ご相談

講演依頼.com 新聞

コラム 環境・科学

2012年09月14日

ティッピングポイントを超えたのか?

■北極の海氷面積史上最小の衝撃

北極の海氷面積縮小が止まりません。これまでの最小記録は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の観測では、2007年9月24日の425万平方kmでした。
この時も、国際的な予測では、2040~50年頃に到達するであろうというレベルまで一気に縮小したため、地球温暖化の研究者の間に衝撃が走りました。
ところが今回は、この異常な記録をあっさりと約1カ月も早く抜き去り、観測史上初めて400万平方kmを下回って、原稿を書いている9月5日の時点で363万平方kmまで縮み、なお縮小傾向が続いています。これは2050~60年頃と予測されていたレベルです。

これはいよいよ「ティッピングポイント」を超えてしまったのではないか。そんな嫌な感じを受けています。
「ティピングポイント」とは、それまで緩やかに進んでいた現象が一気に広がり始める大きな転換点のことです。
地球温暖化で言えば、人類の努力次第で、大きな被害をもたらす気候変動に至らず、何とか影響を最低限に抑えられるポイントとでも言えば良いでしょうか。

これまでとは明らかにレベルが違う北極の海氷の溶け方を見ていると、ついにそのポイントを過ぎてしまったのではないかという恐怖を感じるのです。

ここまで溶けてしまうと、氷よりも光の反射率が低い海水に直射日光が当たり、熱がたまってしまうため、冬に向けての海氷面積の増加ペースも鈍るでしょうし、例え氷が張っても複数年に渡って溶けなかった厚い海氷に比べると薄いため、翌年以降、また溶けやすくなってしまいます。

もちろん、海に浮かぶ氷ですから、溶けても海面上昇には繋がりませんが、地球温暖化、海水温上昇を示す重要な現象です。

■変化が早すぎるのでは?

私が環境問題に関する講演を始めたのは2002年ですから、今年で丁度10年になります。

当初は、「温暖化がどんどん進んでいくと、今世紀終わり頃には、4月から30度を超える日があったり、夏には40度を超える日が普通になるかもしれませんよ。」とお話しすると、会場では驚きと、「まさか」という反応がみられたものです。
しかし、すでに4月に30度を超える日があっても驚かなくなりました。夏の40度以上はさすがに普通ではありませんが、37度、38度は当たり前になっています。

「海水温が上がると大気の対流が激しくなり、短時間で猛烈な雨が降りやすくなる。」「温帯低気圧も勢力が強くなり、台風並みに警戒が必要になる。」「干ばつのあと洪水になるなど極端な気象変化が増える。」これらも実際によく見られる現象となりました。
おかしい、早すぎるのです。何十年も早回しされているように感じるのです。

地球の平均気温については、ここしばらくの間、上昇速度が鈍っていました。その理由については、新興国の石炭消費が急増し、大気中に硫黄酸化物が放出されて日射が遮られたから、などの分析がされています。

しかし、気温の上昇が鈍っている間にも、着実に異常現象は増えてきました。その極めつきが、今回の北極海氷面積の異常な縮小だと思うのです。
これが、地滑り的に異常現象がエスカレートする号砲でない事を祈ります。

富永秀一

富永秀一

富永秀一とみながしゅういち

環境ジャーナリスト

私はアナウンサー時代から、環境に関する番組を制作してきました。現在は“無理なく続けられるエコライフ”をメインテーマに、テレビ番組制作、ネット放送、書籍・記事執筆等により情報発信中です。講演では、環境・…

  • facebook

講演・セミナーの
ご相談は無料です。

業界21年、実績3万件の中で蓄積してきた
講演会のノウハウを丁寧にご案内いたします。
趣旨・目的、聴講対象者、希望講師や
講師のイメージなど、
お決まりの範囲で構いませんので、
お気軽にご連絡ください。