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2017年10月16日

個性を受け入れて生きるということ-発達障害が注目される時代に支援できること(2)

先日とある学会に参加させていただいたところ、
ある先生が最近のカウンセリングでのお話をなさったのですが、
日頃私が感じていることと相通じるものがあり、とても心に残りました。

それは…
これまで、発達障害の特性を持つ方とのカウンセリングにおいてよく聞かれた感想は、
なぜ人とうまくいかないのか、なぜ自分はこんなに生き辛いのか、
わからずに苦しんでいたけれど、発達障害が発覚した時、ほっとした、というもの。

これまで自分が悩んできたことの原因はこれだったのだと知り、
自分はこれまでやる気がない、だらしない、と否定され続けてきたが、人間性の問題ではなく、
脳機能の発達のアンバランスさだったのだとわかり、救われた、という意見がほとんどだったそうです。
しかし最近では、自分が発達障害だったらどうしよう、実際のところ自分はどうなのか、
とか発達障害では?と友達にからかわれるのでは、とビクビクしている、
周囲に気づかれたくない、という話が大半、とのことでした。

前回のコラムでも「発達障害」という言葉がかなりメディアでも取り上げられ、
身近になってきているにも関わらず、相変わらず正しい理解が進んでいないことを書かせて頂きました。
この話に接し、私は思っていた以上に厳しい現状に直面したような気がしています。
今回、私は2つのことをお伝えしたいと思います。

1つめは、実は発達障害と診断を受けるには、幾つかの特性に加え、
その症状が日常生活や職業において、著しい支障を引き起こしている、
という条件を満たしている必要があるということ。

最近は発達障害についての情報は、コミュニケーションが取れない、注意欠陥、
といった個々の特性ばかりがなんとなく一人歩きしてしまっています。
しかしそういった特性は誰でも一つ位はあてはまるものがあるでしょうし、
同時にいくつかの特性を満たさなければ診断がつくことはありません。

またどんなにそういった特性を持っていたとしても、
障害特性を持っていることと診断がつくことはイコールではなく、
その特性によって引き起こされる大きな困りごとがなければ診断はつきません。

ですので、診断がつくかどうかが重要なのではなく、
自身が抱える特性によって困っていることがあれば、どのようなスキルを身につけることが必要で、
支援を得ることで対処することが可能か、自己理解を深めることが大切です。
自分の特性を正しく理解し、対応の仕方がわかればQOLをあげることが可能であるからです。

2つめは、発達障害の特性を持つ人は、同時に大きな得意分野を持つ人が少なくないということです。
確かに、発達障害の特性である、コミュニケーションがうまく取れない、独特のこだわりがある、
または注意力が続きにくく気が散ってしまう、多動、などよくあげられる特性は、
困りごとの原因となってしまうこともあります。

しかし独特のこだわりが誰にも負けない専門性につながっていたり、
気が散ってしまう特性は、自由な発想を生み出すことも多いと言われています。

また、多動特性をお持ちの方はかなりエネルギッシュな生活を送る中で、新たな知見を築くことができたり。
様々な業界で天才肌といわれ、社会で活躍される方が数多くいらっしゃいます。
ですので、多くの専門家が、多くの研究や書籍等で発達障害を障害ではなく個性や才能、と表現しています。

これについては、先の学会でも発達障害を「障害」とすることへの疑問が話題になりました。
そこで“右利きか左利きかの違いのようなものでは”と表現された研究者がおられ、
私はその表現にとても感銘を受けました。

日頃、発達障害を障害、といってしまうことに違和感を感じ、障害と呼ばれてしまうことにより、
必要以上にマイナスイメージを持たれていることにモヤモヤとした気持ちを持ってしまいます。
どちらが支援される側で、支援する側、ということではなく、
どちらが正しい、というのでもなく、ただ右利きか、左利きか、という違い。

ただ発達障害は、右利きではなく左利き、マイノリティなのだろう。
だから理解されにくい、と考えると私の中でこの“右利きか左利きかの違い”
という置き換えはかなりしっくりくるのです。

DSM-5でも診断名を「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」や、
「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」など、「症」と「障害」を併記するなどしています。
これは「障害」ではないのでは、との議論の中で「症」とすることが取り上げられつつも、
過剰診断につながる可能性も懸念され、併記されるに至っているからです。

「個性」との表現も場合によっては、様々な特性で苦しんでいる方にとって、
「個性」では片付けられない、とする声もあり、障害という呼び方のまま現在に至っていますが、
議論は広がり始めています。

右利きか、左利きか。マジョリティか、マイノリティか。
少なくとも、隠さなければいけなかったり、ビクビクしたりすることではないことを、
私はきちんとお伝えしていきたいと思います。

渡邊洋子

渡邊洋子

渡邊洋子わたなべようこ

公認心理師

大学卒業後、株式会社博報堂に入社し、ラジオ局、新聞局で勤務。ラジオ局ではFM局の番組のスポンサー業務を、新聞局では読売新聞担当として新聞広告業務に携わる。その後出産のため退職し、専業主婦を経験。200…

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