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2009年02月25日

グリーン・エコノミーを目指して

2月の初旬、雪が舞い、寒風が吹き荒ぶニューヨークのイーストリバーの畔に立つ国連本部の地下である小さな専門家会議が開かれた。4月のはじめにロンドンで開かれる金融サミットに向けて発せられる提言をまとめるための集まりである。未曽有の不況からの脱出を議論するG20(※)の首脳に対する提言書は、題して「グリーン・エコノミーを目指して」である。

[編集部注]
「G20」(Group of Twenty Finance Ministers and Central Bank Governors)=G8(主要国首脳会議)の参加国に、11の新興経済諸国・欧州連合、国際通貨基金、世界銀行、国際エネルギー機関、欧州中央銀行などを加えた、計19加盟国・1団体・各関係国際機関が参加し設立された財務大臣・中央銀行総裁会議のこと。


一刻も早く対策が打たれ、より多くの人々を危機から救い出さねばならない最中に、なぜ、グリーンエコノミーなどといった気の長い話をするのか、多くの方が疑問に思われるかもしれない。そのことを少しお話したい。

無論、提言案も短期的政策の重要性は唱っている。経済成長の回復と雇用の回復。これは最優先されるべきだ。と同時に、今最も困っている世界の弱者の救済も忘れるべきではない。そう述べている。だが、これだけで良いのか。これでは従来型の対策案と何等変わらない。こんな短期的思考で対策を考えたら、仮に不況脱出ができたとたしても、その回復は短命に終わる。

とすれば、何が必要か。それは言うまでもなく、地球社会が直面する様々な構造的課題の解決である。では、それらの課題とは? まず、地球温暖化問題。そして、エコロジーの保全、貧困の撲滅、さらには、安全な水問題、などなどと続く。今回の危機脱出策はこれらの問題をも同時に解決するものでなければならない。これが提言全体を貫く求めである。

さらに続く。これらの諸課題を解決するには2つの要素が欠かせない。第一は、国際社会の協力である。最早どんな国であれ、地球規模の問題を解決できる国はどこにも見当たらない。コラボレーションこそ解決のパワーを生み出す。第二の要素は、こうである。どんな課題もそれ単独で発生したのではない。すべて根っこでは繋がっている。だからこそ、温暖化を横軸にすべての問題をひっくるめて解決に導く思考が大切だ。これが筆者の感じた会議を支配したトーンである。ここでいう短期と長期の融合を可能にしてくれるのが「グリーン・エコノミー」というわけだ。

昨年の秋以降も日本だけは世界と違って被害が一番小さいと威張ってきたにもかかわらず、あっという間に世界で最も打撃を受けた経済になってしまった。日本はすべてを世界に依存している。世界なくして日本は存在しない。だからこそ、日本は世界のことを考え、世界を少しでも良くしようとせねばならない。日本のことを考えようとすればするほど、世界のことを考えなければならない。世界が危機から脱出しようともがく中にあって、日本も世界への理解と共感性を持ってこそ、国内不況からの脱出も意味を持ってくる。

末吉竹二郎

末吉竹二郎

末吉竹二郎すえよしたけじろう

UNEP金融イニシアチブ特別顧問

東京大学を卒業後、1967年に三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)に入行。1998年まで勤務した。日興アセットマネジメントに勤務中、UNEP金融イニシアチブ(FI)の運営委員メンバーに任命された。現在、アジ…

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