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2005年05月01日

自分以上にはなれない

先日、某電力会社の人事部長さんにお会いしたら、4月から毎日、就職試験の面接で大忙しだという。朝から晩まで面接面接の日々。私もTBSにいた頃にアナウンサー試験の面接官をやったことを思い出した。私は知らない人と会って、人間ウォッチングをするのが好きなので、全く苦にならなかったから、「いいですね~楽しそうで。」と言ったら、「全然、ぜ~んぜん、面白くないよ。」と憤慨した様子。彼が言うには質問に対する受け答えが判で押したように同じなんだそうだ。

そこには就職本のマニュアル的答えが見え隠れする。同じような答えの人の中から、少人数を採用するのは難しいだろうなと思いつつ、もう1つ聞いてみた。「でも、面接に入る前にある程度わかりません?」この質問にはいたく共感したらしく、「そうなんだよ。名前を呼んでから、席に着くまでにある程度のことはわかるよね。」

これは何を意味しているか。一つは人間が五感で得る情報のうち、視覚から得るものが7割以上という。だから、服装や髪形、メークなど第一印象はやはり大事で、清潔感がある、若々しい、ということが重要だということ。もしも、この子がわが社の一員となったとき、得意先に不快感を与えるようでは困るわけだ。

二つ目はその人が醸し出す雰囲気である。どんなにその日だけ、気をつけても日頃の生活が、歩き方やお辞儀の仕方に出てしまう。お辞儀の角度まで指導を受けてきたとしても、緊張のせいで1番自分の楽な姿勢やしぐさになっていく。ベタベタと音を立てて歩いたり、自信なさげな猫背だったり。挌言う私も猫背だった。だから20年、普段の生活の中で、歩く時に必ず意識的に後で手を組んで、胸を張るようにして矯正してきた。急に直すのは困難だ。

つまり、短期で面接向きに自分を変えることは困難で、日頃の生活態度はどこかに出てしまうということだ。ならば、どうすればよいのか?答えは一つしかない。自分以上になれないのなら、普段の自分を高めるしかないのだ。

私がアナウンサーに成り立ての頃、先輩アナによく言われた。普段のしゃべりは本番のように、本番のしゃべりは普段のように。スポーツ選手は毎日、何度も何度も同じ練習を繰り返す。野球選手は何百もの振り込みの上にゲームでのバッターボックスがある。オリンピック選手は本番の一瞬のために4年間地道な練習を積み重ねる。何万回同じことをしたって、本番に必ずその成果が出せるとは限らない。ましてや、練習でも出せなかった記録をそこで出すのは至難だ。

話を元に戻すと、冒頭の就職試験の話は「練習をしないで、記録を出そうとしている」ようなもの。無謀なことと言わざるを得ない。

今年で大学の講義も5年目になるが、毎年決まって講義後、私を追いかけ「就職に有利な方法を教えて下さい!」を聞いてくる。「小手先のテクニックやコツでは無理だよ。普段の生活が大切よ。」と答えて、彼らをガッカリさせてはいるが、その普段の生活、どんなことに気をつけて過ごせばいいのか、そのヒントは披露しているつもりだ。

就職試験を例に今回はお話を進めてきたが、あらゆるコミュニケーションの基本は会話だと思う。会話は「質問」と「答え」の繰り返しから成り立っている。

そんな中で、いかに相手の気持ちを引き出す質問をするのか?如何に自分の気持ちを伝えるために工夫をするのか?この辺りを中心に「伝える」ということにこだわって、次回から具体的なお話に入っていこうと思う。

木場弘子

木場弘子

木場弘子きばひろこ

フリーキャスター

フリーキャスター/千葉大学客員教授千葉大学教育学部を卒業後、1987年 TBSにアナウンサーとして入社。在局中は同局初の女性スポーツキャスターとして、『筑紫哲也ニュース23』など多数のスポーツ番組を担…

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