発信の“当たり前”とは
前回は、“当たり前を大切にし、実行する”ことの大切さについてお伝えしました。
ここからは、その“当たり前”とは一体具体的にどのようなことなのか、少し掘り下げてお話しして参ります。
まずは、「発信」の“当たり前”について考えていきましょう。
あなたはこんなことをつい思ったことはありませんか?
「こんなこと、言わなくても分かるでしょ」
「これくらい言わなくても分かってくれたらいいのに」
確かに言葉にするというのは労力のいることですし、言わなくても分かってくれたらありがたいですよね。でも、残念ながら、言葉によるコミュニケーションを主とする人間である以上、言わなくて分かることなどありません。もちろん“察する”ことはできますが、あくまでも察しているだけであって、きちんと理解できているわけではありません。
例えば何かトラブルがあったときに、相手が何も言ってこなかったとしましょう。それでは、相手が怒っているのか、全く気にしていないのか、それとも我慢しているのか、分からないですよね。怒ったそぶりはないから、気にしていないのかなと思っていたら、実はとんでもなく腹を立てていた、なんてこともあるかもしれません。
“顔で笑って心で泣いて”
なんて言葉もありますが、人は様々な感情を持っているので、表情や態度だけで全てが分かるほど単純ではないと言うこともできます。
つまり、自分のことをきちんと分かってもらいたいならば、やはりきちんと表現することが必要なのです。とても大事なことなのについ忘れられがちな発信の“当たり前”は、「言わなきゃ分からない」ということです。
「伝える」と「伝わる」は違う
とはいえ、だからといってただ言えばいいということでもありません。「伝える」と「伝わる」は違うからです。
分かってほしいからといって、ただ言葉を投げつけたり、むやみやたらに放り投げたりしていては、思うように分かってもらうことは難しいでしょう。
「伝える」と「伝わる」の違いを端的に言うならば、「伝える」は一方通行、「伝わる」は双方向のやり方であるということです。
イメージで言うなれば、「伝える」というのはドッヂボールの投げ方。ドッヂボールの目的は、相手にボールをぶつけることにあります。取ってもらうために投げているわけではありません。ですから、自分の投げたいボールを力任せに投げるような投げ方をします。ゲームとしてはもちろん楽しいものですが、会話やコミュニケーションにおいては、良い状態は生まれにくいでしょう。
一方「伝わる」のイメージは、キャッチボールです。キャッチボールの目的は、相手に取ってもらうことにあります。さらに投げ返してもらうことを求めます。ですから、キャッチボールをするときは、投げる側が取る側のことをしっかり意識して考えています。相手に合わせて高さや強さ、距離などを調整しながら、最も相手が取りやすいボールを投げようとします。
つまり、「伝える」は自分が投げたいボールを投げるということ、「伝わる」は相手が取れるボールを投げるということです。同じ“投げる”でもその投げ方は大きく異なります。
相手に言葉や思いをきちんと受け取ってほしいと望むなら、しっかり「伝わる」伝え方を意識することが大事なのです。
「伝わる」伝え方のコツ
ではどうしたら、「伝わる」伝え方が実現できるのでしょうか。
ここからは、私がこれまでの研究や体験で得てきたヒントをもとに見つけた、「伝わる」伝え方のヒントをお伝えします。
まず大事なのは、「心と体をまっすぐ立てる」という姿勢です。「伝え方」なのに姿勢?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、まずはここを整えないと、何も伝わっていきません。
例えば、
・会うたびに言うことが違う人
・相手によって態度や内容をコロコロ変える人
・噂話や伝聞に振り回されている人
こういう人の話を、皆さんは真剣に聞こうと思いますか?
芯のない話は、誰にも届いていきません。話半分に聞かれたり、聞き流されてしまったりするようなことも多くなるでしょう。
話というのは、「何を言うか」以上に、「どんな人が言うか」ということがとても大事なのです。自分の言いたいことは自分がまずしっかりと理解した上で、ブレずに伝える姿勢が、「伝わる」話の土台を作っていきます。
そのためには、“ダブルバインド(二重拘束)”のような伝え方をしていないかどうか、意識を持つようにしてみてください。“ダブルバインド”とは、同じ人から2つ以上の矛盾したメッセージを受け取ることで、相手の中に混乱が生まれ、行動が制限(束縛・拘束)されるというものです。
例えば、こんな発言をしてしまうようなことはありませんか?
・「自分で考えてやって」と言っておきながら、いざ相手が行動したら「勝手なことをしないで」と言う
・「今忙しいから後にして」と言っておきながら、後で来たら「もっと早く言って」と言う
こういう状態は何を引き起こすかというと、相手の「じゃあもういい」という気持ちです。そして人は一度「じゃあもういい」という気持ちになったら、それ以上はもう何も言わず、何も聞かないという姿勢をとるようになっていくものです。そうなると、当然ながらコミュニケーションの断絶につながってしまいます。
“ダブルバインド”のようなことが起きる理由は、「自分で言っていることを自分で聞いていない」ことにあります。相手の話は聞いていても、自分で言ったことはすぐ忘れてしまっていることが、実は少なくありません。忘れてしまうから、その時々の気分によって言うことが変わってしまうのです。
ですから、発信の“当たり前”として、「自分の言葉を自分でもしっかり聞いて覚えておく」という意識を持つようにしましょう。その意識を持つだけでも、コミュニケーションの質は上がっていきます。
山本衣奈子やまもとえなこ
プレゼンテーション・プランナー
<ご本人からのメッセージ> 私は大学時代は演劇を専攻、在学中にイギリス・ロンドン大学のドラマ科に留学しました。演劇というと、ストイックな役作りや身体表現をイメージされることが多いのですが、演劇は総合…
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