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コラム 政治・経済

2020年04月10日

日韓輸出管理問題の現状と展望

新型コロナウイルス感染症の問題が大きくなった影響で、関心が少なくなっておりますが日韓の間の輸出管理問題が無くなった訳ではありません。日本の輸出管理は制度に則り的確に続いています。今回はこの問題についてふれてみます。

地理的に近い日韓の関係ですが、この問題の正確な理解は今後の動向を展望してビジネスや投資を進めていく上で極めて重要なことです。

輸出管理問題を理解する鍵

最近いろいろな場所で、私は日韓輸出管理問題について質問を受けます。
一番多い疑問は、この問題に関して「韓国内部の状況が見えないこと」や、「将来が見通せないこと」です。
このような疑問が生じる理由は、韓国の厳しい経済状態が正確に日本に伝わっていないことであり、最大の原因は、韓国の政府や企業が、政治的および経済的理由により真実を外部に発していないからです。

さらに残念なことに、日本のマスコミも知識不足、分析力不足で、私たちが理解や納得できる情報を伝えきれていません。すなわち、韓国から伝えられる情報のうち、ある程度信頼できる情報は輸出が何%減ったとか、株価がいくら下落したかというような、隠すことができない性格の数値のみです。このような数値のみの経済論では、日韓関係の上辺しか見えてきません。

日韓の経済関係の真相を知るためには単純な経済論だけでは不十分で、しっかりとした産業論をベースに分析しなければなりません。たとえば、世界の半導体産業の実態の正確な知識を持っていれば、自ずと韓国の半導体産業の将来が明確に見えてきます。さらに、今回の日本の重要な輸出管理物質であるフッ化水素について、高度の技術的知識を持っていなければ、問題の深層を探り理解することはできません。

日本の輸出管理と行方不明のフッ化水素40万トン

2019年7月から始まった日本の輸出管理の経過は次の通りです。7月1日、日本は韓国に対して、半導体材料3品目(レジスト、高純度フッ化水素、フッ化ポリイミド)について包括的輸出許可から個別輸出許可へ切り替えました。8月28日、輸出管理上のカテゴリーにおいて韓国をホワイト国(現:グループA)から除外しました。

これらの一連の措置は、日本の安全保障上の理由からの輸出管理であり、いわゆる輸出規制ではありません。国際的にも貿易管理において安全保障の事由が最優先されます。 なお、輸出管理の3品目において、フッ化水素はウラン濃縮過程で使用されたり、サリンやVXなどの化学兵器の合成原料として、フッ化ポリイミドは軍用航空機やレーダーどの絶縁材料に、レジストは軍用航空機などに使う半導体の感光剤に使われるおそれがあります。

日本が輸出管理措置を取る以前に、韓国の政府発表および韓国国会の資料等から、日本から輸入した大量のフッ化水素が行方不明になっていることが明らかになっていました。例えば、韓国産業通商資源部は「韓国関税庁の統計によると、2019年5月に約40万トンのフッ化水素が行方不明であると」と発表しています。これは日本の輸出管理を考える上で、極めて重大な事実です。

輸出管理が始まりますと、韓国の輸入元の企業はフッ化水素の取り扱いについて不正がなかったことを明らかにしなければなりません。一部の報道では、韓国企業は行方不明のフッ化水素は日本に返したとか、不良品だったので捨てたなどと釈明しているようです。しかし、これまでのところ韓国の企業は日本に対して十分に説明できていないようです。不明分のフッ化水素の行方は、第三国を通して北朝鮮やイランに渡っているのではないかと懸念されております。

なお、日本から高純度フッ化水素を輸入できなくなると、韓国の半導体産業は大変なことになるのではないかという雑誌記事が日本で数年前に出ております。最近でも、同様な事柄が2018年の秋、2019年の春に日本および韓国のマスコミでも報道されています。また、2018年には日本政府は韓国の輸入フッ化水素の管理ついて協議を申し入れていますが、韓国は応じておりません。都合の悪い事は無視する、または応じないという姿勢を韓国は貫いていたようです。

素材、部品、装置の国産化は可能か

特定の物品が輸入できないのなら国産化しようという考えは、現代の世界経済の実態を考えますと、全くありえない方策です。これは韓国内の経済紙でも冷静に指摘しているところです。現代の国際的な分業体制において、世界中から1円でも安い素材や部品をかき集めて製品をより安く製造することが製造業の基本です。素材や部品をゼロから自らで作ると言う産業形態は、価格競争に負けて売れませんからそもそも成り立ちません。

韓国内で国産化という方策がまだ叫ばれているのは、国民向けの政治宣伝と推測されます。研究開発を行ったからといって、容易に国産化できるものではありません。韓国半導体産業においては時間の余裕も全くなく、超高純度フッ化水素の在庫が欠けることないように今直ぐにも入手しなければならない状況です。

韓国では、国産化のために今後2兆1000億ウォンを投入するという計画が公表されていますが、上述の通り専門的に見ますと、全く無駄に見えます。それでも国産化のための多額の研究開発費を企業に提供するのは、業績不振企業に対する、その場しのぎ的な政府の支援措置ではなかろうかと考えられます。

なお、たとえ高純度フッ化水素を簡単な試験管の中で製造することができたとしても、産業用に大量の高純度フッ化水素を製造することとは全く別物です。さらに、何百倍もの高度な技術を結集しなければならないでしょう。その技術開発も、容易にできるものではありません。

「国産化成功」等のフェイクとも思われるニュースが企業や韓国政府から度々出されている理由は、企業の株式やウォンの暴落の阻止のためと推測されます。韓国では、大企業のほとんどが創業一族経営の企業ですので、資金調達には株価の維持が重要です。また、2020年4月には国会議員選挙もあります。支持率の上昇のために、韓国政府も株価やウォンの暴落阻止を目指して、政府管掌の年金基金を投入しているとも言われています。

今後の展望と外需依存経済の限界

韓国では日本による超高純度フッ化水素の輸出管理で、関連産業の停滞が懸念されます。超高純度フッ化水素がなければ半導体産業は大きな影響を受けます。現状では、外国の企業は新規の契約を躊躇するでしょう。また、企業自身にとっても当分は、半導体分野での投資を控えざるを得ません。

今後は半導体製造の中心が、単純に台湾や他の国に移るだけです。結果、素材や部品、装置などの日本の輸出は大きく変わらず、日本経済には大きな影響はありません。昨年の輸出管理以降台湾などでは、半導体製造に関する設備投資が急速に進んでいるという報道が、しばしば見受けられます。

日本や米国は内需の強い経済国です。対して、台湾・韓国型の産業は外需依存の経済です。すなわち、素材や部品、装置を日本などから輸入して、安い人件費で製造した製品を輸出することにより利益を得ています。内需で稼げない国は、回し車を常に回し続けるように輸出を続けていないと国の経済は直ぐに破綻します。外需依存型経済の国は、近隣の経済大国の技術力や経済力に依存しながら生きていくしかないのです。

フッ化水素等の素材の輸入困難、さらには世界で新型コロナウイルスの感染拡大で輸出の不振などのリスクに韓国は直面しています。財政逼迫、株価暴落、ウォン安、輸出の不振など、経済の悪化が今のまま続く状況ではデフォルト・国家破産を招いて、近い内にまたIMF管理下に陥る可能性が大きいと言われています。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題・SDGsをテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境問題・SDGsについて最新の情報を提供しつつ、社会の動向と産業界の課題に関して、専門的…

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