2004年10月05日

裏返し

 次の写真をみてほしい。ホテルのカードキーだが、さて皆さんパッとみてどちらを表にして入れるだろうか。

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 先月、岡山に講演に行ったときのことだ。ホテルに戻り、部屋に入ろうとカードキーを差し込む。「むむむ...!」どうやっても緑のランプがついてくれない。改めて図の説明を見る。速さが問題なのかと思い、そぉーっと入れる。次はシャシャッっと素早く入れる。だがダメだ。今度はカードを入れている間にドアノブに手をかけ、ガシャガシャやってみる。ウーン、やっぱり開かない。おっ人が来る。今着いたようなふりをしてやり過ごす僕。ふぅ。

 もう11時近かったし、荷物も抱えていた私はギブアップ。ついにエレベーターホールに戻ってフロントに電話。ボーイさんにきてもらう。
 「ああ、これ、こっちが表ですよ」
 「な、なんと!」
 写真の、ホテルのマークがあるほう(磁気テープみたいのがあるほう)を表にして入れるというのだ。そんなこと思いもよらなかった。たったいま、「もののみかたを柔軟に」という話をしてきた当の本人がこのありさまである。

 僕はこれまで講演で全国いろいろなホテルに泊まっているし、海外のホテルにだって泊まっている。イタリアだってアメリカだってドイツだって...。でも、これまで一度も部屋に入れなかったことはなかった。不慣れなおばさんなどを見つけては得意げに「こうですよ」って教えてあげていたものだ。それなのに...。

 ボクは「磁気テープみたいなのがあるほうが裏」と思い込んでいた(講演を聞いていただいた方、そう、あのロックオンですね)。だってクレジットカードだって、ANAのマイレージカードだって、スタバカードだってみんなそうでしょ。

 しかし、先日、たまたまホテル業界の方向けに講演があり、ためしにそのことを聞いてみると、私の自信はもろくも崩れた。聞くとホテルのロゴがある面が上、というのが常識らしい。また、友人に聞くと、カードの差し込む方向を示す三角矢印がある面を見て、いつも判断するという。なるほど、人によって物事を判断する基準はこのように違うのだ。

 まったく、固まったもののみかたとはおそろしい。もし、背後に火の手が迫っていて、これを開けないと逃げられないとしたら(ちょっと極端な例だけど)僕は焼け死んでいただろう。

 きっと世の中には今回の僕のように、ドアが開かなくて途方にくれている人がいると思う。いや、ホテルのドアでなくて、自分の可能性のドアだ。どうもがいても青ランプがついてくれない人が。

 そんなときは、思いきって自分をひっくり返してみよう。それはやり方を変える(キーを素早く抜き差しする)というより、根本的な考え方を変える(面を逆にする)ということだ。できない自分をできる自分に、自分や会社のピンチ、デメリット、マイナス面をプラスに変える方法を思うことだ。そうすることで、人生のドアが開くかもしれないから。

 「裏返し」、これはなかなか思いつかなんだー。

 夜、「こんなのわかりにくいったらないよ!ったく」とホテルの従業員に食ってかかった僕だが、朝、チェックアウトの際には「これはいい連載のネタじゃ!」と思い、ニコニコしながら「すいません、あのぅ記念にこのカードいただけますか」と上機嫌だった。これも感情の裏返しか(笑)。

<今月のレッスン:人生もカードの裏にチャンスあり>