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2011年06月10日

答えは、情報の中にではなく、”思索の中”に存在する

先日、ある人との話のなかで、「例の件ですが、ネットで調べましたら、すぐにわかりました」という会話がありました。インターネットが、毎日の生活において必要不可欠の道具となっている現代社会において、このような会話は、もはや、日本全国、いや、世界中の国々において当たり前のものとなっているでしょう。

私たちは現在、便利極まりない、この「IT社会」に生きています。かつて、人類は、20世紀の終焉を迎え21世紀へと突入したその当時、実に猛烈なスピードで、「ITの時代」、即ち、「information technologyの時代」へと推移していきました。当時、アメリカに在住していた私は、アメリカはもとより、世界中の国々が足並み揃えて、猫も杓子も「IT、IT」と言っているその様相を見て、21世紀の世の中は一体どうなってしまうのだろうと心配になったことを思い出します。

本来、「インターネットの普及によって情報へのアクセスが容易になった」という事実は、ビジネスにおいてはもちろんのこと、社会生活を営む上で”ポジティブな効果”を齎すことには違いありません。「情報はパワーである」という如く、情報の豊かさは、様々な分野において、人々に対して、「利便性」「快適さ」を提供。実際、私たちの毎日の生活において、「まず第一に情報を得、その後、具体的に行動を起こす」という、実に効率性の高い時間の使い方ができるようになりました。そして、一般に、人々は、「知りたい情報が手元に無ければ、インターネットの検索ページにキーワードを入れ、瞬時にして知りたい情報を探し、それで”一件落着”」。現在、多くの人々は、幸か不幸か、このような精神構造に依存した生活を送っています。

今ここで、「人類の歴史における”英知”への歩み」という観点からこのことを冷静に捉えてみると、「手元にない情報は、即、インターネットで探す」というこの”生活習慣”は、私たち人間が、実は、”とんでもないネガティブな方向”へと進む要因となってしまっていることがわかります。今、現代社会における人々の動向を客観視するならば、「疑問、あるいは、わからないことがあれば、即座に、インターネットで検索。検索した結果、そこで出てきた情報が”疑問に対する答え”」という端的な思考法を持つ人々が、実に多数派を占めているといえるでしょう。

私は、しばしば、本の中、あるいは、講演・講義等で、「現代社会は、”思索不在”の社会である」という自説を唱えています。インターネット依存型の社会は、人々をどんどんと”安易な情報”へと導き、1)「思索は面倒くさい」、2)「深い思索を試みなくても、必要な情報があればそれでよい」という考え方を持つ人々を、もの凄い勢いで増やしてしまっています。

そもそも、情報とは、何かを行動を起すために使うもの。そして、情報は、人間が、自分の力で思索し、思索を通して「何らかの答え」を出す上で活用すべき代物。

読者の皆さんの中に、わからないことがあるとき、何の疑問もなく、「インターネットで答えを探す」という答えの出し方をしている人はいませんか。インターネットは確かに便利ですが、来る日も来る日も、「上辺だけの情報を得て、それで終わり」という”端的極まりない思索不在の生活”をしていると、私たち人間は、「”一個の個人”としての自覚と責任を持って、自分でしっかりと深い思索を試み、思索を通して”自分なりの答え”を導き出す」という価値ある経験をしなくなっていきます。

“自分にとっての答え”は、情報の中にではなく、いつ何時においても、「自分自身で行う思索の中」に存在するものです。今回は、皆さんに、是非、1)「人間にはどうして思索する能力が備わっているのか」、そして、2)「人間は、自ら行う思索を通して一体何をしていくべきなのか」という、”人間として最も根本的な問題”について考えていただきたいと願っています。

会社、あるいは、自宅において、”度を越えて”インターネットを使いすぎていませんか。インターネットは、あくまで”道具”として使うべき代物。道具を使うのではなく、道具に支配されてしまったら、人間は、間違いなく、「”理性的存在者”として進むべき方向性」を見失ってしまいます。

生井利幸

生井利幸

生井利幸なまいとしゆき

生井利幸事務所代表

「ビジネス力」は、決して仕事における業務処理能力のみを指すわけではありません。ビジネス力は、”自己表現力”であり、”人間関係力”そのものです。いい結果を出すビジネスパーソンになるためには、「自分自身を…

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