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コラム 環境・科学

2012年12月14日

脱原発へのステップ

■脱原発ってどういう意味?

丁度、総選挙があり、争点の1つとなっているので、今回は脱原発について考えてみます。

各政党、原発やエネルギー政策について様々な主張をしていますが、脱原発や脱原発依存と言う場合、言葉の定義が微妙に違っていたり、そもそも厳密にどんな状態なのか規定しないで語っているのではないかと思う事がよくあります。

最終的な脱原発は、全原発廃炉でしょうが、廃炉は決まっていなくても、全原発が稼働していない状態が長期間続けば、実質的には脱原発の状態とも言えます。

また、脱原発依存は、原発に依存する必要がなくなる状態ですから、厳密な脱原発はもちろん、エネルギー供給の面で必要ではなくても原発を残す状態まで含みます。

実際には、今稼働している原発は大飯原発の3、4号だけですから、企業や個人が節電に協力する事を前提にしたり、化石燃料による原発の代替を認めるなら、すでに状態としては脱原発依存になっているとも言えます。

しかし、現状をもって、「脱原発依存達成だ」と言っても納得しない人が多いでしょう。
やはり、まずは政府が節電を要請しなくても良くなる状態になる必要があるでしょう。
そして、東京電力福島第一原発の事故発生以前に原子力でまかなっていた電力量を再生可能エネルギーで代替できるようになれば、本当の意味で脱原発依存と言って良いでしょう。

■脱原発は二段階で

原発を稼働しなくても電力供給の不安がなくなる状態を第一段階としてみましょう。
今年の夏に向けた、需給検証委員会の報告書によると、節電の要請や特別な対策をせず、2010年並みの猛暑だった場合、電力需要に対し、供給が1900万kW足りなくなる可能性があるとしていました。

この想定はかなり過大だろうとは思いますし、電力会社間で融通すればもっと差は縮まります。それでも多めに見積もって、昨年より、再生可能エネルギーによるピーク時の電力供給力が2000万kWも増えれば、特別な節電を要請する必要がなくなり、電力ピークの不安など話題にも上らなくなるだろうと考えられます。

電力ピーク対策として強力な武器になるのが太陽光発電ですから、第一段階を速やかにクリアするには、太陽光発電の普及を強力に進める事が効果的です。今の1キロワット時あたり42円という電力の買取価格が高すぎるという批判もあるようですが、私は、当面は維持すべきだろうと考えます。
ドイツでは毎年700万kW程度、太陽光発電の設備容量が増えていますから、日本も本気で取り組めば、10年以内に第一段階をクリアすることは難しくないでしょう。

第二段階としては、原子力でまかなっていた電力量の完全な代替です。2010年度、日本では全体で9900億キロワット時発電され、その内、原子力が2700億キロワット時でした。

第二段階では、発電量が必要ですから、安定供給できる再生可能エネルギーの普及が重要になります。
地熱発電、小水力発電、前回ご紹介した太陽熱発電などです。黒潮を利用する海流発電も、実現すれば強力です。あまり安定ではありませんが安いコストで量を稼ぐには、風力発電も有望です。

また、全体の電力の安定を保つためには、出力を自在に調節できる再生可能エネルギーも必要です。これはバイオマスエネルギーの出番です。木質や廃棄物はもちろん、藻が作り出すオイルや燃料用芋も、高い潜在能力を秘めています。

第二段階をいつまでにクリアできるかは、まさに政策次第です。そして国民が普及段階のコストをどこまで負担するかによります。さらに言えば、エネルギーを効率よく利用し、必要とする電力量を減らしていけば、実質的な達成はその分早まります。

早ければ10~20年でできるでしょうし、本気で取り組まなければ、いつまでも実現しないでしょう。
今回の選挙も、どんな方向に向かって欲しいのか、自らの意思を票に託すチャンスです。

富永秀一

富永秀一

富永秀一とみながしゅういち

環境ジャーナリスト

私はアナウンサー時代から、環境に関する番組を制作してきました。現在は“無理なく続けられるエコライフ”をメインテーマに、テレビ番組制作、ネット放送、書籍・記事執筆等により情報発信中です。講演では、環境・…

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