2018年06月25日

「裏垢」で使い分ける友達関係

スマホを持つ子どもの多くがSNSを利用しています。便利で楽しいコミュニケーションツールですが、一方ではさまざまな問題も起きています。今回はそのひとつ、「裏垢=うらあか」について紹介しましょう。

「裏垢」とは裏のアカウントの略、「裏アカ」とも表記されます。アカウントは「サービスを利用するための権利」といった意味で、SNSという名の交流広場に入るための入場券と考えてください。一部のSNSでは1人で複数のアカウントを利用できるため、用途や友達関係に応じてアカウントを使い分ける子どもが増えています。情報セキュリティ企業のデジタルアーツが実施した調査(『第11回未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査』・2018年3月)によると、裏アカウントの所有率は子ども(10歳~18歳)全体の約4割、女子高校生では約7割に上ります。リアルの友達とつながるための「本垢」、趣味を通じて仲良くなる「趣味垢」、悪口を吐き出す「闇垢」などがあり、「裏垢」は親しい人だけで内輪話をしたり、リアルの友達とは別の友達とつながったりするために利用されています。

ただし、こうした使い分けはSNSに限ったことではありません。昔から、「本音と建て前」、「心にもないお世辞を言う」などという表現が使われています。リアルの生活でも人はいろいろな人間関係を使い分けていますから、「裏垢」を持つこと自体が問題とは言えないでしょう。そもそも人には「本当の自分をわかってほしい」気持ちと、「本当の自分を知られたくない」という相反する心理があります。

たとえば、人づきあいが苦手な女子高校生が学校では無理して明るくふるまっていたとします。まわりの友達から、「いつも元気だね」などと言われると、「いや、本当の自分はそうじゃない」、「素の自分をわかってくれる友達がほしい」という気持ちになります。だからといって「本当の私は暗い」とは言えないし、そういう自分のことを学校の友達に知られたくない、という不安もあるのです。

また、今の若者や子ども社会は「同調プレッシャー」がますます高まっています。みんな一緒、まわりに合わせていないとハブられる(仲間はずれになる)、こんな空気に支配されています。「教室は たとえて言えば 地雷原」という川柳を作った男子中学生がいますが、要は教室の中でいつも空気を読み、浮かないように気を使っていないと「地雷を踏んじゃう」、そんな緊張感があるわけです。こうしたことからも、「裏垢」で素の自分になれたり、本音を言えたりすることが求められているのでしょう。

一方、「裏垢」はあくまでも「裏」、その使い方やつながり方には相応の注意が必要です。たとえばリア友に「検索される」というトラブル。友達が「裏垢」でどんな顔を見せているのかを探ろうと、検索する子どもも増えています。私が取材した女子高校生は、「本名やニックネームをもじった言葉、好きな芸能人や趣味、よく使う口癖などから検索をかけるとたいてい裏垢が見つかる」と話していました。そうして友達の「裏垢」を見つけたら、仲間の悪口や他人への中傷ばかり載っていて、「ヤバすぎるから、つきあうのをやめた」というのです。

こんなふうに「裏垢」が原因でリアルの信頼を失くしてしまうだけでなく、「裏垢」で何かのトラブルに遭っても、リアルの友達や家族には相談できません。「裏垢」のつながりでなんとかしようとしても、脅されたり、騙されたりしてもっと大きなトラブルになる可能性もあります。

では、保護者や教育関係者など子どもに関わる人はどんな対応をすればいいでしょうか。

まず「裏垢」の危険性やトラブルについて、子どもと一緒に調べ、共通認識を持つようにしてください。できれば「こんなトラブルに巻き込まれたらどうするか」と、事前にシュミレーションしましょう。たとえば「裏垢」に書き込んだ内容がもとで炎上したらどうするか、こんな設定をして親子で考えてみます。「炎上しないように、書き込みに注意する」とか、「もし炎上したら、すぐに〇〇に相談する」などというように、具体的に考えておくことが大切です。身近に相談できるおとなや、信頼できる相談機関などの情報も伝えてください。

また、「裏垢」で本音を晒す子どもの心情も理解しましょう。子どもが「裏垢」を使うのは、リアルの世界に「逃げ場がない」という面もあるのです。もっとがんばれと求められるばかりで、「裏垢」だけが悩みを吐き出せる場所になっている子どもも少なくありません。

おとなは、「あなたの表も裏も、どんなことでも受け入れる」という姿勢を子どもに示しましょう。いつも「いい子」であることを求めるのではなく、弱音や悩みはあって当然だから困ったときは頼ってほしい、そういうメッセージをしっかり伝えることが大切です。