致します。

大企業の失敗、社員動員のボランティア

テレビや映画の映像では分かりづらいのですが、米国に行ってみると、街にはゴミが結構落ちています。日本に帰って来ると、日本は小綺麗だと感じます。米国の大都市に支社を持つ日本の大企業が、街を美しくしようと支社の日本人によるボランティア活動を行いました。日本人の社員たちは会社の名前が書かれたお揃いのTシャツを着て、街路の清掃を行いました。

これは日本ではよくあることですが、この活動は米国ではひんしゅくを買いました。なぜ、米国ではこのような活動が認められないのでしょうか。いくつかの視点から考えてみます。

米国では社員が奉仕活動などを命じられることはありません。社員は雇用契約書で示された事項について働きます。企業の経営責任者の最大の役目は、株主に対してより多くの利益をもたらすことです。米国では、一般社員の立場からも、経営責任者の立場からも、企業の目的は何かという観点からも、上述のような活動はありえない事なのです。

もちろん、米国にも奉仕活動や社会貢献団体に資金を寄付するという事が行われていますが、それは一般に個人が行います。重役クラスには個人として寄付するための資金が給料に合わせて支給されます。どのような分野に寄付するかは個人が自由に決めます。日本における外資系の企業も同様な事が行われています。

チップ制度が理解できない日本の経営者

事業に成功して、日本国内で多くのチェーン店を持つ企業が、海外に進出することをよく見受けられます。飲食店や様々な小売店などですが、失敗例が少なからず聞かれます。失敗の多くは、その国の文化や習慣について関心が極めて少なかったり、もしくは無知であったケースがほとんどです。

日本のレストランや飲食店などではチップの習慣はありませんが、欧米や欧米文化の影響を受けた国々ではチップの習慣があります。レストランに限らず、サービスを受けた場合はチップを出すのが習慣です。日本人が海外旅行したときに、チップは一番煩わしく思う事ではないでしょうか。

米国に進出した外食系の日本企業でよく失敗することが、チップをなくすことです。気持ちとしては、チップなど煩わしいことは行わなくていいですよ、ということなのでしょうが。欧米人にとってサービスを伴う外食店でチップを無くするということはありえない事です。

チップ制度を理解できず、米国に進出する企業はたいていの場合は失敗するものです。売り上げが伸びず、進出して間もない頃にチップ制度を取り入れるなど、慌てて様々な変更をしても赤字が続き、結局米国から撤退という事例が見受けられます。

日本人がチップ制度を理解出来ない理由として、日本人はサービスにお金を払う概念が薄いとよく言われます。また、日本人がもしチップを渡すのであればサービスを受けた後ではなく、サービスを受ける前に渡すであろうとも言われます。

日本人が違和感を覚え、たじろぐチップは、日本人にとって実は簡単な問題ではありません。チップ制を理解するためには、雇用の問題や成果主義の問題、そして欧米社会の歴史的発展過程などの考察が必要です。欧米のチップ制を煩わしいと思うのでなく、チップ制は必然であると思えない経営者は欧米に進出しても、成功はしないでしょう。

失敗しないために何が必要か

上述のように日本の企業が米国などに進出して失敗する例をよく聞きます。米国だけではありません。日本の最大手の家電小売店が中国に進出して、結局撤退や、日本のEC販売大手が中国やヨーロッパに進出していずれもうまく行かず、最終的にはほとんど撤退などの例があります。なぜこのような失敗を繰り返すのでしょうか。失敗の最大の原因はその国の文化や生活習慣などに理解や想像が及んでいないからです。

米国に行ってMBAの資格をとることがあっても、ビジネスのスキルを学べるだけで、チップ制度がなぜ存在するかなどについては学ぶことはできません。彼らにとっては当たり前のことですから、教えてもくれません。日本人が理解するためには、世界の国々について深い歴史観、高度な文化論を持ち、それらをベースとした真相を見抜くことが出来る洞察力を持つことが必要です。

経済のグローバル化が進む中で、企業経営者は学校でも学ぶことが出来ないこと、教科書にも書かれていないこと、一般書物にも示されていないことを、鋭く洞察する能力を持つことを期待致します。そうすれば、日本の企業がしばしば直面する海外進出の失敗もなくなることでしょう。

人種問題や多様性の本質を理解できていない日本企業

人種問題やその対処法については特段の注意が必要です。米国内でさえも学校や書物などで深くは教えません。公にできない機微な事柄が含まれているからです。人種問題や多様性に関して個人がどう振舞うべきかは、上流・中流階級では家庭でしっかりと教えます。米国やヨーロッパの人種問題や多様性を考えるときは、相当の知識と洞察力が必要です。

多様性についての対応として、

  • A:多様性の社会だから自分たちが何をしてもよいだろうと考える。
  • B:多様性についての基本は、ビジネススクールやビジネス実用書で学び理解している。しかし、それは単なる知識でしかありません。
  • C:多様性の社会だからこそ、人にストレスや迷惑をかけないようにcommonやnormalなway、mannerで進めようと考える。これは知識と言うよりも品格の発現です。

Cのケースは、米国などでビジネスに成功している人々の基本的な心構えでしょう。日本人でここまで思いが至っている人は大変少ないです。多様性の対処法も親が家庭で教える事項の範疇です。上述の日本企業の失敗例は、Cのような考えが欠如していたことが大きな原因であり、むしろAのケースに分類されます。

国際会議ではほとんどの人々は背広で参加します。日本のある政治家が着物で参加して、違和感をまきちらしていました。着物は日本国内では正装の一つだから文句ないでしょうと本人は考えているようですが、国際社会というステージは仮装行列の場ではありません。欧米に比べると日本の政治家の資質は極めて低いと言われる証左の一つとなることでしょう。

海外進出に失敗せず成功するために必要な能力

日本の企業が海外進出で失敗するということの逆もありえます。外国の企業の日本進出においてもうまく行かず、結局は撤退という事例は少なからず見受けられます。その場合、日本の企業が外国企業の営業や販売システムを導入して行ったケースがしばしば見受けられます。失敗の原因は、両国の文化等の違いに関する知識が足りなかったり、導入するにあたって成功するかどうかの検討力の欠如です。

海外でビジネスを行う上で、他国の社会の文化や習慣を的確に把握することが重要ですが、その国の人に聞けば済むという単純なものではありません。両国の文化や習慣をよく知り、比較することにより、文化や習慣の重要な差異を把握できるものです。ほとんどの外国の人は日本の文化や習慣をあまり知っていませんので、聞いても有用なアドバイスは得られません。

結局は、グローバル化した社会で成功するためには、自らが歴史や文化に対する知識を広め、理解力や分析力を研ぎ澄まし、ときには真相を抉り出すような洞察力を持つことが必要です。日本の企業が海外進出に失敗せずスムーズに進出できることを期待いたします。なお、海外で成功するような文化の理解力や社会の洞察力を持つ人は、国内のビジネスは余裕で成功することでしょう。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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