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コラム 環境・科学

2013年10月10日

LPガスの特徴と期待

 東日本大震災と原発事故により、日本のエネルギー事情は大きく変わりました。この原稿を書いている時点で日本における原子力発電所は総て停止しています。このような時にこそエネルギー全体を見つめ直して、どのようなエネルギーをどのように利用していくことが日本にとってベストかを考えるべきときであると思います。今回はLPガスについてふれてみます。

■液化石油ガス
 LPガスは液化石油ガスのことです。液化石油ガスは、油田やガス田の随伴ガスとして、または製油施設などの副生ガスから生産されます。不純物を取り除かれた後、主成分がプロパンやブタンのガスです。プロパンは常温において約8.5気圧で、ブタンは約2.1気圧で圧縮することにより液化できます。
 プロパンやブタンは無色、無臭の気体です。液化することにより体積が約250分の1になり、貯蔵や輸送が容易になります。LPガスは漏れた際に感知できるようメルカプタン等を添加して着臭されています。
 LPガスの国内需要は年間約1600万トンで、家庭・業務用が44%、工業用が20%、都市ガス用が6%、自動車用が8%、化学原料・電力用が22%です。また、タクシー全体の95%でLPガスが使われ、その数は約23万台になります。そのほかにバスやトラック、自家用車、フォークリフトでも使われています。

■プロパンガス
 LPガスは家庭などで利用する場合、プロパンガスの名称で呼ばれます。家庭や事業所の燃料ガスとしてプロパンのほかに都市ガスがあります。プロパンガスと都市ガスの大きな違いは、前者の主成分がプロパンで圧力容器に入れて供給されますが、後者の主成分はメタンで配管を通して供給されます。メタンは冷却しないと容易に圧縮液化できないことが利用形態に違いが生じています。プロパンガスは都市ガスに比べて同じ体積で約2倍の発熱量を持ちます。日本では都市ガスは約2500万世帯で利用されていますが、プロパンガスも約2500万世帯で利用されています。
 空気の主成分は窒素と酸素で、平均的な分子量は29程度です。プロパンの化学式はC3H8で分子量は44です。メタンの化学式はCH4で分子量は16です。従って、プロパンガスは空気より重く、都市ガスは空気より軽い性質を持ちます。

■家庭や事業所におけるLPガスの役割
 それぞれのエネルギーには特徴があります。ガスは熱が得意で電気も作れます。電気は照明や動力が得意です。また、太陽光発電は環境への負荷が少ない特徴を有します。近年、災害に強いエネルギーの利用が求められており、電気などに対する補完性や、非常時の自立性が求められています。分散型エネルギーであるLPガスや、ガスによる発電ができる自立型燃料電池、ガスエンジンヒートポンプなどに対する期待が大きくなっています。
 また、様々なエルギーマネジメントシステム、スマートハウスなどの普及が進んでいますが、LPガスは大きな役割を果たしていくことになるでしょう。

■LPガスの高い環境性
 燃焼時のLPガスのCO2排出量は、ガソリンや灯油など他の石油製品と比べて約10%少なくなっており、地球温暖化防止の観点からも高い環境性能を持っています。
 また、LPガスは出荷段階において、硫黄分や残渣分等の不純物質の濃度が規定値以下になるよう厳密に管理されています。従って、燃焼時に発生する排気ガスは硫化酸化物や窒素酸化物、すす等の環境や人体に有害な物質をほとんど含んでおらず、屋内においても安心して利用することができます。
 LPガスを燃料とするLPG車は、ディーゼル車と比較して微小粒子状物質や窒素酸化物など大気汚染の原因となる物質の排出量が極めて少ないため、大気汚染対策としてトラック等の運輸用でディーゼル車からの転換が進んでいます。

■災害復旧に強いエネルギー
 大地震が起きた場合、地中配管を通して供給される都市ガスは復旧に時間を要する場合が多いのに対して、LPガスは容器を各家庭や事業所に設置していますので配管が短く、災害後の点検と復旧が早いという特長を有します。
 東日本大震災の被災地において、津波で建物が損壊または流されてしまったものなどを除いて、都市ガスや電力よりも早く地震発生後約3週間程度で復旧を果たしています。
 地震災害等により家屋が倒壊した場合、被災者は避難所や仮設住宅での生活を強いられることになります。そのような時でもLPガスは、給湯や煮炊きのほか、暖房、発電などを行うためのエネルギー源として避難所等に迅速に設置でき、被災者の生活を支援することができます。

 地震国である日本においては、東海沖・南海沖地震などの発生が懸念されています。環境に優しく、災害に強いエネルギーに対する期待が大きくなっております。そのようなエネルギーの一つとしてLPガスが今後ますます注目されていくものと思います。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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