2012年09月20日

女性活用推進  現場をどう巻き込むか

私は長期にわたって、企業の人事部やダイバシティ推進室の担当者向けセミナーを開催しています。セミナーではまずグループに分かれ、各企業(各部署)の取り組みや課題を女性が活躍し続けるための①教育面 ②制度面 ③風土面の3つの側面から共有し、さらに時間を設けて、解決策を一緒に考えてゆく、という流れをとっています。

①の教育面とは、"女性の社員教育の充実度"について。
社員研修などを通じて、女性がこれから活躍し続けるために必要な経営的視点やスキル、マインドなどを身につけるための指導体制ができているか。

②の制度面は、"制度の充実度、促進度合い"について。
結婚出産時の産休育休制度や時間短縮制度などの制度が整えられているか、それはどれだけの女性社員に活用されているか。

③の風土面は、会社全体の女性活用の意識について。
女性の管理職比率を上げるなど、本当の意味での男女共同参画として男女分け隔てなく能力を発揮するチャンスを推進する空気があるか。経営者や役職者がその意識をもち、会社全体の風土に反映されているか。

セミナーを開催しはじめた当初は「制度はあるけど、まだ使われている実績数が少なくて...」という企業の声が多くありました。その後、「制度面は整ってきたけれど、教育面が課題」という声が増え、先月実施したセミナーでは「"風土面"に問題があるのではないか」という意見が目立ち、問題点が徐々に変化しているのを感じました。

「風土面が問題だ」とおっしゃる企業に共通する声をまとめてみますと、こんな感じです。
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「女性の管理職比率を上げるための目標数字が掲げられたり、
女性対象の集合研修を実施するようになったが、
会社全体がそのムードになっていない。
現場は『なぜ今、女性を活用しなければいけないのか』と、
女性を育てることに積極的ではなく、
人事・ダイバシティ推進室と現場で温度差を感じる」。
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「女性活躍推進が進まないのはなぜか」という日本生産性本部の統計をみると、
「管理職の理解、関心が薄い」という理由が2位にランクインしており、(※1位は女性の意識が低い)とあり、まさに人事の皆さんの悩みを裏付けるかのようなデータです。

なかなか風土が変わらない大きな理由は、「(女性活用推進の)重要度は高いが、緊急度は低い」からかもしれません。現状、女性管理職の数が少なかったり、女性が男性同等のパフォーマンスを発揮していなくても、会社は回っています。むしろ、時間=評価という日本企業特有の体質を持つ企業では、産休育休、時間短縮などによってチーム全体のパフォーマンスがダウンするのを良く思わない管理職の人たちが存在するのです。彼らは「現状問題は無いし、今までのやり方を変える方が面倒」、または「変えたところで、成果につながるイメージが湧かない」と感じているようです。

しかし、この"少子高齢化の時代"に、"先進国としての世界の価値基準についていく"、"健全な企業体質作り"などの側面から考えると、着々と遅れを取っていることは明確です。「風土面が問題」ということは、「女性活躍推進に対して非協力的な人、無関心な人が多い」、それは「変化を避ける組織が日本には溢れている」ことを表しているかもしれません。

では、どうしたら現場の風土面を変えられるのか。人事、ダイバシティ推進室のみなさんが頭を悩ませるところです。せっかく時間とお金をかけて女性社員に研修を施しても、現場管理職の理解がなければ、女性社員の成長を止めてしまったり、優秀な女性をつぶしてしまうなどすべてが無駄になってしまいます。しかし、一方的に「女性を育ててください」とお願いしても、現場の彼らも自分たちのメリットが感じられなくては、協力してはくれません。ここで、この「現場の中間層の男性をいかに巻き込むか」という課題を、先日のセミナーで参加者の皆さんと一緒に考えた内容をご紹介させていただきます。

1) 男性管理職研修の実施
研修や講演など時間を設けて、「女性と男性の仕事のやりがいの違い」や「女性社員をどう育成したらいいのか」、「なぜ今、女性活用が必要なのか」を学んでもらう。
これによって、日ごろ女性部下との関わりに悩みながらもそのままにしていたこと等を共有し、具体的に検討することができ、「時間を取るほど大きな課題なんだな」と、その重要性も伝わります。更に効果的な方法は、経営陣から女性活用の重要性を伝えていただくこと。管理職の「やらなくてはいけない」という職務意識に火が付きます。

2) キーマンとなる男性管理職へのネゴシエーション
人事、ダイバシティ推進の担当者は、上層部や現場の男性管理職の方の時間をもらい、女性活用の取組む重要性と危機感を伝え、問題意識を共有する。「『人』という側面で、今、自社は何が問題なのか」を一緒に考える時間を作ります。その際、他社の取り組みや事例を伝えることで「今、変化しなければ、会社や自身が遅れを取ってしまう」というリスクを実感してもらうようにします。

上記2つの例のように、積極的に現場や上層部と関わりを持ち、巻き込んでいくことはとても大切です。それは「自分に関わる事」として考え、意識を高めることにつながりますから、様々な方向からアプローチを続けることが大事です。

人の気持ちはそう簡単に切り替わったり変化するものではなく、この課題は一昼夜にして成し遂げられません。根気強く取り組むことと、また、ダイバシティ推進室の皆様は同じ立場の他社の担当者の方と共有しながら、あれこれ実施されることをお勧めします。今の日本企業にとって共通の課題ですから・・・。